ソニー、新社長が経営方針 「One Sony」で復活できるか 2012年4月17日 企業徹底研究 ツイート 過去最大の赤字となったソニー。4月に就任したばかりの平井一夫社長兼CEO(最高経営責任者)は4月12日、経営方針説明会を東京のソニー本社で開いた。 その骨子は、8期連続で赤字が続いている主力のテレビ事業で2013年度に固定費を11年度比で6割削減し黒字化、2012年度にグループ全体で1万人の人員削減といった一連の施策で、2014年度、連結売上高8兆5000億円、連結営業利益率5%以上、ROE(株主資本利益率)で10%を目指すというものだ。 その実現は「『One Sony』という、迅速な意思決定によるソニーグループ一体となった経営」(平井社長)が行えるかにかかっている。新体制が「ソニー復活」を掲げる一方で、社員たちは今のソニーをどのように感じているのだろうか。キャリコネの口コミから検証してみた。 ◇ パイオニア精神ない社内から優秀な人材、若手が次々と去る ソニーの前会長兼社長は米国人のハワード・ストリンガー氏。初の外国人社長であったが、ストリンガー会長は経営立て直しについて「無策」との批判も多かった。 元社員だという、50代前半の男性は、次のように指摘している。 「経営トップが外人になった瞬間、技術や日本的なものづくりは非常に軽視され、エンジニアのモチベーションが下がった。ソニーにかつて存在したチャレンジ精神やパイオニア精神はなくなった」 さらに話が続く。 「以前はイノベーションを起こせる商品開発ができたが、今はもう目先の利益だけ追いかけている」 この男性は早期退職制度でソニーを退職したが、こうした社風の変化が退職の理由になったという。 この元男性社員だけではない。ソニーではかつてのような革新を求める姿勢がなくなったことに経営悪化も加わり自主的に退職する人が相次いでいると、社員は異口同音に証言している。特に若い社員に対して求心力が落ちているという。 「自由闊達な社風と言われたソニーも、大企業病に冒されていることは事実。優秀は人ほど、サッサと辞めていくのを見るのは辛い」(40代前半の男性社員) 「最近、将来を担う若い世代が会社を去るケースが多く、過疎化する地方を見るような印象」(30代前半の男性社員) ◇ 「技術」よりも「社内政治」 異才を軽視する社風になったソニー なぜソニーはこのような状況に陥ってしまったのだろうか。 「問題点は、異才を重視する社風がなくなったこと」 と断言するのは、50代前半の男性社員だ。この社員は、優れた人材を排除するようになってしまったことが原因だと分析している。 「圧倒的な技術や、業績をあげた人でも、小さな欠点を上げつらって、居づらくする活動を繰り返した。代わりに出て来る人は、優秀というより、そつの無い人が多い。野武士ではなく、殿上人。社内では一定の影響力はあるのかもしれないけれど、他流試合でどう?と思わずにはいられない」 さらに、モノづくりの会社であるにもかかわらず、「技術」よりも「社内の人間関係」が重視されるようになってしまったことを指摘する社員もいる。30代前半の男性社員が言う。 「とにかく社内政治が何よりも重要のため、収益性や効率性アップよりも社内政治で生き抜くために仕事をするようになります。何のために仕事をしているのかわからなくなり、やりがいを持って仕事をするのは難しい」 ◇ 「市場にチャレンジできる環境が必要」と社員は訴える 一方、業績不振は会社の体質だけではなく、社員の能力にも問題があるという。30代前半の女性社員は次のように告白する。 「バブル世代の女子社員がやたら多い。そして他の世代に比べると一般職のレベルが低い。『他社ではやっていけないのではないか』と思うようなレベルの人も多い。業績不振と言うが、こういう社員の意識を変えていかない限り、会社全体の業績が上がることはないのではなかろうか」 バブル期に入社した社員の処遇は、今や日本のどの企業にも共通の問題。ソニーも例外ではない。今回の経営方針で示されたリストラ策の詳細はまだだが、女性社員が言うような人材を排出するという、「荒療治」を行わなければ、復活の兆しは見えないのかもしれない。 平井一夫社長は会見で「デジタルイメージング(デジタルカメラやセンサーなど)」「ゲーム」「モバイル(携帯電話、PCなど)」を業績立て直しの重点分野に挙げた。しかし、それは過去のトップが示してきた方針の焼き直しと、当面の赤字垂れ流しを止血するための「対処療法」に過ぎない感が大きい。また、新規事業分野として、メディカル分野を上げているが、その具体策は乏しい。 ソニーが未曾有の危機を脱するためには、次の42歳の男性社員のような考えが必要なのかもしれない。 「技術力はあると思うが、それを活かすマネジメントができていない。新商品で無難な企画内容の商品が多くなっているのは、マネジメントがマーケットと技術を理解できていないことが原因。商品分野ごとに子会社化し、マーケットにチャレンジしやすい組織を整備することが必要だと思う」 イノベーションの追求をやめ、業績悪化を招き、優秀な人材や若手が次々と去っているソニー。平井社長は「One Sony」というスローガンを通じて社員たちをまとめ、ソニーをよみがえらせることができるのか。その手腕が注目される。 *「キャリコネ」は、社員が投稿した企業に関する口コミ、年収情報、面接体験などを共有するサイトです。2012年3月末現在、45万社、17万件の口コミが登録されています。
ソニー、新社長が経営方針 「One Sony」で復活できるか
過去最大の赤字となったソニー。4月に就任したばかりの平井一夫社長兼CEO(最高経営責任者)は4月12日、経営方針説明会を東京のソニー本社で開いた。
その骨子は、8期連続で赤字が続いている主力のテレビ事業で2013年度に固定費を11年度比で6割削減し黒字化、2012年度にグループ全体で1万人の人員削減といった一連の施策で、2014年度、連結売上高8兆5000億円、連結営業利益率5%以上、ROE(株主資本利益率)で10%を目指すというものだ。
その実現は「『One Sony』という、迅速な意思決定によるソニーグループ一体となった経営」(平井社長)が行えるかにかかっている。新体制が「ソニー復活」を掲げる一方で、社員たちは今のソニーをどのように感じているのだろうか。キャリコネの口コミから検証してみた。
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パイオニア精神ない社内から優秀な人材、若手が次々と去る
ソニーの前会長兼社長は米国人のハワード・ストリンガー氏。初の外国人社長であったが、ストリンガー会長は経営立て直しについて「無策」との批判も多かった。
元社員だという、50代前半の男性は、次のように指摘している。
「経営トップが外人になった瞬間、技術や日本的なものづくりは非常に軽視され、エンジニアのモチベーションが下がった。ソニーにかつて存在したチャレンジ精神やパイオニア精神はなくなった」
さらに話が続く。
「以前はイノベーションを起こせる商品開発ができたが、今はもう目先の利益だけ追いかけている」
この男性は早期退職制度でソニーを退職したが、こうした社風の変化が退職の理由になったという。
この元男性社員だけではない。ソニーではかつてのような革新を求める姿勢がなくなったことに経営悪化も加わり自主的に退職する人が相次いでいると、社員は異口同音に証言している。特に若い社員に対して求心力が落ちているという。
「自由闊達な社風と言われたソニーも、大企業病に冒されていることは事実。優秀は人ほど、サッサと辞めていくのを見るのは辛い」(40代前半の男性社員)
「最近、将来を担う若い世代が会社を去るケースが多く、過疎化する地方を見るような印象」(30代前半の男性社員)
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「技術」よりも「社内政治」 異才を軽視する社風になったソニー
なぜソニーはこのような状況に陥ってしまったのだろうか。
「問題点は、異才を重視する社風がなくなったこと」
と断言するのは、50代前半の男性社員だ。この社員は、優れた人材を排除するようになってしまったことが原因だと分析している。
「圧倒的な技術や、業績をあげた人でも、小さな欠点を上げつらって、居づらくする活動を繰り返した。代わりに出て来る人は、優秀というより、そつの無い人が多い。野武士ではなく、殿上人。社内では一定の影響力はあるのかもしれないけれど、他流試合でどう?と思わずにはいられない」
さらに、モノづくりの会社であるにもかかわらず、「技術」よりも「社内の人間関係」が重視されるようになってしまったことを指摘する社員もいる。30代前半の男性社員が言う。
「とにかく社内政治が何よりも重要のため、収益性や効率性アップよりも社内政治で生き抜くために仕事をするようになります。何のために仕事をしているのかわからなくなり、やりがいを持って仕事をするのは難しい」
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「市場にチャレンジできる環境が必要」と社員は訴える
一方、業績不振は会社の体質だけではなく、社員の能力にも問題があるという。30代前半の女性社員は次のように告白する。
「バブル世代の女子社員がやたら多い。そして他の世代に比べると一般職のレベルが低い。『他社ではやっていけないのではないか』と思うようなレベルの人も多い。業績不振と言うが、こういう社員の意識を変えていかない限り、会社全体の業績が上がることはないのではなかろうか」
バブル期に入社した社員の処遇は、今や日本のどの企業にも共通の問題。ソニーも例外ではない。今回の経営方針で示されたリストラ策の詳細はまだだが、女性社員が言うような人材を排出するという、「荒療治」を行わなければ、復活の兆しは見えないのかもしれない。
平井一夫社長は会見で「デジタルイメージング(デジタルカメラやセンサーなど)」「ゲーム」「モバイル(携帯電話、PCなど)」を業績立て直しの重点分野に挙げた。しかし、それは過去のトップが示してきた方針の焼き直しと、当面の赤字垂れ流しを止血するための「対処療法」に過ぎない感が大きい。また、新規事業分野として、メディカル分野を上げているが、その具体策は乏しい。
ソニーが未曾有の危機を脱するためには、次の42歳の男性社員のような考えが必要なのかもしれない。
「技術力はあると思うが、それを活かすマネジメントができていない。新商品で無難な企画内容の商品が多くなっているのは、マネジメントがマーケットと技術を理解できていないことが原因。商品分野ごとに子会社化し、マーケットにチャレンジしやすい組織を整備することが必要だと思う」
イノベーションの追求をやめ、業績悪化を招き、優秀な人材や若手が次々と去っているソニー。平井社長は「One Sony」というスローガンを通じて社員たちをまとめ、ソニーをよみがえらせることができるのか。その手腕が注目される。
*「キャリコネ」は、社員が投稿した企業に関する口コミ、年収情報、面接体験などを共有するサイトです。2012年3月末現在、45万社、17万件の口コミが登録されています。