• 無知と貧困が「テロリスト」を生む 親日パキスタンは「経済大国」になれるか

    2014年3月31日の「未来世紀ジパング」(テレビ東京系)は、ジャーナリストの池上彰氏が沸騰ナビゲーターとしてパキスタンを取材していた。人口1億9000万人で世界第6位、巨大市場として注目されている国だ。

    綿花の一大生産地で、日本とは1950年以降に綿花の取引が盛んだったため、意外なほど親日的である。繊維学校のムンタズ・ハサン・マリク教授は、こう語る。

    「日本はパキスタンに、たくさん投資してくれました。また、我々は日本人から品質へのこだわりなど多くのことを学びました。その経験は、次の世代にも語り継がれています」

    街を行く自動車は、ほとんどが日本製。日本と同じく右ハンドルということもあり、新車販売台数の95%は日本車、その半数をスズキが占める。最初にパキスタンに自動車を輸入したのがスズキで、乗り合いタクシーが「スズキ」と呼ばれるほどだ。

    一番の問題は「パキスタン・タリバン」

    依然として国民の5人に1人が貧困層ではあるものの、都市部では経済発展も目覚ましく、日本からも多くの企業が進出している。問題は、治安だ。スズキの駐在員は常に強盗の危険に備えていたし、池上氏が取材中にも爆破テロがあった。

    一番の問題は「パキスタン・タリバン」と呼ばれる、イスラム原理主義過激組織のテロ活動だ。女性教育の重要性を訴えた少女マララ・ユスフザイさんを狙撃したのも、この勢力とみられる。

    イスラム教では女性に教育は必要ないとされ、この教えを極端に捉えたパキスタン・タリバンが女子学校を次々と襲撃し、女性の自由を厳しく制限しているという。

    テロリストになってしまう大きな原因は、貧困や無知。小学校の中退率が世界ワースト2位で、貧しさから働くために小学校すらやめてしまう子どもが多い。費用がかからないからと入学すると、実はタリバン教育の学校で、テロリストにされてしまうケースもある。

    劣悪な教育環境を改善する支援として、日本の援助で運営されている「ダムケ学習センター」がある。3年前のプロジェクト開始以降、5万人に機会を提供し、今後3年で150万人に増やす計画だという。そこで働くJICA教育専門家の大橋知穂さんは、こう語る。

    「朝から晩まで仕事していた子どもたちが、ちょっとでも勉強することで、違う世界が見られたらいい。もちろん経済的にも発展して欲しいけど、犯罪率が減ったり、みんなが幸せに暮らせる社会になればいい」

    日本の支援は「漢方薬的」と池上氏

    ほかにも、70億円という日本の援助で、建設機械の実地訓練を行う職業訓練校もある。即戦力として働けるので、就職率は8割を超えている。手に職をつけ、貧困から抜け出すことがテロ対策となる。

    パキスタンが16年後には人口が3億人を突破して、世界5位の人口大国、そして成長大国になると予測する池上氏は、日本の教育支援の効果をこう説明していた。

    「テロ(行為自体)を叩いても、テロを生み出す土壌はそのまま。いってみれば病気に対しての対症療法です。日本の場合は、そもそもテロを生み出さない土壌を作ろう(という発想で支援をしている)。それは教育だ。漢方薬のように、じわじわ効いてくるようなことをやっているのが日本なのです」

    日本とパキスタンは、非常に深いつながりがある「旧友」だ。日本の支援が功を奏し、テロの不安のない安全な経済大国になることは、日本にとっても望ましいことだ。(ライター:okei)

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