半導体製造装置 東京エレクトロンとアドバンテストの2強は変化に対応できるか? 2012年3月28日 企業徹底研究 ツイート 「電子立国日本」の基盤を支えてきた半導体製造装置業界。その市場で「2強」とされる東京エレクトロンとアドバンテストの先行きについて対照的な見方が広がっている。 米ガートナーによると、2010年の半導体製造装置の出荷額シェアで東京エレクトロンは3位、アドバンテストは10位に位置する。 前工程を手がける東京エレクトロンは、次世代半導体製造向けに米国企業を買収するなど、積極的な拡大策に動く一方、テスター(半導体試験装置)を中心に後工程を手がけるアドバンテストは、「構造不況に陥っている」という悲観的な見方が出ている。 「産業のコメ」といわれる半導体の生産に不可欠とされてきた製造装置。しかし、半導体受給の波に左右される従来の経営環境に加え、回路線の微細化が進んだ小型次世代半導体の登場などで、かつての常識は通用しなくなった。 このような事業環境の変化が進む中、次の一手が注目されている両社。そこで、その社員たちの声をキャリコネの口コミから拾ってみた。 ◇ 東京エレクトロン 社内の派閥争いが社員に弊害を及ぼす 東京エレクトロンは3月16日、米半導体製造装置メーカーのネックス・システムズ社(マサチューセッツ州)を買収したと発表した。ネックス・システムズ社は大手の半導体メーカーが開発を進めている次世代半導体に使うシリコン貫通電極(TSV)を形成するための関連装置を持つ。東京エレクトロンは同社を買収することで新たな収益源に育てる狙いだ。 社員の投稿を見ると、社内に存在する派閥に言及している口コミが目に付く。代表的なのは、次の40代前半の女性社員のような声だ。 「社内に派閥がある。そのことで、部下の将来が変わってくる。仕事がうまくできるかどうかよりも、派閥のせいで異動になったり、切られたり、と残念なことがある。客観的に見てかなり能力のある社員でもそのようなことになるので、とても残念だ」 新規分野への進出は何よりも、それを担う人材によって成否が決まる。このような社内の悪しき人間関係で、優秀な社員の能力を活用できないのは由々しき問題だろう。 一方、押し寄せる業界の変化の波を、社員はかなり真剣に感じ取っている。40代後半の男性社員が言う。 「現在、半導体製造装置の業界も変革の時期に差し掛かっていますので、企業として飛躍できるか埋没していくかの分かれ目だと感じています」 ただ、こうした自社を取り巻く環境は、成長のチャンスと捉えているようだ。 「この10年で大きく変わる企業のひとつではないでしょうか?そのような業界で世界シェア2位、3位ですのでシチュエーションとしては面白いと思います」 ◇ アドバンテスト 真面目社員だが、「働かなくても高給」で人材が硬直化 アドバンテストは、先行きに不透明感が漂っている。同社の主力だったメモリーテスター分野が、他の半導体製造装置と比べて際立って事業環境が悪化しているという現実が背景にある。7月に統合した同業の米ベリジーとの相乗効果にも期待を寄せるが、足元では費用が先行する段階だ。 同社は、DRAMテスターで世界シェアは首位。しかし、エルピーダメモリの経営破綻が象徴するように、メモリーメーカーは、業績が厳しく、検査装置への投資を抑制。その影響を受けるため、今後の業績に対する不安感が広がっている。 そんなアドバンテストだが、社員は極めて真面目だという。26歳の男性社員が説明する。 「真面目な人、周囲の輪を乱さない人間が集められている感じがある。典型的な大企業の例である」 報酬は同業他社よりも高いと、30代後半の男性社員は話す。さらに、「大企業」と言うだけあって、働かない人でも、それなりの給料をもらうことができるという。 「報酬自体は他の企業よりも多いが、仕事をしなくてもいい給料がもらえるため、出世をあきらめた人たちは仕事をほとんどしない傾向がある」 こうした話だけを聞くと、安定した会社のように思えるが、半導体業界は市場の好不調が激しいことで知られる。今回の「DRAM不況」のように、その影響を受ける同社は、必ずしも将来が安泰というわけではない。31歳の男性社員も、その点を告白している。 「報酬が多いときは、年数ヶ月以上出るなど、非常に恵まれている。しかし、半導体業界は好不況の波が大きく、業界が落ち込んだときは、それに合わせてボーナスも落ち込む。正直、人生計画が立てにくい会社ではある」 東京エレクトロンはTBS(東京放送)が主たる出資者となり設立。一方、アドバンテストの旧社名は武田理研工業と言った。両社とも1980年代に発展した日の丸半導体産業を支えたハイテクベンチャーの雄だったが、今や大企業に発展。かつての優良企業の面影は薄れた。現在は次世代半導体を巡る環境変化の対応を迫られている両社だが、キャリコネの口コミを見る限りでは、社内に抱える人事面での問題の解決が急務に思われる。 *「キャリコネ」は、社員が投稿した企業に関する口コミ、年収情報、面接体験などを共有するサイトです。2012年2月末現在、45万社、16万6000件の口コミが登録されています。
半導体製造装置 東京エレクトロンとアドバンテストの2強は変化に対応できるか?
「電子立国日本」の基盤を支えてきた半導体製造装置業界。その市場で「2強」とされる東京エレクトロンとアドバンテストの先行きについて対照的な見方が広がっている。
米ガートナーによると、2010年の半導体製造装置の出荷額シェアで東京エレクトロンは3位、アドバンテストは10位に位置する。
前工程を手がける東京エレクトロンは、次世代半導体製造向けに米国企業を買収するなど、積極的な拡大策に動く一方、テスター(半導体試験装置)を中心に後工程を手がけるアドバンテストは、「構造不況に陥っている」という悲観的な見方が出ている。
「産業のコメ」といわれる半導体の生産に不可欠とされてきた製造装置。しかし、半導体受給の波に左右される従来の経営環境に加え、回路線の微細化が進んだ小型次世代半導体の登場などで、かつての常識は通用しなくなった。
このような事業環境の変化が進む中、次の一手が注目されている両社。そこで、その社員たちの声をキャリコネの口コミから拾ってみた。
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東京エレクトロン 社内の派閥争いが社員に弊害を及ぼす
東京エレクトロンは3月16日、米半導体製造装置メーカーのネックス・システムズ社(マサチューセッツ州)を買収したと発表した。ネックス・システムズ社は大手の半導体メーカーが開発を進めている次世代半導体に使うシリコン貫通電極(TSV)を形成するための関連装置を持つ。東京エレクトロンは同社を買収することで新たな収益源に育てる狙いだ。
社員の投稿を見ると、社内に存在する派閥に言及している口コミが目に付く。代表的なのは、次の40代前半の女性社員のような声だ。
「社内に派閥がある。そのことで、部下の将来が変わってくる。仕事がうまくできるかどうかよりも、派閥のせいで異動になったり、切られたり、と残念なことがある。客観的に見てかなり能力のある社員でもそのようなことになるので、とても残念だ」
新規分野への進出は何よりも、それを担う人材によって成否が決まる。このような社内の悪しき人間関係で、優秀な社員の能力を活用できないのは由々しき問題だろう。
一方、押し寄せる業界の変化の波を、社員はかなり真剣に感じ取っている。40代後半の男性社員が言う。
「現在、半導体製造装置の業界も変革の時期に差し掛かっていますので、企業として飛躍できるか埋没していくかの分かれ目だと感じています」
ただ、こうした自社を取り巻く環境は、成長のチャンスと捉えているようだ。
「この10年で大きく変わる企業のひとつではないでしょうか?そのような業界で世界シェア2位、3位ですのでシチュエーションとしては面白いと思います」
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アドバンテスト 真面目社員だが、「働かなくても高給」で人材が硬直化
アドバンテストは、先行きに不透明感が漂っている。同社の主力だったメモリーテスター分野が、他の半導体製造装置と比べて際立って事業環境が悪化しているという現実が背景にある。7月に統合した同業の米ベリジーとの相乗効果にも期待を寄せるが、足元では費用が先行する段階だ。
同社は、DRAMテスターで世界シェアは首位。しかし、エルピーダメモリの経営破綻が象徴するように、メモリーメーカーは、業績が厳しく、検査装置への投資を抑制。その影響を受けるため、今後の業績に対する不安感が広がっている。
そんなアドバンテストだが、社員は極めて真面目だという。26歳の男性社員が説明する。
「真面目な人、周囲の輪を乱さない人間が集められている感じがある。典型的な大企業の例である」
報酬は同業他社よりも高いと、30代後半の男性社員は話す。さらに、「大企業」と言うだけあって、働かない人でも、それなりの給料をもらうことができるという。
「報酬自体は他の企業よりも多いが、仕事をしなくてもいい給料がもらえるため、出世をあきらめた人たちは仕事をほとんどしない傾向がある」
こうした話だけを聞くと、安定した会社のように思えるが、半導体業界は市場の好不調が激しいことで知られる。今回の「DRAM不況」のように、その影響を受ける同社は、必ずしも将来が安泰というわけではない。31歳の男性社員も、その点を告白している。
「報酬が多いときは、年数ヶ月以上出るなど、非常に恵まれている。しかし、半導体業界は好不況の波が大きく、業界が落ち込んだときは、それに合わせてボーナスも落ち込む。正直、人生計画が立てにくい会社ではある」
東京エレクトロンはTBS(東京放送)が主たる出資者となり設立。一方、アドバンテストの旧社名は武田理研工業と言った。両社とも1980年代に発展した日の丸半導体産業を支えたハイテクベンチャーの雄だったが、今や大企業に発展。かつての優良企業の面影は薄れた。現在は次世代半導体を巡る環境変化の対応を迫られている両社だが、キャリコネの口コミを見る限りでは、社内に抱える人事面での問題の解決が急務に思われる。
*「キャリコネ」は、社員が投稿した企業に関する口コミ、年収情報、面接体験などを共有するサイトです。2012年2月末現在、45万社、16万6000件の口コミが登録されています。