• 就活後ろ倒しで一気に加速? 「インターンシップ」3年生8月に内定出す

    就業体験を希望する学生を受け入れる「インターンシップ」を実施する企業が急増している。背景には2016年卒の就活スケジュール後ろ倒しを踏まえ、「優秀な学生に少しでも早く接触したい」という企業側の危機感がある。

    就活生に情報提供を行うインターンシップ・キャンパスウェブの担当者によると、「インターンシップの受け入れ枠は確実に広がっている」という。この夏にインターンシップを募集する企業は1400社を超えるといわれ、2年前の2倍に増えている。

    あくまで「学習の場」というタテマエだが

    インターンシップは、欧米では選考を前提とした場として広く実施されている。主流は無給で、米国では学生からお金を取る「有料インターン」もある。期間は2~3ヶ月で、そこでスキルをつけて「即戦力」として本採用されるのが普通だ。

    しかし日本のインターンシップは、あくまで「学習の場」であって、採用活動が始まる前の「青田刈り」の場ではないとされる。日本経団連の「採用選考に関する企業の倫理憲章」には、

    「インターンシップは、産学連携による人材育成の観点から、学生の就業体験の機会を提供するために実施するもの」
    「実施にあたっては、採用選考活動(広報活動・選考活動)とは一切関係ないことを明確にして行うこととする」

    と、あくまで「選考とは関係なく行うこと」と明記されている。東洋大学の小島貴子准教授もNHKの取材に対し、インターンシップの活性化によって優秀な学生が水面下で囲い込まれる可能性を認めつつ、

    「(そうなると)大学は、学生にいつの時期から就職活動を始めたらいいか教えることができなくなる。企業には採用活動の過程をできるだけ見えるようにしてほしい」

    とし、選考と切り離すようきちんと定義づけるべきと主張している。

    一方で、日本経団連に加入していない外資系企業やベンチャー企業では、以前からインターンシップを通じた早期の採用が行われている。大企業の「3月解禁、8月内定」をきっかけに、この流れがさらに加速しそうなのも事実である。

    3年生の8月に「内々定」を出すベンチャーも

    2016年卒の「採用直結型」のインターンシップを、すでに打ち出している企業もある。ITベンチャーのクラウドワークスは、UX(ユーザー体験)デザインの改善を実践するインターン(8~9月開催)を募集している。

    5日間の短期集中プログラムを通じ、現在のクラウドワークスWebサイトの課題発見や改善案策定、ブラッシュアップを行い、役員・社員全員に対してプレゼンテーションの場を設ける。報酬額は1万5000円だ。

    クラウドワークスのインターン担当者は、早期にインターンを実施する目的として、「企業の認知度を高めること」とともに、「優秀な学生とじっくり対話する時間を作ること」があると明かす。

    「面接では短時間で人物を見極めなければならず、ミスマッチが起こりやすい。学生にインターンシップを経験してもらうことにより、学生、会社ともに納得感をもって採用や入社の決断ができると考えています」

    昨年は3シーズンのインターンで約10人に内定を出した。その7割程度が入社しているというから、2~30人規模の企業では高い入社率だと言えるだろう。

    「まだ若い会社ですので、入社希望者が『社風にマッチするか』『ビジョンに共感できるか』というところを重視しています」

    今回のサマーインターンでは、8月中旬頃から内定を出しはじめるという。3年生の8月に内定となれば、2016年卒の就活生にとっては相当早い部類になる。倫理憲章の「4年生の8月」より1年も早い。

    「就活後ろ倒し」の恩恵は誰が受けるのか

    「採用直結」と謳っていなくとも、インターンが採用活動に「大きな影響を与える」と認識する企業は多い。レジェンダ・コーポレーションの調査によると、企業が就職サイト以外で学生を集める方法として最も多く挙げているのが「インターンシップ」(53.3%)だった。

    学生と企業のマッチング度合いが「向上する」と回答した企業も77.4%となっている。12日にはLINEが初めてのインターンシップを発表し、その報酬が破格の「月40万円」であることも話題となった。

    このような「前倒し」インターンシップで成果をあげる企業が少しずつ増えている背景には、学生側の意識の変化もあるかもしれない。

    バブル崩壊以降の「失われた30年」では、学生に「大企業・安定雇用志向」「就社意識」が強く表れていた。しかしアベノミクスによる景気の回復で、一部の学生は「自分の能力を適切に評価してくれる会社」に考えがシフトしつつある。

    このような学生は、「どの会社に就職するか」よりも「どんな人たちと、どんな仕事をして自分のスキルを磨くのか」の方に興味を示す。

    インターンシップで気に入った会社から内々定をもらっておけば、余裕をもって「普通のシューカツ」に臨むことができる。大企業の将来性に疑問を持つ学生であれば、「普通のシューカツ」などせずに、残りの学生生活を謳歌する人も出てくる――。そんな形で「新卒一括採用」の牙城が崩れ始めるのかもしれない。

    もしもそうなれば、経団連の「就活後ろ倒し」の恩恵は、「経団連非加盟企業の入社予定者」にもたらされるという皮肉な結果になるのではないか。

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