「なれあい」の電力ファミリー 日立、東芝、三菱重 原発事故で迫られる戦略の見直し 2012年3月7日 企業徹底研究 ツイート 福島第1原子力発電所の事故で、無責任な経営体質が明らかになった東京電力。その東電を含めた電力10社の原子炉をはじめとする設備投資額は2010年度で2兆1000億円という巨大な額にのぼる。 この設備投資の大半を独占するのが、「電力ファミリー」と呼ばれる、日立製作所、東芝、三菱重工業の大手重電企業だ。そして、3社は、この巨大な市場を公平な競争を繰り広げるのではなく、「なれあい」で分け合っている。これこそが、日本の産業界の構造的な問題だと指摘できる。 電力会社の無責任経営に依存し、発電という重要な社会インフラを任されている3社はどんな体質なのか。また担当する事業部の雰囲気はどうなっているのか。キャリコネの口コミから探ってみよう。 日立 グローバルを掲げるも旧態依然とした組織 最初は日立製作所を見てゆく。20代後半の男性社員は、自社の社風について 「会社組織が旧態依然としている。『若いうちの苦労は買ってでもしろ』という風潮が強い」 と述べている。その苦労が自分や会社のためになるのなら良いが、実際は、「管理職が何も考えずに課長・主任層に押しつけている印象もある。そのうち破たんすると思う」とも話しており、危機感を訴えている。 日立では今後、インフラ事業に重点を置く考えだ。こうした体質は国内市場では良いかも知れない。しかし、海外市場に目を向けた場合、スピード感のある経営を行う韓国企業などとの競争に打ち勝つことができるのだろうか。 30代後半の男性社員はこうした会社に対し、「日立に今必要なのは経営陣の外部からの招聘だ」と大胆に言い放っている。この男性は、その理由について 「過去の成功を忘れ、先見性をもちスピード感を持った経営トップが必要だが、現実は、正反対で、日立の伝統を背負った現経営陣では、ドラスチックな改革は無理。グローバルといいながら、終身雇用、年功序列の基本はしっかり温存している」 と、話している。さらに、次のように断言している。 「今の日本政府と同じで、盲腸的な改善をしても、体質を変える大胆な改革は起きないだろう。つまり、将来性はあまりない」 東芝 原子力に注力するも原発事故で「将来の業績が非常に心配」 次は東芝だ。40代前半の男性社員は電力ビジネスを担当する重電部門について次のように述べている。 「全体的に雰囲気が暗く官僚的。仕事の裁量自由度が非常に低い。また、外的要因として役人からの口出し、呼びつけが多く、面倒なことが多い」 官庁や東電のような大組織を顧客とするビジネスは、安定した事業である一方、デメリットとして、顧客の言いなりにならざるを得ないのだろう。 東芝では成長事業として原子力ビジネスに力を入れている。しかし、東電の福島第1原発の事故の影響で、その戦略も見直しを迫られている。40代後半の男性社員は原子力関連事業の将来について不安を隠さない。 「大震災により今後、事業をどうしていくかが最大の問題点。クリーンエネルギー開発も検討していく必要があるが、急なシフトは難しい。将来の業績が非常に心配であり、長期的な計画の見直し必要」 三菱重工 「なれあい」崩壊で市場の行方を不安視 最後に三菱重工業を見てみよう。30代前半の男性社員は、福島第1原発の事故を契機に、これまで3社が独占し、「なれあい」でやってきた国内電力ビジネス市場に変化が訪れると予測している。 「東芝と日立も含め、三つどもえ状態にあるが、昨今の原子力プラント事故の影響により、各社、それぞれ事業のウエイトを徐々に変化させている感がある。このため、数年後にはどの会社がライバル企業になっているかは分からない」 国の手厚い保護のなかで受注を競ってきた重電3社だが、福島第1原発の事故で状況は一変。海外でも計画中の原発の稼働時期が遅れる見通しだ。事業環境が激変する中、各社はこれまでの経営体質の転換と戦略の見直しが迫られている。 *「キャリコネ」は、社員が投稿した企業に関する口コミ、年収情報、面接体験などを共有するサイトです。2012年2月末現在、45万社、16万6000件の口コミが登録されています。
「なれあい」の電力ファミリー 日立、東芝、三菱重 原発事故で迫られる戦略の見直し
福島第1原子力発電所の事故で、無責任な経営体質が明らかになった東京電力。その東電を含めた電力10社の原子炉をはじめとする設備投資額は2010年度で2兆1000億円という巨大な額にのぼる。
この設備投資の大半を独占するのが、「電力ファミリー」と呼ばれる、日立製作所、東芝、三菱重工業の大手重電企業だ。そして、3社は、この巨大な市場を公平な競争を繰り広げるのではなく、「なれあい」で分け合っている。これこそが、日本の産業界の構造的な問題だと指摘できる。
電力会社の無責任経営に依存し、発電という重要な社会インフラを任されている3社はどんな体質なのか。また担当する事業部の雰囲気はどうなっているのか。キャリコネの口コミから探ってみよう。
日立 グローバルを掲げるも旧態依然とした組織
最初は日立製作所を見てゆく。20代後半の男性社員は、自社の社風について
「会社組織が旧態依然としている。『若いうちの苦労は買ってでもしろ』という風潮が強い」
と述べている。その苦労が自分や会社のためになるのなら良いが、実際は、「管理職が何も考えずに課長・主任層に押しつけている印象もある。そのうち破たんすると思う」とも話しており、危機感を訴えている。
日立では今後、インフラ事業に重点を置く考えだ。こうした体質は国内市場では良いかも知れない。しかし、海外市場に目を向けた場合、スピード感のある経営を行う韓国企業などとの競争に打ち勝つことができるのだろうか。
30代後半の男性社員はこうした会社に対し、「日立に今必要なのは経営陣の外部からの招聘だ」と大胆に言い放っている。この男性は、その理由について
「過去の成功を忘れ、先見性をもちスピード感を持った経営トップが必要だが、現実は、正反対で、日立の伝統を背負った現経営陣では、ドラスチックな改革は無理。グローバルといいながら、終身雇用、年功序列の基本はしっかり温存している」
と、話している。さらに、次のように断言している。
「今の日本政府と同じで、盲腸的な改善をしても、体質を変える大胆な改革は起きないだろう。つまり、将来性はあまりない」
東芝 原子力に注力するも原発事故で「将来の業績が非常に心配」
次は東芝だ。40代前半の男性社員は電力ビジネスを担当する重電部門について次のように述べている。
「全体的に雰囲気が暗く官僚的。仕事の裁量自由度が非常に低い。また、外的要因として役人からの口出し、呼びつけが多く、面倒なことが多い」
官庁や東電のような大組織を顧客とするビジネスは、安定した事業である一方、デメリットとして、顧客の言いなりにならざるを得ないのだろう。
東芝では成長事業として原子力ビジネスに力を入れている。しかし、東電の福島第1原発の事故の影響で、その戦略も見直しを迫られている。40代後半の男性社員は原子力関連事業の将来について不安を隠さない。
「大震災により今後、事業をどうしていくかが最大の問題点。クリーンエネルギー開発も検討していく必要があるが、急なシフトは難しい。将来の業績が非常に心配であり、長期的な計画の見直し必要」
三菱重工 「なれあい」崩壊で市場の行方を不安視
最後に三菱重工業を見てみよう。30代前半の男性社員は、福島第1原発の事故を契機に、これまで3社が独占し、「なれあい」でやってきた国内電力ビジネス市場に変化が訪れると予測している。
「東芝と日立も含め、三つどもえ状態にあるが、昨今の原子力プラント事故の影響により、各社、それぞれ事業のウエイトを徐々に変化させている感がある。このため、数年後にはどの会社がライバル企業になっているかは分からない」
国の手厚い保護のなかで受注を競ってきた重電3社だが、福島第1原発の事故で状況は一変。海外でも計画中の原発の稼働時期が遅れる見通しだ。事業環境が激変する中、各社はこれまでの経営体質の転換と戦略の見直しが迫られている。
*「キャリコネ」は、社員が投稿した企業に関する口コミ、年収情報、面接体験などを共有するサイトです。2012年2月末現在、45万社、16万6000件の口コミが登録されています。