• 「起業希望者がバブル期から半減」は本当なのか 巷は「増えてると思ったのに」の声

    この世に生まれたからには、他人の下で働くのではなく、一国一城の主として事業を興してみたい――。ある調査によると、そんな風に夢見る人がバブル期の半分にまで減ってしまったという。

    しかし、ネットやスマホの普及で起業のハードルが下がり、若くして会社を成功に導いた人も少なくない。巷には「肌感覚とは違う」という声もあるが、本当に起業家は減っているのだろうか。

    「就業中の希望者」の激減が大きく影響

    5年ごとに実施している総務省の「就業構造基本調査」によると、バブル最盛期の1987年には、自分で事業を起したいと考える「起業希望者」の数が178.4万人にものぼったという。

    しかしバブル崩壊後は、1997年に166.5万人、2002年に140.6万人、2007年に101.4万人と右肩下がりが続き、2012年には遂に84万9500人にまで落ち込んでしまった。

    内訳を見ると、1997年には就業中の勤務先を辞めて起業したい人が129.5万人いたが、2012年には46.3万人足らずと激減。不況下では、せっかく入れた会社をわざわざ辞めて起業したいと考える人が少ないのは当然ともいえる。

    4月22日付読売新聞も起業希望者の半減を取り上げ、「長引く景気低迷で安定志向が強まり、積極的に起業するリスクをとろうという人が減ったものとみられる」と論じている。

    一方で、ネットを中心に「起業者は増えてると思ったのに」という声も少なくない。インターネットやスマホの普及によって起業のタネは増えており、新しいサービスが次々と生まれているからだ。

    「開業事業所数」はかえって増えているという統計も

    「希望者」は半減したが、実際に起業を果たした人の数はあまり減っていない、という仮説を示すデータもある。総務省・経産省の統計によると、2009~12年の「開業事業所数」は約44万2000件にのぼっている。

    この水準は、バブル期である1986~89年の約27万5000件を大きく上回る。直前のリーマンショックの反動という特殊要因は予想されるものの、決して「起業自体が半減している」ということはいえないようだ。

    直近の開業事業所数を産業別にみると、卸売業・小売業が27.0%で最多。ここには無店舗のECサイトも含まれるので、起業が増えている「肌感覚」に関係しているかもしれない。

    「中小企業白書」を発行する中小企業庁調査室の担当者によると、景気状況がどんな状態でも「高い意欲を持って起業する人」は一定数いるそうだ。

    国としても、新しい成長産業を興し、雇用環境を安定させるためにも、さらなる起業促進を進めたい。しかし、現状では起業というと「人生を賭けたギャンブル」のように考える人が少なくないので、「もっとローリスク、ミドルリスクの起業ができるように」政策を進めているという。

    「たとえば育児を終えた女性が、生活の延長として身の回りのサービスや、育児・教育関連のサービスをリスクの少ない形で起業する。そうした『人生の選択肢』として、もっと起業が視野に入る環境にしていきたいですね」

    確かに起業を夢見る人は減少したが、足元を地道に固めて事業を興している人は減っていないというのが実態のようだ。支援政策がいっそう充実するにつれて、今後も起業家は生まれていくのではないだろうか。

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