出世は出身大学で決まる――「学閥」のある会社、ない会社 2012年4月6日 企業徹底研究 ツイート 会社員の出世は、能力の高さや会社への貢献度だけで決まるとは限らない。親族しか経営の中枢に入れない「同族会社」がその一例だが、その他に出身大学で出世が決まる「学閥」の強い会社もある。 突き詰めれば、将来どういうキャリアを積んでどこまで出世できるのか、入社の段階で決まっていることになる。保守的、守旧的な組織でやってこられた時代ならいざしらず、この変革期に学歴のみをありがたがる会社は、危ないといえる。 例えば、東京電力の清水元社長が原発事故対応のリーダーシップを取れなかった理由として、「慶大卒だったから」という噂が流れたことがあった。真偽のほどは分からないが、役員のおよそ半数が東大卒である東電では、私大卒で初の社長となった清水氏の「基盤」がなく、会社が危機に面しても全社一丸で対応できなかったというわけだ。 ◇ やはり強い東大卒「仕事ができなくても最高の評価」 実際、「東大卒」の出世が約束されている会社はいくつもある。例えば住友系の大手企業では東大の力が強いようだ。 「評価制度は学歴によるところが大きい。東大卒であれば仕事ができなくても最高の評価がもらえる。学閥がはっきりしているので学歴に自信のある人には向いている会社といえる」(住友倉庫) 「学歴がなければ出世は望めません。歴代社長も今までで東大が9割、残り一割が京大で今回はじめて神戸大学の社長が誕生。社内では大騒ぎでした」(住友化学) 日立製作所に勤める30代後半の男性も、会社は「完全な年功序列」と「学歴重視」で能力は二の次だという。過去の社長は、ひとりを除き東大出身者なので、「本当にこの会社で出世を思うなら、東大というのは必要条件である」と言い切っている。 同じ日立の人事部門に勤める30代前半の女性も、「よほどのことがない限り、東大出身であれば部長クラスには昇進している」と証言しているので、信ぴょう性は高そうだ。 「東大卒は学歴ではなく、能力でもあるのでは?」と考える人もいるかもしれない。しかし、10代の終わりに実施した学力テストの点数が、50代や60代まで、それも正解のないビジネスの世界で通用するものだろうか。仕事の頑張りとは関係ないところで評価されるのなら、真面目に仕事をするモチベーションも高まらない。 ◇ DeNAは「東大出だろうが京大出だろうが関係ない」 学閥は、引き上げられる後輩にとって価値があるが、先輩にとっても欠かせないシステムだ。同じ出身校の後輩を可愛がり、出世できる環境を保障しさえすれば、自らの立場も安泰になる。 東大以外の学閥もある。損害保険ジャパンでは「1に慶応2に慶応3、4がなくて5が東大、早稲田。出世するか否かは最初の配属先でほぼ決まる」のだそうだ。特に、慶大の体育会OBの結束が強い。 パナソニックの研究開発部門に勤務していた男性と、シャープのハードウェア関連職の男性は、技術系社員の出世はともに「関西系の大学の方が有利」「特に関西系国立大学の出身者が開発職に配属され、(出世への)学閥の影響が疑われる」と答えている。 長野県に本社を置く八十二銀行では「信州大、明治大学閥が強く、おそらく早慶よりも優遇される」が、年に1~2人は「東大京大のやつ」が入るので、「役員コースは彼らに奪われることになる」と諦め顔だ。地方の企業では複雑な事情から、社外からうかがい知れない学閥がありそうだ。 ただ、こんなことばかりしていても会社の競争力が上がらない。ゲームポータル「モバゲー」を運営し業績絶好調のディー・エヌ・エーで働く30代前半の男性社員は、これらの会社と異なる発想をしている。 「自分で企画アイデアを出し、目標を掲げ、それを必ず達成するバイタリティーがあれば上へは行けると思います。(略)従属型の人間には絶対向かない会社です。東大出だろうが京大出だろうが、自分で企画を出し、それを遂行できなければ、ずっと平のままです」 グローバルな環境の中で会社が生き残ろうと思えば、実力主義で優秀な人材を集めることが必要になる。出身大学は海外の大学を含め多様になっていくはずである。学閥を作って会社を食い物にする社会資源の浪費は、もう終わりにしなければならない。 【その他の企業徹底研究の記事はこちら】 *「キャリコネ」は、社員が投稿した企業に関する口コミ、年収情報、面接体験などを共有するサイトです。2012年3月末現在、45万社、17万件の口コミが登録されています。
出世は出身大学で決まる――「学閥」のある会社、ない会社
会社員の出世は、能力の高さや会社への貢献度だけで決まるとは限らない。親族しか経営の中枢に入れない「同族会社」がその一例だが、その他に出身大学で出世が決まる「学閥」の強い会社もある。
突き詰めれば、将来どういうキャリアを積んでどこまで出世できるのか、入社の段階で決まっていることになる。保守的、守旧的な組織でやってこられた時代ならいざしらず、この変革期に学歴のみをありがたがる会社は、危ないといえる。
例えば、東京電力の清水元社長が原発事故対応のリーダーシップを取れなかった理由として、「慶大卒だったから」という噂が流れたことがあった。真偽のほどは分からないが、役員のおよそ半数が東大卒である東電では、私大卒で初の社長となった清水氏の「基盤」がなく、会社が危機に面しても全社一丸で対応できなかったというわけだ。
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やはり強い東大卒「仕事ができなくても最高の評価」
実際、「東大卒」の出世が約束されている会社はいくつもある。例えば住友系の大手企業では東大の力が強いようだ。
「評価制度は学歴によるところが大きい。東大卒であれば仕事ができなくても最高の評価がもらえる。学閥がはっきりしているので学歴に自信のある人には向いている会社といえる」(住友倉庫)
「学歴がなければ出世は望めません。歴代社長も今までで東大が9割、残り一割が京大で今回はじめて神戸大学の社長が誕生。社内では大騒ぎでした」(住友化学)
日立製作所に勤める30代後半の男性も、会社は「完全な年功序列」と「学歴重視」で能力は二の次だという。過去の社長は、ひとりを除き東大出身者なので、「本当にこの会社で出世を思うなら、東大というのは必要条件である」と言い切っている。
同じ日立の人事部門に勤める30代前半の女性も、「よほどのことがない限り、東大出身であれば部長クラスには昇進している」と証言しているので、信ぴょう性は高そうだ。
「東大卒は学歴ではなく、能力でもあるのでは?」と考える人もいるかもしれない。しかし、10代の終わりに実施した学力テストの点数が、50代や60代まで、それも正解のないビジネスの世界で通用するものだろうか。仕事の頑張りとは関係ないところで評価されるのなら、真面目に仕事をするモチベーションも高まらない。
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DeNAは「東大出だろうが京大出だろうが関係ない」
学閥は、引き上げられる後輩にとって価値があるが、先輩にとっても欠かせないシステムだ。同じ出身校の後輩を可愛がり、出世できる環境を保障しさえすれば、自らの立場も安泰になる。
東大以外の学閥もある。損害保険ジャパンでは「1に慶応2に慶応3、4がなくて5が東大、早稲田。出世するか否かは最初の配属先でほぼ決まる」のだそうだ。特に、慶大の体育会OBの結束が強い。
パナソニックの研究開発部門に勤務していた男性と、シャープのハードウェア関連職の男性は、技術系社員の出世はともに「関西系の大学の方が有利」「特に関西系国立大学の出身者が開発職に配属され、(出世への)学閥の影響が疑われる」と答えている。
長野県に本社を置く八十二銀行では「信州大、明治大学閥が強く、おそらく早慶よりも優遇される」が、年に1~2人は「東大京大のやつ」が入るので、「役員コースは彼らに奪われることになる」と諦め顔だ。地方の企業では複雑な事情から、社外からうかがい知れない学閥がありそうだ。
ただ、こんなことばかりしていても会社の競争力が上がらない。ゲームポータル「モバゲー」を運営し業績絶好調のディー・エヌ・エーで働く30代前半の男性社員は、これらの会社と異なる発想をしている。
「自分で企画アイデアを出し、目標を掲げ、それを必ず達成するバイタリティーがあれば上へは行けると思います。(略)従属型の人間には絶対向かない会社です。東大出だろうが京大出だろうが、自分で企画を出し、それを遂行できなければ、ずっと平のままです」
グローバルな環境の中で会社が生き残ろうと思えば、実力主義で優秀な人材を集めることが必要になる。出身大学は海外の大学を含め多様になっていくはずである。学閥を作って会社を食い物にする社会資源の浪費は、もう終わりにしなければならない。
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*「キャリコネ」は、社員が投稿した企業に関する口コミ、年収情報、面接体験などを共有するサイトです。2012年3月末現在、45万社、17万件の口コミが登録されています。