日通 NECの物流子会社を買収 「似たもの同士」の合併効果はあるのか 2013年4月1日 今日の口コミ&年収 ツイート 日本通運は、先月27日、NECの物流子会社「NECロジスティクス」との間で、同社の買収を視野に入れた業務提携を結ぶことを発表した。 まずNECからNECロジテクの株式49%を取得し、来年10月には51%に引き上げる。買収額は明らかではないが、数億円程度になると見られる。 日通は、NEC ロジテクから、高度な管理が必要なIT機器の物流ノウハウを取得し、事業拡大に活かしたい考えだ。いっぽう、NECは、40カ国にまたがる日通の物流網を活用することで、グローバルなサプライチェーン体制が拡充できるとしている。 なお、NEC ロジテクは今年10月に「日通NECロジスティクス」に社名を変更する。社長は吉村直樹氏が続投し、日通は数名の役員を派遣する。 日通が「グローバルな物流サービス事業の強化に向けた戦略的業務提携」と位置付ける今回の買収だが、果たしてうまくいくのか。 キャリコネに寄せられた口コミから、その手がかりを探ってみよう。 【その他の口コミ&年収記事はこちら】 まず、職場の雰囲気については、日通でコンサルティング営業を担当する社員(20代後半・女性)は「 とてもおおらかでガツガツした人がいないため、イイ意味でも悪い意味でも平和」と話すなど、決して悪くはないようだ。 仕事のやりがいやハードさについては、同社で物流サービスを担当する社員(20代後半・男性)は「営業ノルマがない。一部には現状維持でよいといった雰囲気がある。保守的であり、仕事を断る人が中には見受けられる」と話し、 やはり同社で代理店営業を担当する社員(30代前半・男性)も「基本的に古い体質の日本企業として歴史を積み重ねた会社。社内業務コンテストという試験はあるが、係長クラスまではほぼ在籍年数で昇進する」と話すなど、がつがつした成果主義ではないものの、結果で評価されたい社員にはやや物足りなさそうな雰囲気だ。 良くも悪くも”温泉体質”といったところか。 いっぽう、NECロジテクのほうはどうだろう。 この点について、NECロジテクで技術関連の仕事を担当する男性社員(30代)は 「良くも悪くも社員にとっていい会社。 居心地がいい。 体育会系ではない。 無理をさせることがほとんどない。 ゆえに競争力がない。営業は失注することがほとんど」(技術関連職・30代・男性)と、居心地の良さを認めつつも競争の無さを指摘し、 同社でハードウェア関連の仕事を担当する社員(30代)も「業務成績は給与や出世にはまったく影響しない。 あんまりスムーズに業務を完遂すると、簡単な仕事だったという評価をうけることもある。 上級職になるとより仕事をしないことに長けた人がでてくる。 給与面でほぼ一律なので、自然な流れではあるのだが」と、個々の業績評価のゆるさを指摘する。 社内の雰囲気、仕事に対する評価ともに、両社は驚くほど似通っている。社員レベルではまったく問題ないと言える。 それでは、肝心の事業レベルでの合併効果は、お互いにあるのだろうか。 NEC ロジテク側に関して言えば、物流を担当する社員(40歳・男性)は「物流の現場に関しても、協力会社に丸投げしていることも多く現場管理のシステムが行き届いてないように思われる。トヨタのカンバン方式を取り入れてはいるが、物流の現場にどれだけ効果があるのか疑問」と話し、 同じく同社の物流を担当する社員(30代後半・男性)も「物流業者の側面とメーカーの貿易部門の側面を併せ持つ為、本人のやる気次第では幅広いキャリア形成ができる。ただし物流業者としてのポテンシャル自体は同業他社と比較し低く、競争力にも欠けるのでその辺りを十分承知の上での企業選択が必要、またNECのハードからソフトへの事業シフトも加速気味なので取扱案件も縮小傾向にある」と話すなど、NEC ロジテクの主事業であるはずの物流事業の弱さと、事業の見通しの暗さがうかがえる。 NEC ロジテクとって、物流ガリバーである日通は、合併の相手としては申し分ないようだ。 いっぽう日通のほうも、今月22日に、ダイセーエブリー二十四との間で、国内外の低温による食品物流事業の業務提携を結ぶことを発表するなど、物流に乗せる商品チャネルの多角化を急いでおり、 NECロジテクを買収すれば、食品物流とIT機器関連の物流の2つのチャネルが増えることになる。 その意味では、今回の買収は、日通にとっても、NECロジテクにとっても双方思惑がうまく一致した結果だったと言える。 ただし、日通側の「規模の拡大に利益の拡大が伴わない体質」が不安材料だ。 ある運輸業界関係者は「トラック貨物、鉄道貨物などの主力事業はそこそこの業績を挙げているが、色々やっている付帯事業が低迷している。万年赤字の事業も多い。したがって付帯事業の整理が急務になっているが、支店の独立性と、雇用を守るとの労組の大義名分に阻まれ、実行がいつも腰砕けになっている」と言い、採算の取れる事業と不採算事業の整理の必要性を強調するし、 別の事情通も「コスト面を改善して利益構造を強化しない限り、赤字が止まらず最後は郵便事業に譲渡したペリカン便事業のようになるのではないか」と懸念する。 この点については、日通社員の間でも「何に力を入れるかがはっきりしない。他社にない強みが少ない中で、経営資源の投下先がいまいち見えない。無駄な経費を使うため、設備投資が少なく顧客離れにつながっている」といった声(物流サービス・20代後半・男性社員)や、 「1つの事を進める時に統制が取れず、支店ごとにバラバラな事をやっている。本社をトップとする指揮系統が成り立っていない。かといってそれが支店単位の機動的な経営につながっているわけでもない。また、本社でまとめてやればいいような仕事を支店ごとにやっているため、効率が悪く、素人考えで進めてしまう」といった声(物流企画・20代後半・男性社員)があり、あいまいな経営資源の投下や業務効率の悪さをうかがわせる。 今回の買収、両社ともにメリットがあったと言えそうだが、結果的に泥船にならないためには、日通が「各事業が利益を出す体質」に変わる必要がありそうだ。
日通 NECの物流子会社を買収 「似たもの同士」の合併効果はあるのか
日本通運は、先月27日、NECの物流子会社「NECロジスティクス」との間で、同社の買収を視野に入れた業務提携を結ぶことを発表した。
まずNECからNECロジテクの株式49%を取得し、来年10月には51%に引き上げる。買収額は明らかではないが、数億円程度になると見られる。
日通は、NEC ロジテクから、高度な管理が必要なIT機器の物流ノウハウを取得し、事業拡大に活かしたい考えだ。いっぽう、NECは、40カ国にまたがる日通の物流網を活用することで、グローバルなサプライチェーン体制が拡充できるとしている。
なお、NEC ロジテクは今年10月に「日通NECロジスティクス」に社名を変更する。社長は吉村直樹氏が続投し、日通は数名の役員を派遣する。
日通が「グローバルな物流サービス事業の強化に向けた戦略的業務提携」と位置付ける今回の買収だが、果たしてうまくいくのか。
キャリコネに寄せられた口コミから、その手がかりを探ってみよう。
【その他の口コミ&年収記事はこちら】
まず、職場の雰囲気については、日通でコンサルティング営業を担当する社員(20代後半・女性)は「 とてもおおらかでガツガツした人がいないため、イイ意味でも悪い意味でも平和」と話すなど、決して悪くはないようだ。
仕事のやりがいやハードさについては、同社で物流サービスを担当する社員(20代後半・男性)は「営業ノルマがない。一部には現状維持でよいといった雰囲気がある。保守的であり、仕事を断る人が中には見受けられる」と話し、
やはり同社で代理店営業を担当する社員(30代前半・男性)も「基本的に古い体質の日本企業として歴史を積み重ねた会社。社内業務コンテストという試験はあるが、係長クラスまではほぼ在籍年数で昇進する」と話すなど、がつがつした成果主義ではないものの、結果で評価されたい社員にはやや物足りなさそうな雰囲気だ。
良くも悪くも”温泉体質”といったところか。
いっぽう、NECロジテクのほうはどうだろう。
この点について、NECロジテクで技術関連の仕事を担当する男性社員(30代)は 「良くも悪くも社員にとっていい会社。 居心地がいい。 体育会系ではない。 無理をさせることがほとんどない。 ゆえに競争力がない。営業は失注することがほとんど」(技術関連職・30代・男性)と、居心地の良さを認めつつも競争の無さを指摘し、
同社でハードウェア関連の仕事を担当する社員(30代)も「業務成績は給与や出世にはまったく影響しない。 あんまりスムーズに業務を完遂すると、簡単な仕事だったという評価をうけることもある。 上級職になるとより仕事をしないことに長けた人がでてくる。 給与面でほぼ一律なので、自然な流れではあるのだが」と、個々の業績評価のゆるさを指摘する。
社内の雰囲気、仕事に対する評価ともに、両社は驚くほど似通っている。社員レベルではまったく問題ないと言える。
それでは、肝心の事業レベルでの合併効果は、お互いにあるのだろうか。
NEC ロジテク側に関して言えば、物流を担当する社員(40歳・男性)は「物流の現場に関しても、協力会社に丸投げしていることも多く現場管理のシステムが行き届いてないように思われる。トヨタのカンバン方式を取り入れてはいるが、物流の現場にどれだけ効果があるのか疑問」と話し、
同じく同社の物流を担当する社員(30代後半・男性)も「物流業者の側面とメーカーの貿易部門の側面を併せ持つ為、本人のやる気次第では幅広いキャリア形成ができる。ただし物流業者としてのポテンシャル自体は同業他社と比較し低く、競争力にも欠けるのでその辺りを十分承知の上での企業選択が必要、またNECのハードからソフトへの事業シフトも加速気味なので取扱案件も縮小傾向にある」と話すなど、NEC ロジテクの主事業であるはずの物流事業の弱さと、事業の見通しの暗さがうかがえる。
NEC ロジテクとって、物流ガリバーである日通は、合併の相手としては申し分ないようだ。
いっぽう日通のほうも、今月22日に、ダイセーエブリー二十四との間で、国内外の低温による食品物流事業の業務提携を結ぶことを発表するなど、物流に乗せる商品チャネルの多角化を急いでおり、 NECロジテクを買収すれば、食品物流とIT機器関連の物流の2つのチャネルが増えることになる。
その意味では、今回の買収は、日通にとっても、NECロジテクにとっても双方思惑がうまく一致した結果だったと言える。
ただし、日通側の「規模の拡大に利益の拡大が伴わない体質」が不安材料だ。
ある運輸業界関係者は「トラック貨物、鉄道貨物などの主力事業はそこそこの業績を挙げているが、色々やっている付帯事業が低迷している。万年赤字の事業も多い。したがって付帯事業の整理が急務になっているが、支店の独立性と、雇用を守るとの労組の大義名分に阻まれ、実行がいつも腰砕けになっている」と言い、採算の取れる事業と不採算事業の整理の必要性を強調するし、
別の事情通も「コスト面を改善して利益構造を強化しない限り、赤字が止まらず最後は郵便事業に譲渡したペリカン便事業のようになるのではないか」と懸念する。
この点については、日通社員の間でも「何に力を入れるかがはっきりしない。他社にない強みが少ない中で、経営資源の投下先がいまいち見えない。無駄な経費を使うため、設備投資が少なく顧客離れにつながっている」といった声(物流サービス・20代後半・男性社員)や、
「1つの事を進める時に統制が取れず、支店ごとにバラバラな事をやっている。本社をトップとする指揮系統が成り立っていない。かといってそれが支店単位の機動的な経営につながっているわけでもない。また、本社でまとめてやればいいような仕事を支店ごとにやっているため、効率が悪く、素人考えで進めてしまう」といった声(物流企画・20代後半・男性社員)があり、あいまいな経営資源の投下や業務効率の悪さをうかがわせる。
今回の買収、両社ともにメリットがあったと言えそうだが、結果的に泥船にならないためには、日通が「各事業が利益を出す体質」に変わる必要がありそうだ。