• 「現場が楽しい」ロイヤルホスト 低価格路線に決別で復活

    ファミリーレストランのロイヤルホストは、1996年から15年連続で既存店の売り上げが前年を下回るなど、長い低迷状態に陥っていた。2014年4月10日の「カンブリア宮殿」(テレビ東京)は、そんな会社が立ち直りを果たした背景を紹介していた。

    きっかけは、2011年に現社長・矢崎精二氏が就任したこと。わずか1年で売り上げを回復させた改革の手法は、「高くてもおいしい料理で人を呼び込む」というデフレ経済下では常識破りのものだった。

    接客係「ドリンクバーない方が楽しい」

    徹底した味へのこだわりで、「コックは不要」と危ぶまれた各店舗に複数のコックを配置。ソースなどは工場で作るセントラルキッチン方式だが、コックがひと手間かけて仕上げた料理は味が全く違ってくるという。

    さらに食材を見直し、アメリカの上質な牛肉やイタリアで評判のパスタなどを使ったメニュー開発を進めた。誰が食べても美味しいというクオリティを追求した結果、他のファミレスより主な料理の平均価格は倍近くながら、売上は伸びたのだ。

    サービスにもこだわり抜く。ドリンクバーを廃止し、呼び出しベルも店舗によっては取りやめる。これは「お客に食事を通して、豊かな時間を楽しんでもらうため」だという。その分、接客係は徹底してお客に対し、目配り気配りを欠かせない。さぞかし大変だろうと思いきや、ある接客係の女性は笑顔でこう語った。

    「『気づいてくれてありがとう』という(お客からの)言葉が増えた。働いていて、(ドリンクバーが)ない方が楽しい」

    温めて出すだけだった効率重視の頃とは違い、コックも技量を発揮できる。働く人間がやりがいを持てる現場にも改革されたようだ。

    創業者を引き継ぐ「サラリーマンの考えも持つ社長」

    ロイヤルホストの創業者は”外食王”と呼ばれた業界の革命児、江頭匡一氏だ。現社長・矢崎氏は、江頭社長時代に行われていた年に一度の「経営方針発表会」を復活させた。ここで各地区の店舗の店長・料理長が一堂に会し、ビジョンを共有するという。

    低迷期の15年、トップのビジョンが見えなかったという社員たちだが、ある料理長は現在の状況をこう語る。

    「今は、先を見据えて『3年後にはこうなるから、そのための今年1年はこれだ』とやることが明確になっていて、(それ通りにいっているので)仕事をしていて楽しい」

    発表会後は、宴会で社長が社員をおもてなし。「(自分も営業を経験し、現場の苦労は分かるので)少しでも力になれればという気持ちで」と言う矢崎社長は、AKBの曲に合わせ舞台で自ら踊り、宴を盛り上げていた。

    創業当時とは様変わりする外食産業にあって、「創業者の理念を現在に生かし実現する難しさ」を問う番組編集長・村上龍に対して、矢崎社長はこう答えた。

    「創業者は強いリーダーシップでやっていくが、私はサラリーマンとしてのものの考え方も持っているので、その両方がミックスできる。創業者の創業の時とはまた違う、自分なりの新しい価値を伝えていかないと私の役目はないと思う」

    リーダーが変われば、組織も変わる

    番組冒頭、村上氏は「ロイヤルホスト、完全復活でしょうか?」という問いで矢崎社長の危機感を試したが、社長は「完全復活とは考えていません。まだやれることが沢山ある」と答えていた。

    その言葉どおり、矢崎社長はいまも自ら動いている。「日本再発見構想」を宣言し、四国各地の生産地を自ら訪れ、夜須町のフルーツトマトや宇和島の健康真鯛など、こだわりの素材を調達。これを和食ではなく本格ブイヤベースやカクテル仕立てにするなど、「ロイヤルホストスタイル」として料理に生かしていた。

    そこには「日本の地域おこしの一端を担えれば」という意図もあるという。番組を通じて、消費者だけでなく社員や生産者にも喜びを与えている矢崎社長の魅力が伝わった。リーダーが変われば組織も変わる、という好例を見たように思う。(ライター:okei)

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