韓国企業にボロ負けしても、変化を起こせない―ソニー、日立、東芝 2012年3月2日 企業徹底研究 ツイート トムソン・ロイターの分析によると、ソニー、パナソニックなど日本の電機メーカー5社は、2000年以降の急激な業績悪化で企業価値の3分の2を失ったという。ある大手メーカー元幹部は英エコノミストの取材に、こう答えている。 「変わらなければならないことは誰もが分かっているのに、誰もその変化を起こせない」 日本の電機メーカー9社の営業利益は、すべてを足しても韓国サムスン電子にようやく肩を並べる程度だとか。サムスンも最近は液晶パネル部門で赤字を出したとはいえ、日本メーカーに勝機が見えたというわけでは決してない。 2012年のソニー、パナソニック、富士通、NEC、シャープの株式時価総額の合計は、2000年の3分の1にまで縮小すると予想されている(英エコノミストより) ソニー社員「うちには強みはもうありません」 2012年3月期の決算で、2200億円もの赤字になる見通しのソニー。経営企画部門に所属する40代後半の男性社員は、会社の状況について極めて厳しい見方をしている。 「この業界は韓国メーカーの追い上げ、というより世界に目を向ければ完全に追い越されている状態です。それでも、日立、東芝という総合家電メーカーはそれぞれの強みを持っており、個々の分野では優位な状況にあると思います。残念ながら、ソニーにはもうありません」 それでも、この社員は、2010年度で1100万円の年収があった。これだけの厚遇を受けていれば、「現状を大きく変えてやろう」というハングリーな気持ちも起こらないのではないか、と余計な心配もしたくなる。 ソニーの社員に「優位な状況が残っている」と言われた日立製作所だが、財務部門に勤める男性社員(30代後半)の認識は、かなり悲観的だ。 「日立の伝統を背負った年功の現在経営陣では、ドラスチックな改革は無理。グローバルと言いながら、終身雇用、年功序列の基本はしっかり温存しており、社内に本当の能力と競争を重視した組織にしなくては、世界を相手に韓国、中国企業に淘汰される日もそう遠くはあるまいというより、もう抜かれている」 2社の社員に共通するのは、すでに韓国、そして中国のメーカーにも大きく水をあけられているという認識だ。東芝の研究開発部門に勤める20代後半の男性社員は、ライバルを「サムスン」としながらも「典型的な日本企業でどこまで対抗できるかは疑問」と不安を隠せない。 「相手は発想が米国企業化してきており極めて合理的。(略)規模が小さい分、いかに無駄を無くして対抗していくかというところだが、日本企業特有の人事制度により人件費に関してはそれも厳しい状況。相手は40前後で部長になれなかった場合は退職らしい」 サムスン「本社は凄まじいが、日本法人は並み」 日立の社員は、自分の会社について「本当の能力と競争を重視した組織」に変える必要性を訴えている。一方、ライバルの韓国企業はどうなっているのか。サムスンの日本法人に注目してみた。日本サムスンに勤める社員は次のように話している。 「基本的に年功序列の出世制度です。一定の年数が過ぎると半自動的に階級が上がります。理不尽な点もありますが自動的に昇進できる安心感もあります」(カウンターセールスで働く20代後半の男性) 意外にも年功序列の文化が残っており、激しい社内競争がある様子はうかがえない。ただし、これは「日本法人であるが故の生ぬるさ」という可能性もある。法人営業を担当する20代後半の男性社員の見立ては冷ややかだ。 「『サムスンの評価=自分の評価』ではないし、『サムスン電子=日本サムスン』ではないにも拘わらず、自己評価を誤っている人間が多い。韓国本社の社員の能力は凄まじいが、日本サムスンの社員の能力は並だと思う」 やはり同じサムスンであっても「日本の会社」は大きな差をつけられているようだ。キャリコネの口コミに寄せられている若手、中堅社員の一人ひとりの危機感はおおむね高いが、なぜ経営陣がそれくみ取り、会社の経営に反映しないのか。やはり「日本型経営」はいよいよ限界を迎えたとしか思えない。 *「キャリコネ」は、社員が投稿した企業に関する口コミ、年収情報、面接体験などを共有するサイトです。2012年2月末現在、45万社、16万6000件の口コミが登録されています。
韓国企業にボロ負けしても、変化を起こせない―ソニー、日立、東芝
トムソン・ロイターの分析によると、ソニー、パナソニックなど日本の電機メーカー5社は、2000年以降の急激な業績悪化で企業価値の3分の2を失ったという。ある大手メーカー元幹部は英エコノミストの取材に、こう答えている。
「変わらなければならないことは誰もが分かっているのに、誰もその変化を起こせない」
日本の電機メーカー9社の営業利益は、すべてを足しても韓国サムスン電子にようやく肩を並べる程度だとか。サムスンも最近は液晶パネル部門で赤字を出したとはいえ、日本メーカーに勝機が見えたというわけでは決してない。
2012年のソニー、パナソニック、富士通、NEC、シャープの株式時価総額の合計は、2000年の3分の1にまで縮小すると予想されている(英エコノミストより)
ソニー社員「うちには強みはもうありません」
2012年3月期の決算で、2200億円もの赤字になる見通しのソニー。経営企画部門に所属する40代後半の男性社員は、会社の状況について極めて厳しい見方をしている。
「この業界は韓国メーカーの追い上げ、というより世界に目を向ければ完全に追い越されている状態です。それでも、日立、東芝という総合家電メーカーはそれぞれの強みを持っており、個々の分野では優位な状況にあると思います。残念ながら、ソニーにはもうありません」
それでも、この社員は、2010年度で1100万円の年収があった。これだけの厚遇を受けていれば、「現状を大きく変えてやろう」というハングリーな気持ちも起こらないのではないか、と余計な心配もしたくなる。
ソニーの社員に「優位な状況が残っている」と言われた日立製作所だが、財務部門に勤める男性社員(30代後半)の認識は、かなり悲観的だ。
「日立の伝統を背負った年功の現在経営陣では、ドラスチックな改革は無理。グローバルと言いながら、終身雇用、年功序列の基本はしっかり温存しており、社内に本当の能力と競争を重視した組織にしなくては、世界を相手に韓国、中国企業に淘汰される日もそう遠くはあるまいというより、もう抜かれている」
2社の社員に共通するのは、すでに韓国、そして中国のメーカーにも大きく水をあけられているという認識だ。東芝の研究開発部門に勤める20代後半の男性社員は、ライバルを「サムスン」としながらも「典型的な日本企業でどこまで対抗できるかは疑問」と不安を隠せない。
「相手は発想が米国企業化してきており極めて合理的。(略)規模が小さい分、いかに無駄を無くして対抗していくかというところだが、日本企業特有の人事制度により人件費に関してはそれも厳しい状況。相手は40前後で部長になれなかった場合は退職らしい」
サムスン「本社は凄まじいが、日本法人は並み」
日立の社員は、自分の会社について「本当の能力と競争を重視した組織」に変える必要性を訴えている。一方、ライバルの韓国企業はどうなっているのか。サムスンの日本法人に注目してみた。日本サムスンに勤める社員は次のように話している。
「基本的に年功序列の出世制度です。一定の年数が過ぎると半自動的に階級が上がります。理不尽な点もありますが自動的に昇進できる安心感もあります」(カウンターセールスで働く20代後半の男性)
意外にも年功序列の文化が残っており、激しい社内競争がある様子はうかがえない。ただし、これは「日本法人であるが故の生ぬるさ」という可能性もある。法人営業を担当する20代後半の男性社員の見立ては冷ややかだ。
「『サムスンの評価=自分の評価』ではないし、『サムスン電子=日本サムスン』ではないにも拘わらず、自己評価を誤っている人間が多い。韓国本社の社員の能力は凄まじいが、日本サムスンの社員の能力は並だと思う」
やはり同じサムスンであっても「日本の会社」は大きな差をつけられているようだ。キャリコネの口コミに寄せられている若手、中堅社員の一人ひとりの危機感はおおむね高いが、なぜ経営陣がそれくみ取り、会社の経営に反映しないのか。やはり「日本型経営」はいよいよ限界を迎えたとしか思えない。
*「キャリコネ」は、社員が投稿した企業に関する口コミ、年収情報、面接体験などを共有するサイトです。2012年2月末現在、45万社、16万6000件の口コミが登録されています。