コールセンター 高い離職率の背景にある業界体質を探る 2012年6月28日 企業徹底研究 ツイート フリーダイヤルなどで外部からの電話を受け付ける電話番号は、業種を問わず、ほとんどの企業が設置している。 その目的は注文窓口、技術サポート窓口、お客様相談窓口などさまざまだ。しかし、その企業の社員が電話に出ることはあまりなく、大部分は外部の「コールセンター(テレマーケティング)業者」に運営を任せている。 これは、いわゆる「アウトソーシング・ビジネス」の典型で、90年代に急成長。今も安定的な成長が続いている。 矢野経済研究所が2011年7~9月に実施した「コールセンター市場/コンタクトセンターCRMソリューション市場に関する調査」の結果によると、2010年度のテレマーケティング(コールセンター)市場は6113億円で、前年度比で2・7%増だった。クライアントの業種は4割強が金融で、以下通信、サービスその他、流通と続く。 コールセンターの市場の成長はリーマンショックでペースダウンしたが、それでも年平均2%でプラス成長を続けている。コールセンターとはどんな業界なのだろうか。キャリコネに寄せられた各社の口コミから、分析してみよう。 ◇ 現場の管理者の責任は重く、神経をすり減らす 市場シェアは、トップのトランスコスモスが24・3%。上位3社が56%、上位5社では74・8%を占めていて、上位企業による寡占化がかなり進んでいる。 上位5社のうち1位のトランスコスモスと、3位のもしもしホットラインは上場企業。2位のベルシステム24は2005年まで上場企業だった。4位、5位は大手通信企業の関連会社で非上場。6位は大手システム開発企業の子会社だ。 2010年度の売上高は1、3、4位が増収、2、5位が減収。KDDIエボルバが22・6%の増収で4位に上がった一方、同じ大手通信系のNTTソルコが2・3%の減収で5位に落ちるなど、業績は各社まちまちだった。 IT化されたブースがずらりと並ぶコールセンターの現場は、女性の非正規雇用が大部分のオペレーター(コミュニケーター)と、常駐する管理者(リーダー、スーパーバイザー、正社員か契約社員)、センター長などの管理職(正社員またはクライアント企業の社員)で構成される。 大学新卒の新入社員でも研修後、数人から十数人のオペレーターの管理者を任されることがあるが、「人の上に立つ仕事を任された」と喜ぶのは早すぎる。 管理者はクライアント企業にヒアリングして業務に即した電話応答のマニュアルを作成。オペレーターを集めてトレーニング・管理し、トラブルやクレームを処理する。 業務改善やデータの活用などクライアントに提案する仕事も少なくない。変化への対応力、企画提案力が問われ対人折衝も多いので、仕事ができるか、できないかが、はっきりした形で出てしまう。もしもしホットラインの管理者はこう言う。 「相当な統括力と柔軟性がないと、チーム全体をまとめるのは大変だと思います」(20代後半の女性契約社員) 要求されるスキルのレベルが高いだけでなく、責任も重い。 例えば、通信販売会社の注文窓口であれば、コールセンターの営業マンが「売り上げアップをお約束します」などと言って売り込んでいる。 そのため、クライアントの販売実績がコールセンターの売り上げに直接影響する場合がよくある。もし販売不振を理由にクライアントから契約を打ち切られたら、管理者は責任をとらされる。 アウトバウンドと言って、オペレーターがカード会員のような見込み客に片っ端から電話をかけてセールスする業務もある。これは成約1件ごとにいくらという成功報酬。管理者はオペレーターの尻を叩いてでも一定以上の売り上げを確保しなければ、赤字を出してしまう。 技術サポート窓口やお客様相談窓口でも、クライアントの機嫌を損なうような事態を招いたら契約更新がおぼつかなくなるので、管理者は神経をすり減らす。 まさにハイテクの仮面をかぶった人間くささ満点の職場で、人間関係が複雑な分、ストレス耐性が求められるのが現状なのだ。 ◇ 「ブラック会社」視される業界トップ企業の実態 そんな仕事だからこそ、給与などの待遇や社風への不満はエスカレートしやすい。 業界1位のトランスコスモスは、キャリコネが以前に調査した「愛社されている企業、愛社されていない企業 主要133社ランキング」でワースト10の6位に入った。いったい何が問題なのか。 「人材を育成する。育てるという社風がないし、仕組みとしてもない。新卒社員などは最初から社会人としてのマナーやモラル、仕事の進め方を教わらないでやってしまう」 と、20代後半の男性社員は述べている。 別の20代後半の男性社員は、こう言う。 「2、3年で退社する若手営業が多い。同業に比べても待遇は低いと思う。その為、外から見れば使い捨てのような状態となっている。ノルマを与えられて業務に頑張っても、その成果が給料として返ってこないのでヤリガイをみつけられなくなってしまうケースが多い」 そのほかにも不満の声は枚挙にいとまがない。 「年収で約300万円。給与20万円に残業代でどれぐらい稼ぐかになるが、給与がとにかく低く、昇格しないと給与は上がらない、上がりづらい仕組みになっている」(30代前半の男性正社員) 「社員の顔がイキイキしていると感じたことはない。無駄に威圧する上司が空気を悪くしている。きっと頭がおよろしくないのだと思われる」(20代後半の男性正社員) ここまで言われてしまうトランスコスモスは、東証一部上場企業だ。しかし、、入社したらボロぞうきんのように酷使されて捨てられる「ブラック会社」と一般的には見られている。この点について社員からはこんな書き込みもある。 「ここの社員である事を明かすと、ブラック企業に勤めているんだね。とバッサリ言われてしまいます」(20代後半の男性社員) 世間からそんな目で見られていたら、つらさも倍加するだろう。 ◇ オペレーターも正社員も辞めたくなる 業界の草分けで2位のベルシステム24は社内事情が複雑だ。2005年のMBO(経営陣による自社買収)で上場を廃止した。 その後、事実上のオーナーがコロコロ変わり、不祥事や経営陣の内紛もからんで裁判沙汰まで起きている。業績も低迷を続けており、社員は不安だ。 「月収が安いです。親会社が外資ファンドに変更後は、人件費や経費削減を迫られ、給与カットも発生。入社当時は賞与がすずめの涙ほどですがもらえていたものもなくなりました」(30代前半の女性契約社員) 「人間ドックも無くなったし、出産一時金も無くなった。扶養手当もなく、社員に冷たい会社な感じになったかも。福利厚生に関しては、決してよく無い。最近は経営陣が変わった事もあり、おかねにかんしては非常に厳しくなっており、諸手当ての廃止もこれが影響があるのも」(20代後半の男性社員) 会社の偉いさんたちの暗闘は、こうした形で現場の社員の仕事と生活を脅かしている。 業界3位のもしもしホットラインは、1987年に三井物産が設立した。三井物産は現在も3分の1以上の株式を保有する筆頭株主だ。商社系らしく経営は堅実で待遇も社風も比較的マシと言われている。1、2位の会社がひどすぎるから良く見えるのかもしれない。 口コミを見ると、社内の雰囲気や福利厚生が良いという書き込みが多いが、社風がおっとりしすぎで物足りないという声も出ている。 「営業にもっと力を入れて欲しいです。他のライバル企業がトップ営業をしていても、しないのはどうかと思う。トップで決まる話もあるんだと思います。現場は必死に頑張っているのに、営業が弱くて業績が上がらないのはどうなのかと思う」(もしもしホットラインの40代前半の男性正社員) コールセンターのオペレーターはフリーターのアルバイトも多いが、腰かけ気分でやれるほど気楽な仕事ではない。悪質なクレーマーの度重なる電話で精神的に参ってしまうという話はよく聞く。しかし、それだけではないようだ。 「コールセンター業務で同僚は女性がほとんどでしたので、女性が集まった際の特有の陰口合戦、嫌味などはありました。挨拶をされなかった、お昼を誘ってあげたのに来なかった等のくだらない理由で陰口を良く言ってました」(ベルシステム24の30代前半の派遣社員) 「社員と契約社員、派遣社員とかなりな差別があると思います。休憩時間からトイレに抜ける時間もきっちりと社員に管理されており、窮屈でしかたないと感じました」(トランスコスモスの30代後半の女性契約社員) 「研修期間過ごす同期の人と仲良くなれるかがポイント。それによって、仕事のしやすさが大いに影響する。コールセンター対応自体がストレスのかたまり業務なのに、気を晴らせる仲間がいないのは辛すぎる。上下関係はなさ過ぎて不信感を抱くくらい、ゆるい職場」(もしもしホットラインの20代後半のアルバイト) この業界に共通しているのが離職率の高さである。オペレーターは時給の低さは承知していても、クレーマーだけでなく不規則な勤務シフト、「女の職場」特有の事情などがあいまって、辞めたくなる。 正社員は給料が安い、休みが取れないだけでなく、言うことを聞かないオペレーター、要求がきついクライアント、何もサポートしない上司、もめ事ばかりの会社などに嫌気がさして、辞めたくなる。 ◇ クライアントの「便利屋」になることで成長を維持 コールセンターは市場が成熟して「必要な企業はほぼ全て設置してしまった」という状況だ。 リーマンショック後は金融商品の販売が落ち込み、通信販売事業への新規参入もめっきり減った。また、上位5社で市場の4分の3を占めるほど寡占化が進むと、力の弱い中小業者からクライアントを奪う余地も残されていない。 さらに、表向きは「節電」、本当の理由は経費を切り詰めるためにクライアントが電話受付時間を短縮する動きもあり、「新規案件の減少、既存案件の規模縮小」という傾向が今後も続きそうだ。 こうした状況になると、コールセンターは周辺分野に出ていくしかない。その主要なターゲットが「BPO(ビジネスプロセス・アウトソーシング)」だ。 これは、例えば、通販会社のクライアントのために物流倉庫を運営して受注から出荷まで一貫して代行する、検品や動作テストや書類の封入・発送のような単純な作業を一括して代行するといった業務を指す。 早い話が「便利屋化」だ。コールセンター業界はそうしたBPO分野に活路を見出して、2%程度の安定成長を維持するとみられている。 だが、社員にとっては、「コールすれば何でもやってくれるからコールセンター」と言われそうな便利屋化になる。「何を担当させられるかわからない」ようになっていくだろう。こうした動向が強まれば、キャリコネに寄せられる口コミの嘆きや怒りのボルテージも、ますます上がりそうだ。 *「キャリコネ」は、社員が投稿した企業に関する口コミ、年収情報、面接体験などを共有するサイトです。2012年5月末現在、45万社、18万件の口コミが登録されています。
コールセンター 高い離職率の背景にある業界体質を探る
フリーダイヤルなどで外部からの電話を受け付ける電話番号は、業種を問わず、ほとんどの企業が設置している。
その目的は注文窓口、技術サポート窓口、お客様相談窓口などさまざまだ。しかし、その企業の社員が電話に出ることはあまりなく、大部分は外部の「コールセンター(テレマーケティング)業者」に運営を任せている。
これは、いわゆる「アウトソーシング・ビジネス」の典型で、90年代に急成長。今も安定的な成長が続いている。
矢野経済研究所が2011年7~9月に実施した「コールセンター市場/コンタクトセンターCRMソリューション市場に関する調査」の結果によると、2010年度のテレマーケティング(コールセンター)市場は6113億円で、前年度比で2・7%増だった。クライアントの業種は4割強が金融で、以下通信、サービスその他、流通と続く。
コールセンターの市場の成長はリーマンショックでペースダウンしたが、それでも年平均2%でプラス成長を続けている。コールセンターとはどんな業界なのだろうか。キャリコネに寄せられた各社の口コミから、分析してみよう。
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現場の管理者の責任は重く、神経をすり減らす
市場シェアは、トップのトランスコスモスが24・3%。上位3社が56%、上位5社では74・8%を占めていて、上位企業による寡占化がかなり進んでいる。
上位5社のうち1位のトランスコスモスと、3位のもしもしホットラインは上場企業。2位のベルシステム24は2005年まで上場企業だった。4位、5位は大手通信企業の関連会社で非上場。6位は大手システム開発企業の子会社だ。
2010年度の売上高は1、3、4位が増収、2、5位が減収。KDDIエボルバが22・6%の増収で4位に上がった一方、同じ大手通信系のNTTソルコが2・3%の減収で5位に落ちるなど、業績は各社まちまちだった。
IT化されたブースがずらりと並ぶコールセンターの現場は、女性の非正規雇用が大部分のオペレーター(コミュニケーター)と、常駐する管理者(リーダー、スーパーバイザー、正社員か契約社員)、センター長などの管理職(正社員またはクライアント企業の社員)で構成される。
大学新卒の新入社員でも研修後、数人から十数人のオペレーターの管理者を任されることがあるが、「人の上に立つ仕事を任された」と喜ぶのは早すぎる。
管理者はクライアント企業にヒアリングして業務に即した電話応答のマニュアルを作成。オペレーターを集めてトレーニング・管理し、トラブルやクレームを処理する。
業務改善やデータの活用などクライアントに提案する仕事も少なくない。変化への対応力、企画提案力が問われ対人折衝も多いので、仕事ができるか、できないかが、はっきりした形で出てしまう。もしもしホットラインの管理者はこう言う。
「相当な統括力と柔軟性がないと、チーム全体をまとめるのは大変だと思います」(20代後半の女性契約社員)
要求されるスキルのレベルが高いだけでなく、責任も重い。
例えば、通信販売会社の注文窓口であれば、コールセンターの営業マンが「売り上げアップをお約束します」などと言って売り込んでいる。
そのため、クライアントの販売実績がコールセンターの売り上げに直接影響する場合がよくある。もし販売不振を理由にクライアントから契約を打ち切られたら、管理者は責任をとらされる。
アウトバウンドと言って、オペレーターがカード会員のような見込み客に片っ端から電話をかけてセールスする業務もある。これは成約1件ごとにいくらという成功報酬。管理者はオペレーターの尻を叩いてでも一定以上の売り上げを確保しなければ、赤字を出してしまう。
技術サポート窓口やお客様相談窓口でも、クライアントの機嫌を損なうような事態を招いたら契約更新がおぼつかなくなるので、管理者は神経をすり減らす。
まさにハイテクの仮面をかぶった人間くささ満点の職場で、人間関係が複雑な分、ストレス耐性が求められるのが現状なのだ。
◇
「ブラック会社」視される業界トップ企業の実態
そんな仕事だからこそ、給与などの待遇や社風への不満はエスカレートしやすい。
業界1位のトランスコスモスは、キャリコネが以前に調査した「愛社されている企業、愛社されていない企業 主要133社ランキング」でワースト10の6位に入った。いったい何が問題なのか。
「人材を育成する。育てるという社風がないし、仕組みとしてもない。新卒社員などは最初から社会人としてのマナーやモラル、仕事の進め方を教わらないでやってしまう」
と、20代後半の男性社員は述べている。
別の20代後半の男性社員は、こう言う。
「2、3年で退社する若手営業が多い。同業に比べても待遇は低いと思う。その為、外から見れば使い捨てのような状態となっている。ノルマを与えられて業務に頑張っても、その成果が給料として返ってこないのでヤリガイをみつけられなくなってしまうケースが多い」
そのほかにも不満の声は枚挙にいとまがない。
「年収で約300万円。給与20万円に残業代でどれぐらい稼ぐかになるが、給与がとにかく低く、昇格しないと給与は上がらない、上がりづらい仕組みになっている」(30代前半の男性正社員)
「社員の顔がイキイキしていると感じたことはない。無駄に威圧する上司が空気を悪くしている。きっと頭がおよろしくないのだと思われる」(20代後半の男性正社員)
ここまで言われてしまうトランスコスモスは、東証一部上場企業だ。しかし、、入社したらボロぞうきんのように酷使されて捨てられる「ブラック会社」と一般的には見られている。この点について社員からはこんな書き込みもある。
「ここの社員である事を明かすと、ブラック企業に勤めているんだね。とバッサリ言われてしまいます」(20代後半の男性社員)
世間からそんな目で見られていたら、つらさも倍加するだろう。
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オペレーターも正社員も辞めたくなる
業界の草分けで2位のベルシステム24は社内事情が複雑だ。2005年のMBO(経営陣による自社買収)で上場を廃止した。
その後、事実上のオーナーがコロコロ変わり、不祥事や経営陣の内紛もからんで裁判沙汰まで起きている。業績も低迷を続けており、社員は不安だ。
「月収が安いです。親会社が外資ファンドに変更後は、人件費や経費削減を迫られ、給与カットも発生。入社当時は賞与がすずめの涙ほどですがもらえていたものもなくなりました」(30代前半の女性契約社員)
「人間ドックも無くなったし、出産一時金も無くなった。扶養手当もなく、社員に冷たい会社な感じになったかも。福利厚生に関しては、決してよく無い。最近は経営陣が変わった事もあり、おかねにかんしては非常に厳しくなっており、諸手当ての廃止もこれが影響があるのも」(20代後半の男性社員)
会社の偉いさんたちの暗闘は、こうした形で現場の社員の仕事と生活を脅かしている。
業界3位のもしもしホットラインは、1987年に三井物産が設立した。三井物産は現在も3分の1以上の株式を保有する筆頭株主だ。商社系らしく経営は堅実で待遇も社風も比較的マシと言われている。1、2位の会社がひどすぎるから良く見えるのかもしれない。
口コミを見ると、社内の雰囲気や福利厚生が良いという書き込みが多いが、社風がおっとりしすぎで物足りないという声も出ている。
「営業にもっと力を入れて欲しいです。他のライバル企業がトップ営業をしていても、しないのはどうかと思う。トップで決まる話もあるんだと思います。現場は必死に頑張っているのに、営業が弱くて業績が上がらないのはどうなのかと思う」(もしもしホットラインの40代前半の男性正社員)
コールセンターのオペレーターはフリーターのアルバイトも多いが、腰かけ気分でやれるほど気楽な仕事ではない。悪質なクレーマーの度重なる電話で精神的に参ってしまうという話はよく聞く。しかし、それだけではないようだ。
「コールセンター業務で同僚は女性がほとんどでしたので、女性が集まった際の特有の陰口合戦、嫌味などはありました。挨拶をされなかった、お昼を誘ってあげたのに来なかった等のくだらない理由で陰口を良く言ってました」(ベルシステム24の30代前半の派遣社員)
「社員と契約社員、派遣社員とかなりな差別があると思います。休憩時間からトイレに抜ける時間もきっちりと社員に管理されており、窮屈でしかたないと感じました」(トランスコスモスの30代後半の女性契約社員)
「研修期間過ごす同期の人と仲良くなれるかがポイント。それによって、仕事のしやすさが大いに影響する。コールセンター対応自体がストレスのかたまり業務なのに、気を晴らせる仲間がいないのは辛すぎる。上下関係はなさ過ぎて不信感を抱くくらい、ゆるい職場」(もしもしホットラインの20代後半のアルバイト)
この業界に共通しているのが離職率の高さである。オペレーターは時給の低さは承知していても、クレーマーだけでなく不規則な勤務シフト、「女の職場」特有の事情などがあいまって、辞めたくなる。
正社員は給料が安い、休みが取れないだけでなく、言うことを聞かないオペレーター、要求がきついクライアント、何もサポートしない上司、もめ事ばかりの会社などに嫌気がさして、辞めたくなる。
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クライアントの「便利屋」になることで成長を維持
コールセンターは市場が成熟して「必要な企業はほぼ全て設置してしまった」という状況だ。
リーマンショック後は金融商品の販売が落ち込み、通信販売事業への新規参入もめっきり減った。また、上位5社で市場の4分の3を占めるほど寡占化が進むと、力の弱い中小業者からクライアントを奪う余地も残されていない。
さらに、表向きは「節電」、本当の理由は経費を切り詰めるためにクライアントが電話受付時間を短縮する動きもあり、「新規案件の減少、既存案件の規模縮小」という傾向が今後も続きそうだ。
こうした状況になると、コールセンターは周辺分野に出ていくしかない。その主要なターゲットが「BPO(ビジネスプロセス・アウトソーシング)」だ。
これは、例えば、通販会社のクライアントのために物流倉庫を運営して受注から出荷まで一貫して代行する、検品や動作テストや書類の封入・発送のような単純な作業を一括して代行するといった業務を指す。
早い話が「便利屋化」だ。コールセンター業界はそうしたBPO分野に活路を見出して、2%程度の安定成長を維持するとみられている。
だが、社員にとっては、「コールすれば何でもやってくれるからコールセンター」と言われそうな便利屋化になる。「何を担当させられるかわからない」ようになっていくだろう。こうした動向が強まれば、キャリコネに寄せられる口コミの嘆きや怒りのボルテージも、ますます上がりそうだ。
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