注目集まる「IPO人材」 新たな「売り手市場」になるか 2014年3月5日 キャリコネ調査班 ツイート 2月末に発表された有効求人倍率(1月・季節調整値)は1.04倍で、2007年8月(1.05倍)以来6年5か月ぶりの高水準となった。中でもいま注目を集めているのが「IPO人材」だ。 IPOとは、株式公開のこと。企業の新規上場にあたって、人事や財務、法務などの管理部門の専門知識を有した人材の需要が高まっている。背景には、好景気を見越して数年内にIPOを目指す企業の増加があるようだ。 期待と焦り「上場するなら、今でしょ」 東京証券取引所(東証マザーズ、ジャスダック含む)に新規上場した企業数は、2013年で75社(前年比9社増)。ここ5年では最多の数字で、リーマン・ショック直後の2009年(23社)の3倍以上にのぼっている。 証券取引所の後押しにも力が入る。2013年1月に東証と大証が統合し「日本取引所グループ」となり、上場前後のきめ細かなサポートが全国に広げることが可能になったという。 そんな中、ベンチャー企業の経営者たちが上場準備に入ると意気込むケースが増えている。アベノミクスによる景気回復も、長期的な右肩上がりになるとは期待できず、期待と焦りから「上場するなら、今でしょ」と考えている。 ただ、上場に向けてかじを切るには、上場審査を突破しなければならない。そのためには、内部監査室を設置したり、法令遵守体制を強化したりする必要があり、それを支える「IPO人材」が欠かせないとなるわけだ。 管理系人材に特化した人材紹介を行うMS-Japanの有本隆浩社長は、『ベンチャー通信』の2014年特別号で、IPOには多様な人材が必要だと語っている。 「IPOを目指すからには、着実に管理部門も体制強化を図らなければなりません。経理部門の構築からはじめ、次第に人事、総務、財務、法務等を整えていくのが一般的です」 「上場経験者の少なさ」が人材の取り合いに たとえば、経理や財務を外部の税理士などに任せ、人事や総務などを役員が兼務しているベンチャー企業は多い。しかし上場にあたっては、不正防止のため「経理部」と「財務部」は分離させなければならない。 そのため、専任の経理部長やCFO(最高財務責任者)といったポジションのニーズも出てくるが、どこの会社も単に知識を有しているだけでなく、実際の上場実務の修羅場を経験した人を欲しがるものだ。 人事コンサル会社のセレブレイン・高城幸司社長は、東洋経済オンラインの記事で「ここ最近の上場企業の減少で、上場準備にかかわった管理部門の人材が劇的に少ない」と指摘する。 最近の求人情報を検索してみると、確かに「【急募】2年後の上場に向けて準備中の、ソーシャルゲーム運営会社での上場準備室長をお任せいたします。30代前半で600万円~999万円」というものも見られる。 収益を直接生み出さない管理部門スタッフは、営業や生産から「ノンプロフィット」と揶揄されることもあるが、IPO準備にあたっては彼らなしでは成り立たず、引く手あまたということだ。 あわせてよみたい:「異常なシューカツ」に批判相次ぐ
注目集まる「IPO人材」 新たな「売り手市場」になるか
2月末に発表された有効求人倍率(1月・季節調整値)は1.04倍で、2007年8月(1.05倍)以来6年5か月ぶりの高水準となった。中でもいま注目を集めているのが「IPO人材」だ。
IPOとは、株式公開のこと。企業の新規上場にあたって、人事や財務、法務などの管理部門の専門知識を有した人材の需要が高まっている。背景には、好景気を見越して数年内にIPOを目指す企業の増加があるようだ。
期待と焦り「上場するなら、今でしょ」
東京証券取引所(東証マザーズ、ジャスダック含む)に新規上場した企業数は、2013年で75社(前年比9社増)。ここ5年では最多の数字で、リーマン・ショック直後の2009年(23社)の3倍以上にのぼっている。
証券取引所の後押しにも力が入る。2013年1月に東証と大証が統合し「日本取引所グループ」となり、上場前後のきめ細かなサポートが全国に広げることが可能になったという。
そんな中、ベンチャー企業の経営者たちが上場準備に入ると意気込むケースが増えている。アベノミクスによる景気回復も、長期的な右肩上がりになるとは期待できず、期待と焦りから「上場するなら、今でしょ」と考えている。
ただ、上場に向けてかじを切るには、上場審査を突破しなければならない。そのためには、内部監査室を設置したり、法令遵守体制を強化したりする必要があり、それを支える「IPO人材」が欠かせないとなるわけだ。
管理系人材に特化した人材紹介を行うMS-Japanの有本隆浩社長は、『ベンチャー通信』の2014年特別号で、IPOには多様な人材が必要だと語っている。
「上場経験者の少なさ」が人材の取り合いに
たとえば、経理や財務を外部の税理士などに任せ、人事や総務などを役員が兼務しているベンチャー企業は多い。しかし上場にあたっては、不正防止のため「経理部」と「財務部」は分離させなければならない。
そのため、専任の経理部長やCFO(最高財務責任者)といったポジションのニーズも出てくるが、どこの会社も単に知識を有しているだけでなく、実際の上場実務の修羅場を経験した人を欲しがるものだ。
人事コンサル会社のセレブレイン・高城幸司社長は、東洋経済オンラインの記事で「ここ最近の上場企業の減少で、上場準備にかかわった管理部門の人材が劇的に少ない」と指摘する。
最近の求人情報を検索してみると、確かに「【急募】2年後の上場に向けて準備中の、ソーシャルゲーム運営会社での上場準備室長をお任せいたします。30代前半で600万円~999万円」というものも見られる。
収益を直接生み出さない管理部門スタッフは、営業や生産から「ノンプロフィット」と揶揄されることもあるが、IPO準備にあたっては彼らなしでは成り立たず、引く手あまたということだ。
あわせてよみたい:「異常なシューカツ」に批判相次ぐ