「サービス残業」は経営者にとって麻薬だ! いちどヤったらやめられない 2014年7月10日 元社員が語る「外食産業」の舞台裏 ツイート 突然ですが皆さんは、今までサービス残業をしたことがありますか。おそらくほとんどの人が「ある」と答えるのではないでしょうか。 では、なぜサービス残業は、ここまで横行するのでしょうか。ワタミで副店長を務めた経験を基に、外食産業の視点からサービス残業について考えてみました。 浮いた人件費が、そのまま利益になるおいしさ 結論から申し上げると、従業員にサービス残業をさせると「会社がまんま儲かるから」「利益が簡単に出るから」ということです。 外食産業の利益構造は、店の家賃や品物の仕入れの値段、人件費などから、売上を差し引き、残ったお金が利益というしくみです。そして外食チェーンでは、人件費や品物の原価が高すぎると利益が出ない構造になっています。 店の家賃は相場次第ですから、簡単には調整できません。品物の原価は、チェーン店ならではの「大量仕入れで一品当たりのコストを下げる」という手法を使っています。こうしてお客様に、より安い商品提供が可能になりました。 ただ、外食チェーンは飽和状態です。少ないパイで、お客の奪い合いが起きているのが現実で、売上が簡単には取れない状態なのです。 「お客はなかなか来ない。でも利益は出したい」――。このように考える経営者にとって、「サービス残業」ほど手っ取り早く利益確保できる、おいしい方法はありません。 店が溢れている時代では、売り上げを増やすことは簡単ではありません。販売促進活動をしても、すぐには効果が出ません。今日チラシを配ったとしても、明日いきなりお客が増えるようなことはないのです。 そこで人件費の話です。従業員にサービス残業してもらえば、その支払うべき人件費分がそのまま利益になります。売上が変わらず、仕入れの値段も変わらず、人件費だけ減らせば、その分の利益が得られるという仕組みです。 サビ残業なしで「利益の出る構造」を考えるのが経営者 ある本には「リストラは麻薬と同じ」とありました。どういうことかというと、実行するまでは簡単にはできず、躊躇する。ただ、一度やってしまうと、その効果に味を占め、だんだんと感覚がマヒしていくというのです。 この「リストラ」を「サービス残業」に置き換えることができるでしょう。同じ仕事を今までより少ない人数で行うという意味では同じことです。リストラより即効性があり、今すぐ簡単にできますから、やめられなくなるのは当然と言えます。 こうして経営者のみが得をするサービス残業が完成します。売上が簡単にあげられない以上、別で折り合いをつけるのです。「労働意欲の高い社員」や「上下関係があり文句の言いにくい部下」から搾取するという、いちサラリーマンの我々からは許しがたい理由からきているものが、サービス残業なのです。 おそらく経営者は「仕事が終わらない」「時間がない」などと言う理由で、サービス残業を強要していることでしょう。でもそれはウソなのです。本来であれば、決められた時間で効率よく仕事をこなし、しっかりと仕事を終わらせるしくみを作るべきなのです。 飲食店であれば、従業員たちに甘えず、利益の出る構造を日々模索するべきなのです。なぜなら、会社の利益を出し、社員たちの生活を守り、働きやすい環境を整備することは、経営者の仕事だからです。これをしない、またはできずに安易に従業員のサービス残業に逃げ、利益を出している経営者は、糾弾されてしかるべきと私は思います。 あわせてよみたい:元社員が語る「外食産業」の舞台裏 バックナンバー 【プロフィール】ナイン北海道在住の20代後半の男性。大学卒業後、居酒屋チェーンWを運営する会社に正社員として入社。都内店舗のスタッフや副店長として約4年間勤務した後、「もう少し発展性のある仕事がしたい」と転職。現場を知る立場から、外食産業を頭ごなしにブラックと批判する声には「違和感がある」という。Twitter/Facebook/ブログ
「サービス残業」は経営者にとって麻薬だ! いちどヤったらやめられない
突然ですが皆さんは、今までサービス残業をしたことがありますか。おそらくほとんどの人が「ある」と答えるのではないでしょうか。
では、なぜサービス残業は、ここまで横行するのでしょうか。ワタミで副店長を務めた経験を基に、外食産業の視点からサービス残業について考えてみました。
浮いた人件費が、そのまま利益になるおいしさ
結論から申し上げると、従業員にサービス残業をさせると「会社がまんま儲かるから」「利益が簡単に出るから」ということです。
外食産業の利益構造は、店の家賃や品物の仕入れの値段、人件費などから、売上を差し引き、残ったお金が利益というしくみです。そして外食チェーンでは、人件費や品物の原価が高すぎると利益が出ない構造になっています。
店の家賃は相場次第ですから、簡単には調整できません。品物の原価は、チェーン店ならではの「大量仕入れで一品当たりのコストを下げる」という手法を使っています。こうしてお客様に、より安い商品提供が可能になりました。
ただ、外食チェーンは飽和状態です。少ないパイで、お客の奪い合いが起きているのが現実で、売上が簡単には取れない状態なのです。
「お客はなかなか来ない。でも利益は出したい」――。このように考える経営者にとって、「サービス残業」ほど手っ取り早く利益確保できる、おいしい方法はありません。
店が溢れている時代では、売り上げを増やすことは簡単ではありません。販売促進活動をしても、すぐには効果が出ません。今日チラシを配ったとしても、明日いきなりお客が増えるようなことはないのです。
そこで人件費の話です。従業員にサービス残業してもらえば、その支払うべき人件費分がそのまま利益になります。売上が変わらず、仕入れの値段も変わらず、人件費だけ減らせば、その分の利益が得られるという仕組みです。
サビ残業なしで「利益の出る構造」を考えるのが経営者
ある本には「リストラは麻薬と同じ」とありました。どういうことかというと、実行するまでは簡単にはできず、躊躇する。ただ、一度やってしまうと、その効果に味を占め、だんだんと感覚がマヒしていくというのです。
この「リストラ」を「サービス残業」に置き換えることができるでしょう。同じ仕事を今までより少ない人数で行うという意味では同じことです。リストラより即効性があり、今すぐ簡単にできますから、やめられなくなるのは当然と言えます。
こうして経営者のみが得をするサービス残業が完成します。売上が簡単にあげられない以上、別で折り合いをつけるのです。「労働意欲の高い社員」や「上下関係があり文句の言いにくい部下」から搾取するという、いちサラリーマンの我々からは許しがたい理由からきているものが、サービス残業なのです。
おそらく経営者は「仕事が終わらない」「時間がない」などと言う理由で、サービス残業を強要していることでしょう。でもそれはウソなのです。本来であれば、決められた時間で効率よく仕事をこなし、しっかりと仕事を終わらせるしくみを作るべきなのです。
飲食店であれば、従業員たちに甘えず、利益の出る構造を日々模索するべきなのです。なぜなら、会社の利益を出し、社員たちの生活を守り、働きやすい環境を整備することは、経営者の仕事だからです。これをしない、またはできずに安易に従業員のサービス残業に逃げ、利益を出している経営者は、糾弾されてしかるべきと私は思います。
あわせてよみたい:元社員が語る「外食産業」の舞台裏 バックナンバー
【プロフィール】ナイン
北海道在住の20代後半の男性。大学卒業後、居酒屋チェーンWを運営する会社に正社員として入社。都内店舗のスタッフや副店長として約4年間勤務した後、「もう少し発展性のある仕事がしたい」と転職。現場を知る立場から、外食産業を頭ごなしにブラックと批判する声には「違和感がある」という。Twitter/Facebook/ブログ