GREEには倒されなかった任天堂 敵失のタイミングで力を発揮できるのか 2013年10月16日 今日の口コミ&年収 ツイート 去る9月19日、任天堂の相談役・前社長の山内溥氏が、85歳で肺炎のために亡くなった。トランプや花札のメーカーだった同社を一代で家庭用ゲーム業界のトップに育て上げた“中興の祖”であり、業界内外からその死を悼む声が集まった。 その山内氏の育てた任天堂が、現在、苦境に立たされている。近年の連結売上高を見ると、2009年3月期に1兆8386億円を記録して以降は右肩下がりを続けており、2013年3月期は半分以下の6354億円まで落ち込んだ。 株価も同様に2008年から現在まで下落し続けている。ネット掲示板などでは「任天堂終わったな」「任天堂ハードはオワコン」といった声を見かけることも少なくない。 (最新記事はこちら) 伸び悩む主力ハードとスマホアプリ勢の躍進 ゲーム業界に詳しい関係者に聞くと、問題は大きく2つあると指摘する。ひとつは主力の据え置きハードであるWii Uの不振だ。背景にはソフトの開発問題がある。 「Wii Uはタッチパネル搭載のゲームパッドが特長ですが、ソフト開発会社にその魅力が伝わりにくいこともあり、ハードの売上を牽引するソフトがまだ登場していないんです」 ユーザーは、プレイしたいソフトがあって初めてハードを購入するもの。ハード本体が高性能であっても、新規ユーザーを引き付けるキラーソフトが登場しない限り、Wii Uは苦戦を強いられそうだという。 「もうひとつは、スマホ用ゲームアプリの台頭です。ソーシャルゲームのバブルはひと段落しましたが、今度は『パズル&ドラゴンズ』のような、無料でクオリティのゲームアプリが登場しました。お手軽にプレイできるということもあって、ユーザーを奪われている状態ですね」 安全性や信頼性が求められる自動車や生活家電と違い、娯楽商品である家庭用ゲームは「そこそこ面白ければ無料コンテンツで十分」という傾向を生みやすい。スマホ用ゲームアプリは、すでに家庭用ゲーム全体に対する強力なライバルになっている。 これは、ひとつめの原因であるソフト開発にも関連することだ。ソフト開発会社にとってはスマートフォンという新しいプラットフォームの方が汎用性があるし、ハード業者に依存せずに開発のイニシアチブが取りやすい部分もある。ユーザー数もスマホ所有者の方が圧倒的に多く、一発当たれば大きな実入りも期待できる。 口コミで目につく「年功序列」という言葉 一発当てれば実入りの大きい新市場には、貪欲な人たちが集まって既存勢力を倒そうとする。一方で、追われる立場の任天堂には、ネームバリューと好待遇から安定志向の人材がどんどん集まってくる。ハングリー精神の違いは明白だ。 キャリコネの口コミでも、30代前半で850万円の年収を得ている社員が、任天堂内の人事評価制度が「ほぼ年功序列と変わらない」と指摘している。 「妥当性は当たる上司によって印象が変わりますが、どこの会社でも出てくる問題。ただし不満のでてくる額面ではないはずなので、概ね満足するか、まあ仕方がないと思っている人は多いと思います」 さらに「完全に年功序列。課長職になるには40歳以上、部長は若くても50歳程度以上であることが必須」と言い切る30代男性社員もいた。代理店営業の20代男性も「大多数の社員が待遇に満足しており、離職率は非常に低い。会社の雰囲気も非常におっとりした人格者が多い」と実情を明かしている。 公平性には疑問があっても絶対額がそれなりにあれば、社内で摩擦を起こしたり退職したりするほどは不満が高まらない。そのような雰囲気の中で新陳代謝が下がってくれば、会社の活気も削がれ、取り組みの新奇性も薄れる。 とはいえ、「任天堂の倒し方、知らないでしょ? オレらはもう知ってますよ」と社員がうそぶいたと言われるGREEは、業績悪化で200人の希望退職を募っている。敵失の間に、任天堂がハングリー精神を取り戻して力を発揮するのか。それとも、すでに牙を抜かれた老獅子は立ち上がれないのか。真価が問われるタイミングと言ってよいだろう。 【働く人に役立つ「企業インサイダー」の記事はこちら】
GREEには倒されなかった任天堂 敵失のタイミングで力を発揮できるのか
去る9月19日、任天堂の相談役・前社長の山内溥氏が、85歳で肺炎のために亡くなった。トランプや花札のメーカーだった同社を一代で家庭用ゲーム業界のトップに育て上げた“中興の祖”であり、業界内外からその死を悼む声が集まった。
その山内氏の育てた任天堂が、現在、苦境に立たされている。近年の連結売上高を見ると、2009年3月期に1兆8386億円を記録して以降は右肩下がりを続けており、2013年3月期は半分以下の6354億円まで落ち込んだ。
株価も同様に2008年から現在まで下落し続けている。ネット掲示板などでは「任天堂終わったな」「任天堂ハードはオワコン」といった声を見かけることも少なくない。
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伸び悩む主力ハードとスマホアプリ勢の躍進
ゲーム業界に詳しい関係者に聞くと、問題は大きく2つあると指摘する。ひとつは主力の据え置きハードであるWii Uの不振だ。背景にはソフトの開発問題がある。
ユーザーは、プレイしたいソフトがあって初めてハードを購入するもの。ハード本体が高性能であっても、新規ユーザーを引き付けるキラーソフトが登場しない限り、Wii Uは苦戦を強いられそうだという。
安全性や信頼性が求められる自動車や生活家電と違い、娯楽商品である家庭用ゲームは「そこそこ面白ければ無料コンテンツで十分」という傾向を生みやすい。スマホ用ゲームアプリは、すでに家庭用ゲーム全体に対する強力なライバルになっている。
これは、ひとつめの原因であるソフト開発にも関連することだ。ソフト開発会社にとってはスマートフォンという新しいプラットフォームの方が汎用性があるし、ハード業者に依存せずに開発のイニシアチブが取りやすい部分もある。ユーザー数もスマホ所有者の方が圧倒的に多く、一発当たれば大きな実入りも期待できる。
口コミで目につく「年功序列」という言葉
一発当てれば実入りの大きい新市場には、貪欲な人たちが集まって既存勢力を倒そうとする。一方で、追われる立場の任天堂には、ネームバリューと好待遇から安定志向の人材がどんどん集まってくる。ハングリー精神の違いは明白だ。
キャリコネの口コミでも、30代前半で850万円の年収を得ている社員が、任天堂内の人事評価制度が「ほぼ年功序列と変わらない」と指摘している。
さらに「完全に年功序列。課長職になるには40歳以上、部長は若くても50歳程度以上であることが必須」と言い切る30代男性社員もいた。代理店営業の20代男性も「大多数の社員が待遇に満足しており、離職率は非常に低い。会社の雰囲気も非常におっとりした人格者が多い」と実情を明かしている。
公平性には疑問があっても絶対額がそれなりにあれば、社内で摩擦を起こしたり退職したりするほどは不満が高まらない。そのような雰囲気の中で新陳代謝が下がってくれば、会社の活気も削がれ、取り組みの新奇性も薄れる。
とはいえ、「任天堂の倒し方、知らないでしょ? オレらはもう知ってますよ」と社員がうそぶいたと言われるGREEは、業績悪化で200人の希望退職を募っている。敵失の間に、任天堂がハングリー精神を取り戻して力を発揮するのか。それとも、すでに牙を抜かれた老獅子は立ち上がれないのか。真価が問われるタイミングと言ってよいだろう。
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