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    建設コンサルタント会社に転職するには 公共事業の企画・設計会社

    建設コンサルタント会社に転職するには 公共事業の企画・設計会社

    道路、橋梁、河川、ダムなど、私たちの生活を支える社会インフラの企画・設計・調査を担っているのが「建設コンサルタント会社」です。これらの企業は、国土交通省や地方自治体などの発注者のパートナーとして、公共事業の技術的支援を行う重要な役割を果たしています。

    近年の建設コンサルタント業界では、社会資本の老朽化対応と防災需要の増加により、市場規模が拡大傾向にあります。また、設計・施工分離の原則により公共事業の公平性・透明性を担保する立場として、安定した事業基盤を持つ企業が多く、転職先として注目が高まっています。今回は、建設コンサルタント会社への転職を検討している方に向けて、業界の特徴から転職成功のポイントまで、詳しく解説していきます。

    建設コンサルタント会社の特徴と業務内容

    建設コンサルタントとは、建設プロジェクトにおいて企画から設計、工事管理、検査など、技術的な支援を行う専門家です。道路や鉄道、河川、ダム、公園などの社会資本整備において、発注者と受注者の中立的な立場から適切なアドバイスを行います。

    1. 公共事業における重要な役割

    建設コンサルタントの最大の特徴は、公共事業における「設計・施工分離の原則」に基づく重要な役割を担うことです。社会資本の整備は原則税金で行われるため、公平性・透明性を担保するために設計者と施工者を別事業者が担うという仕組みがあり、建設コンサルタントは設計側を担当します。

    国と国民の中立的な立場で調査および立案を行い、双方の利益を守る責任の大きな仕事です。発注者である国土交通省や地方自治体などの技術パートナーとして、企画・計画・調査・設計・施工管理・維持管理など、建設事業の全般にわたって幅広い業務を行っています。

    建設コンサルタント業界の市場規模は約5,000億円程度で、建設業全体と比較すると規模は大きくありませんが、社会資本整備において切っても切れない存在として、安定した需要が見込まれています。官公庁などが発注者となってインフラに携わるというその性質から、急激な成長は望みにくい反面、倒産などの経営危機にも陥りにくい、比較的安定した業界といえます。

    2. 多様な専門分野と技術領域

    建設コンサルタントが対応する分野は22種類に分類され、非常に多岐にわたります。河川・砂防・海岸、道路、鉄道、上下水道、農業土木、森林土木、造園、都市計画、地質、測量、建築、環境など、社会インフラの全般をカバーしています。

    企業によって得意分野が異なり、特定分野に特化した専門性の高いサービスを提供しています。例えば、河川分野に強みを持つ企業、道路・交通分野を専門とする企業、環境・防災分野に特化した企業など、それぞれが独自の技術力と実績を積み重ねています。

    近年では、環境への配慮やデジタル技術の活用が求められる場面が増えており、BIMやICT技術、AI活用、カーボンニュートラル対応など、より高度で先進的な技術が期待されています。また、災害対応や防災計画、老朽化対策など、社会的な課題解決に直結する分野での需要が特に高まっています。

    3. プロジェクトの特徴と業務フロー

    建設コンサルタントが手がけるプロジェクトは、社会的意義が高く、地域住民の生活に直接関わる重要なインフラ整備が中心となります。発注者から依頼を受けた後、企画立案、計画策定、現地調査・測量、設計、積算、施工管理、完成検査という流れで業務が進行します。

    プロジェクト規模は数千万円から数十億円程度が中心で、工期は半年から数年程度のものが多くなります。大規模なダムや高速道路などの国家プロジェクトから、地域の生活道路や公園整備まで、幅広い規模のプロジェクトを扱います。

    業務は通常チーム制で進められ、技術士などの有資格者がリーダーとして全体を統括し、各専門分野の技術者が協力して高品質な成果物を作成します。社会資本整備の品質は建設コンサルタントの品質によって左右されると言っても過言ではなく、非常に責任の重い仕事といえます。

    建設コンサルタント業界で働く現実と企業文化

    建設コンサルタント業界は、技術力と専門性を重視する企業文化を持ち、安定した事業基盤がある一方で、官公庁依存や人材確保などの課題も抱えています。

    1. 技術者重視の成長環境

    建設コンサルタント業界で働く最大の魅力は、高度な専門技術を身につけながら社会貢献を実感できることです。道路、橋梁、上下水道、ダム、防災施設など、社会の基盤を支えるインフラ整備に深く関わる仕事のため、地域の人々の生活が便利になったり安全性が向上したりする様子を直接感じることができます。

    技術者としての成長環境も充実しており、技術士やRCCM(登録建設コンサルタント)などの専門資格の取得支援が手厚く行われています。特に技術士は建設コンサルタントにとって花形とも呼べる資格で、チームリーダーには技術士の資格を持つ人物が就くため、キャリアアップには必須の資格となっています。

    業務の対象が非常に多岐にわたるため、大規模な国道整備や鉄道計画、公園の設計、環境影響評価、防災計画まで様々な分野で活躍でき、仕事の幅を広げることができます。また、プロジェクトごとに異なる技術的課題に取り組むため、継続的な学習と技術向上が求められる環境があります。

    2. 安定性と働き方の特徴

    建設コンサルタント業界は、官公庁の公共事業を主な事業基盤としているため、景気変動の影響を受けにくく、長期的に安定した経営を維持している企業が多いのが特徴です。公共性の高さから比較的経営が安定した企業が多く、倒産リスクが低い業界といえます。

    一方で、官公庁依存度が高いことによる課題もあります。公共事業の予算削減や政策変更の影響を受けやすく、長時間労働が常態化している企業も存在します。ただし、近年は働き方改革への取り組みが進んでおり、若手技術者が長く働きたいと思える業界を目指す活動も行われています。

    転勤や出張が多いのも業界の特徴で、工事現場が全国に分散されているため、地方での勤務や長期出張の機会が多くあります。一方で、業務に必要な設備が整っていれば自宅でもできる仕事が多いため、比較的独立しやすい職種ともいわれています。

    3. 業界の課題と改善への取り組み

    建設コンサルタント業界では、他の建設業と同様に人材不足と高齢化が深刻な課題となっています。慢性的な人材不足により、未経験者を積極的に採用して教育する動きが活発化しており、若手人材の育成が急務となっています。

    給与水準についても課題があり、残業を含めた労働時間に対して適正な報酬が得られていないと感じるケースが多いのが実情です。しかし、大手企業では年収800万円から900万円を超える水準を実現している企業もあり、スキルを活かすことで給与改善とキャリアアップを目指せる可能性があります。

    業界全体での魅力アップとそのアピールを行って20代の働き手を増やしたり、技術を持つベテランの積極採用により労働力不足を補ったりといった取り組みが行われています。また、「若手技術者の会」のような有志組織が発足し、業界の今後を議論して明るい将来を思い描ける業界を目指す活動も進んでいます。

    建設コンサルタント業界の転職市場と将来性

    建設コンサルタント業界の転職市場は、インフラ老朽化と防災需要の拡大により、中長期的に安定した成長が期待できる分野となっています。

    1. 持続的な需要拡大と成長要因

    建設コンサルタント業界が堅調である大きな理由として、社会資本の老朽化と防災需要の拡大があげられます。高度経済成長期に建設された社会資本が一斉に建設後50年を迎えており、老朽化対策が全国的に必要になっています。

    国内の公共事業における建設コンサルタント業務の契約金額は平成24年度から令和4年度で50%程度増加し、建設コンサルタント業界会員企業全体の売上高は平成26年度から令和5年度で63%程度増加するなど、建設コンサルタントの需要は年々高まっています。

    また、自然災害の激甚化により防災需要が増加しており、災害に強いインフラ整備や災害対応計画の策定などの分野で継続的な需要が見込まれています。さらに、アジアなどの新興諸国におけるインフラ整備への需要の高まりが、建設コンサルタント業界の海外展開を支えています。

    2. 年収水準と待遇の改善

    建設コンサルタント業界の年収は、全国平均で約520万円程度となっており、大手企業では800万円から900万円を超える水準を実現している企業もあります。地域差があり、首都圏や関西圏では比較的高い年収となる傾向があります。

    年齢とともに年収が上昇する傾向があり、20代前半のスタート時は年収300万円台が多い一方、30代後半から40代にかけては年収600万円から700万円台に達するケースが増えます。技術士などの難関資格を取得し、役職を兼ねる場合、40代から50代で年収800万円以上となることも可能です。

    大手企業の年収水準を見ると、建設技術研究所が業界トップの900万円超え、セントラルコンサルタントなども800万円台後半の高水準を実現しています。正社員の場合、企業規模が大きいほど年収水準が高くなる傾向があり、大企業では年収1000万円を超えるケースもあります。

    3. 転職機会と求められる人材

    建設コンサルタント業界では、人材不足により転職機会が豊富にあります。特に経験者については、即戦力として高く評価され、好条件での転職が期待できます。技術士やRCCM、施工管理技士などの資格保持者は特に需要が高く、優遇された条件での採用が可能です。

    未経験者についても、一定の条件下で転職の可能性があります。ただし、建設コンサルタントは高度な技術的専門性が求められるため、完全未経験での転職には年齢や学歴の制約があるのが実情です。

    20代であれば理系学部出身(土木工学、建築学、機械工学、電気工学、環境工学など)を条件として、ポテンシャル採用される可能性があります。30代前半までであれば、理系学部出身で建設業界での経験(ゼネコンやハウスメーカーでの建設現場経験、設計事務所での設計・監理経験、官公庁での建設行政経験など)があれば転職可能性が高まります。

    30代後半以降の場合は、建設業界での実務経験がほぼ必須となり、完全未経験での転職は現実的には非常に困難です。学歴については、大手企業では大卒以上を求める傾向がありますが、中小企業では実務経験や専門知識があれば学歴要件が緩和される場合もあります。

    特に環境問題や防災計画といった社会的に注目される領域での経験がある場合は、高く評価される傾向があります。また、BIMなどのデジタルツールの活用能力や、プロジェクトマネジメント能力、語学力なども転職市場で有利に働く要素となります。

    転職を成功させるポイント

    建設コンサルタント会社への転職を成功させるためには、技術的専門性と社会貢献への意識を効果的にアピールすることが重要です。

    1. 専門分野の選択と技術力のアピール

    建設コンサルタントへの転職では、まず自分が興味を持つ専門分野を明確にすることが重要です。河川・防災、道路・交通、環境・都市計画、地質・測量など、それぞれの分野で求められるスキルや知識が異なるため、自分の経験と志向に合った分野を選択することが成功の鍵となります。

    技術力のアピールでは、保有資格と実務経験を効果的に組み合わせることが重要です。技術士、RCCM、施工管理技士などの国家資格は大きなアピールポイントとなります。資格取得に加えて、ゼネコンやハウスメーカーでの建設現場経験、設計事務所や官公庁での設計・監理経験も高く評価されます。

    未経験者の場合は、建設コンサルタントで培いたいスキルや経験を具体的な事例とともに説明することが効果的です。なぜその専門分野に興味を持ったか、理系的な思考力や分析力を発揮したエピソード、継続的な学習意欲、長期的なキャリアビジョンなどを明確に伝えることが重要です。

    2. 社会貢献意識と公共性への理解

    建設コンサルタントの面接では、技術力だけでなく社会貢献への意識や公共性への理解が重視されます。インフラ整備を通じて地域社会や国民生活の向上に貢献したいという想いを具体的に示すことが重要です。

    面接では「なぜ建設コンサルタントを選んだのか」「公共事業にどのような価値を見出すか」「地域社会への貢献をどう考えるか」といった質問が頻繁に出されます。これらの質問に対して、具体的なエピソードを交えながら、説得力のある回答を準備しておくことが必要です。

    また、建設コンサルタントの仕事は国と国民の中立的な立場で行われるため、公正性や客観性を重視した考え方ができることも重要なアピールポイントとなります。利害関係者間の調整や合意形成への関心、倫理観の高さなども評価される要素です。

    3. 効果的な転職活動の進め方

    建設コンサルタントへの転職活動では、業界の特殊性を理解した専門的なアプローチが必要です。建設業界専門の転職エージェントの活用が効果的で、業界特有の求人情報や企業の内部情報を得ることができます。

    企業研究では、各社の得意分野と主要プロジェクト、技術開発への取り組み、働き方改革の状況などを詳しく調べることが重要です。年間休日数、残業時間、福利厚生制度、資格取得支援制度なども、長期的なキャリア形成を考える上で重要な要素となります。

    転職時期については、年度始めの4月や下半期開始の10月が一般的ですが、公共事業の予算執行時期に合わせた採用も行われるため、通年での転職機会があります。また、大規模プロジェクトの立ち上げ時期に合わせた中途採用も多く、タイミングを見極めることが重要です。

    キャリアパスと将来展望

    建設コンサルタントでのキャリアは、技術的専門性を軸とした多様な発展可能性があります。技術者としての成長、管理職への昇進、独立開業など、様々な選択肢が用意されています。

    1. 技術者としての専門性深化

    建設コンサルタントの最も魅力的なキャリアパスは、特定分野での技術エキスパートとして成長することです。河川・防災、道路・交通、環境・都市計画など、専門分野での豊富な経験を積み、その分野の第一人者として業界内での地位を確立することができます。

    技術者としてのキャリアステップは、一般技術者から主任技術者、管理技術者、技術士へと段階的に進んでいきます。技術士取得後は、プロジェクトリーダーや技術統括者として大規模プロジェクトを統括し、後進の指導・育成にも携わることになります。

    さらに技術的権威としての地位を築くことで、学会活動、技術基準の策定、技術論文の執筆、国や自治体の技術委員会への参画など、業界全体への貢献機会も広がります。特定分野での技術的リーダーとして、社会的な影響力を持ちながら専門性を追求するキャリアを築くことができます。

    2. 管理職・経営幹部への発展

    技術的バックグラウンドを持つ人材は、建設コンサルタント会社の管理職・経営幹部として重要な役割を担います。部門長、事業部長、取締役といった管理職から、代表取締役・社長への道筋も開かれています。

    技術系経営者としての価値は、技術と経営の両面での判断力、発注者との技術的な対話能力、現場の実情を理解した経営判断、技術革新への戦略的投資判断などにあります。また、新技術分野の事業化、海外事業の推進、M&A・技術提携の推進、新サービス・ソリューションの開発など、事業開発や新分野展開の領域でも活躍の機会があります。

    公務員からの転職者の場合、行政経験を活かして営業部門や事業企画部門で活躍し、将来的に経営幹部として活躍するケースも多く見られます。発注者側の経験と民間企業での技術力を組み合わせることで、独自の価値を提供できる人材として高く評価されます。

    3. 独立・起業と多様な働き方

    建設コンサルタントの経験は、将来的な独立・起業への道筋としても非常に有効です。業務に必要な設備が整っていれば自宅でもできる仕事が多いため、比較的独立しやすい職種といえます。

    独立開業の道筋としては、専門分野での技術コンサルティング会社の設立、特定領域に特化した設計事務所の開設、調査・測量専門会社の起業などがあります。特に環境調査、防災計画、維持管理計画、BIM・デジタル化支援などの分野は、独立に適した専門領域として注目されています。

    成功のためには高度な専門技術力、豊富な人脈・ネットワーク、営業・経営スキル、特定分野での実績と信頼が必要ですが、建設コンサルタントでの経験はこれらすべての要素を身につけるための最適な環境といえます。また、フリーランスとして大規模な案件を獲得できれば、年収1000万円を超えることも可能です。

    公共事業を支える建設コンサルタントの価値

    建設コンサルタントは、国民の生活を支える社会インフラの整備に深く関わる重要な仕事です。新しい道路や橋梁、上下水道施設の計画から設計、施工まで一貫して関与することで、安全性と公平性を確保し、社会の持続的発展を支えています。

    高度な技術的専門性、社会貢献の実感、安定した事業基盤、多様なキャリアパス—これらすべてを兼ね備えた建設コンサルタント業界は、技術者として充実したキャリアを築きたい方にとって理想的な選択肢といえるでしょう。確かに給与水準や労働環境に課題がある企業もありますが、それらを上回る技術的な成長機会、社会貢献の充実感、長期的な安定性は、建設業界でのキャリアを考える上で非常に価値のある要素です。

    建設コンサルタントへの転職は、技術力と社会貢献意識を重視し、公共性の高い仕事に携わりたい方にとって最適な選択肢です。インフラ老朽化と防災需要により転職機会も豊富で、技術力と専門性を持つ方であれば、社会の基盤を支える建設企業で充実したキャリアを築くことができます。技術力で社会インフラを支える専門技術者として、新たなキャリアの可能性を探してみませんか。

     

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