• すき家ストに揺れるゼンショー社長に「転向」の過去 社会主義革命目指した「全共闘」世代

    過酷な深夜の一人営業、通称「ワンオペ」などが原因で、従業員に反旗を翻されている牛丼チェーンのすき家(ゼンショーHD)。ネットでは「ブラック企業」と批判の声が高まっているが、同社代表の小川賢太郎社長(65)の経歴を見ると、意外な横顔が見えてくる。

    日経ビジネスに掲載された2010年のインタビュー記事によると、小川氏は1968年に東京大学に入学。当時の日本は急速に経済発展を果たす一方で、労働災害が増え、現場で働く人が「高度成長期の犠牲」になっていた。

    こうした状況を打破するため、小川氏は東大で「全共闘」に参加し、資本主義の矛盾を解決するべく社会主義革命を目指していたという。

    サイゴン陥落で資本主義に転向、吉野家に入社

    やがて東大が「権力の増殖機構」であることに疑問を持ち、3年で退学。その後、「底辺に近くて、故に革命的である港湾労働者」に目をつけ、労働者を率いた革命を目指す。

    自らも労働者と働き、船荷の積み込み作業に参加。かなり危険な仕事だったようで、大怪我をして2回入院したという。

    だが、やがて転機が訪れる。ベトナム戦争が事実上終結した1975年の「サイゴン陥落」だ。小川氏は「これが社会主義の世界の頂点だ」と感じ、これから社会主義は落ちるしかないと予測した。

    「今度は社会主義革命ではなくて、資本主義という船に乗って、世界から飢えと貧困をなくすんだ」

    このような思いを抱えて、小川氏は「転向」する。しかし、それまでマルクス・レーニン主義や中国の社会主義革命ばかり学んでいたので、資本主義のことは何も知らない。資本主義を一から学ぶため、中小企業診断士の資格を取得した。

    その後、牛丼チェーン大手の吉野家に入社し、資格を生かして経営企画に参加。やがて吉野家が倒産すると、1982年、小川氏は自らゼンショーを創業する。2008年には単独の牛丼チェーン店舗数で、ついに吉野家を破って首位となり、インタビューを受けた2010年には日本マクドナルドを超えて「外食トップ」に輝いた。

    資産546億円、労働者から「革命」される資本家へ

    インタビューで「資本主義のもとで貧困をなくす」と答えた小川社長だが、「革命闘士」の魂は今も息づいているようだ。会社のウェブサイトで小川社長は、

    「ゼンショーは社会を良い方向へ革新するために存在する。私たちのビジョンである『世界から飢餓と貧困を撲滅する』ということは、その意思の表明であり、行動基準なのです」

    と壮大な夢を語っている。2014年4月の消費税アップ後に、他のチェーンが牛丼を値上げする中、すき家だけは280円から270円へ値下げした。これも「飢餓を撲滅する」という理念による果敢な挑戦だったのか。

    一方、小川社長は事業の成功によって、巨額の富を手に入れている。2014年の「フォーブス日本の富豪50人」では、資産は546億円で48位にランクインした。かつて「資本主義の矛盾」を感じ、社会主義革命に燃えた姿はそこにはない。

    結局、「ブラック企業」のレッテルを貼られて人が集まらなくなり、ネットの「#すき家ストライキ」が大きく拡散するなど、労働者から「革命」を起こされる側になった。小川社長の過去はネットでも話題になっており、

    「『革命とはなにか』を、人生をかけて体現していらっしゃる感じですね」
    「(全共闘出身なら)じゃあこの程度のストなんてへのカッパだろうな。『もっと気合い入れてやらんかい!』とか思ってそう」

    と揶揄するような声もあがっている。

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