6月の残業代稼ぎに注意! かえって「手取り」が減る理由 2014年6月6日 仕事のエコノミクス ツイート 給料が安すぎて、残業しないと自分の小遣いも減らされる――。そんな悲愴な思いで長時間の「生活残業」にいそしむ人もいるだろう。だが、ちょっと待って欲しい。この時期に残業しすぎてしまうと、その年の「手取り額」が減ってしまうことがあるのだ。 サラリーマンなら知っていると思うが、会社から振り込まれる給料の額は、給料に残業代や通勤手当などを加えた「額面」から、税金や労働・社会保険料などを引いた「手取り」だ。住民税などは前年の所得から算出されるが、問題となるのが社会保険料である。 社会保険料の算定基準となる「標準報酬月額」は、4月から6月までに支払われた給与の平均を元に決定される。したがって、この3か月に長時間労働し、残業代が突出してしまうと、社会保険料が増え、9月からの手取り減少をもたらすことになる。 9月以降に保険料が増加 念のため、社会保険料の算出方法について、おさらいしよう。社会保険には、労災ではない病気やケガをしたときの給付に備える「健康保険料」と、高齢や死亡によって働けなくなったときの本人や遺族への給付に備える「厚生年金保険料」の2つがある。 保険料はともに会社と本人で折半して支払い、平均的な月の給与とみなされる「標準報酬月額」に、保険料率を掛けたものが給与から「天引き」される。 ちなみに、厚生年金の保険料率は17.12%で、本人負担は8.56%。健康保険料率は、東京に住んで勤め先の会社に健康保険組合がない場合(協会けんぽに加入する場合)は9.97%で、本人負担は4.985%となる。本人負担の合計は、13.545%にのぼる。 そして「標準報酬月額」は、前述のように4月から6月に支払われた平均給与を元に決定する。数千円から数万円の等級に分かれており、平均給与が22万5000円の場合、「21万円以上23万円未満」の等級に該当するので、標準報酬月額は22万円となる。 この額は、その年の9月から翌年8月までの「社会保険料」の算定のために、1年間適用される。そのため、4~6月にたくさん残業して給与が増えてしまうと、標準報酬月額が上がってしまい、9月以降に保険料が増加。一時的に残業が増えたがために、手取り額が減ってしまうという事態が起こりえるのだ。 同じ年収なのに保険料の負担額が大きく違うことも たとえば、普段の給与が22万円の人が、4~6月に残業代で月3万円ずつ多く稼ぐと、額面が25万円となり、標準報酬月額が2ランクアップして「25万円以上27万円未満」の等級に該当し26万円になってしまう。 そうなると、厚生年金の本人負担額(8.56%)が1万8832円から2万2256円に上がり、健康保険料(4.985%)も1万967円から1万2961円へと上昇。1月あたりだと約5400円、年間だと約6万5000円の負担増しになる。 なので、その時期を避け7月以降に残業をした人とでは、年収が同じなのに保険料の負担額が大きく違う、という事態もありえるのだ。 もちろん、将来も年金制度が続いていけば、厚生年金は多く払えば将来もらえる額が多くなる。だが、健康保険料の方はいくら多く払ったとしても、3割負担という部分は変わらない。 仕事を頑張るのも結構だが、4~6月は生産性を上げてなるべく残業しない、というのが賢明だろう。5月までに働きすぎてしまった人の参考になれば幸いである。 あわせて読みたい:社会人2年目で「手取り」が減る!? 最新記事は@kigyo_insiderをフォロー/キャリコネ編集部Facebookに「いいね!」をお願いします
6月の残業代稼ぎに注意! かえって「手取り」が減る理由
給料が安すぎて、残業しないと自分の小遣いも減らされる――。そんな悲愴な思いで長時間の「生活残業」にいそしむ人もいるだろう。だが、ちょっと待って欲しい。この時期に残業しすぎてしまうと、その年の「手取り額」が減ってしまうことがあるのだ。
サラリーマンなら知っていると思うが、会社から振り込まれる給料の額は、給料に残業代や通勤手当などを加えた「額面」から、税金や労働・社会保険料などを引いた「手取り」だ。住民税などは前年の所得から算出されるが、問題となるのが社会保険料である。
社会保険料の算定基準となる「標準報酬月額」は、4月から6月までに支払われた給与の平均を元に決定される。したがって、この3か月に長時間労働し、残業代が突出してしまうと、社会保険料が増え、9月からの手取り減少をもたらすことになる。
9月以降に保険料が増加
念のため、社会保険料の算出方法について、おさらいしよう。社会保険には、労災ではない病気やケガをしたときの給付に備える「健康保険料」と、高齢や死亡によって働けなくなったときの本人や遺族への給付に備える「厚生年金保険料」の2つがある。
保険料はともに会社と本人で折半して支払い、平均的な月の給与とみなされる「標準報酬月額」に、保険料率を掛けたものが給与から「天引き」される。
ちなみに、厚生年金の保険料率は17.12%で、本人負担は8.56%。健康保険料率は、東京に住んで勤め先の会社に健康保険組合がない場合(協会けんぽに加入する場合)は9.97%で、本人負担は4.985%となる。本人負担の合計は、13.545%にのぼる。
そして「標準報酬月額」は、前述のように4月から6月に支払われた平均給与を元に決定する。数千円から数万円の等級に分かれており、平均給与が22万5000円の場合、「21万円以上23万円未満」の等級に該当するので、標準報酬月額は22万円となる。
この額は、その年の9月から翌年8月までの「社会保険料」の算定のために、1年間適用される。そのため、4~6月にたくさん残業して給与が増えてしまうと、標準報酬月額が上がってしまい、9月以降に保険料が増加。一時的に残業が増えたがために、手取り額が減ってしまうという事態が起こりえるのだ。
同じ年収なのに保険料の負担額が大きく違うことも
たとえば、普段の給与が22万円の人が、4~6月に残業代で月3万円ずつ多く稼ぐと、額面が25万円となり、標準報酬月額が2ランクアップして「25万円以上27万円未満」の等級に該当し26万円になってしまう。
そうなると、厚生年金の本人負担額(8.56%)が1万8832円から2万2256円に上がり、健康保険料(4.985%)も1万967円から1万2961円へと上昇。1月あたりだと約5400円、年間だと約6万5000円の負担増しになる。
なので、その時期を避け7月以降に残業をした人とでは、年収が同じなのに保険料の負担額が大きく違う、という事態もありえるのだ。
もちろん、将来も年金制度が続いていけば、厚生年金は多く払えば将来もらえる額が多くなる。だが、健康保険料の方はいくら多く払ったとしても、3割負担という部分は変わらない。
仕事を頑張るのも結構だが、4~6月は生産性を上げてなるべく残業しない、というのが賢明だろう。5月までに働きすぎてしまった人の参考になれば幸いである。
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