フィットネスクラブ 「国民的な健康づくり施設」で働く人たちの現実とは? 2012年7月5日 企業徹底研究 ツイート 7月27日からロンドンオリンピックが始まる。フィットネスクラブ各社のホームページでは日本代表に選ばれた選手を「健闘を祈る!」と応援している。 その中には、子どもの頃からプールやジムでトレーニングしていた元スクール会員もいて、スポーツ界の才能の発掘と育成にフィットネスクラブがけっこう貢献していることがわかる。 フィットネスクラブには、未来のオリンピック選手をはじめ、エアロビクスで体型を維持したい若い女性、メタボリック症候群の健診で「運動するように」と言われた中高年男性、介護予防プログラムの高齢者といった様々な人たちがやって来る。 今や「国民的な健康づくり施設」のようになっているフィットネスクラブ。活況で、さぞ成長しているかと思いきや、売上高、会員数は最近では横ばい状態。2006年のように2ケタ成長した年もあったが、すでに市場は成熟化している。 では、フィットネスクラブとはどんな業界なのだろうか。キャリコネに寄せられた主要サービス会社の社員の口コミとともに、その体質を探ってみよう。 ◇ 成熟市場で頭打ちだがイメージだけは非常に良い業界 業界大手7社の売上高順位は、関西が基盤のオージースポーツが震災の影響をあまり受けずに5位に浮上した以外、最近ではほとんど変動がない。 上位7社で市場の8割以上を占め、寡占化が進んでいるのも市場が成熟した証拠である。 1位はコナミ、4位はサントリーホールディングス、5位は大阪ガス、6位の東急スポーツオアシスは東急不動産の関連会社だ。また、2、3、6位のメガロスは上場企業だ。 かつては流通、商社、不動産などの大手が競ってフィットネスクラブを設立した時代もあったが、90年代頃から合併、買収など業界再編が進んだ。 業績はおしなべて不振。コナミスポーツ&ライフがダントツの首位でありながら2010年度まで3期連続営業赤字を記録した事実が、業界の現状を物語っている。 だが、成長が頭打ちで業績が悪くても、「スポーツ」「健康」「若さ」などイメージだけは非常に良いのが、この業界である。 ◇ ビジネスだから「人集め」「カネ集め」が優先 フィットネスクラブは、イメージの良さも手伝って、インストラクターで体育の知識を生かせる体育系大学の学生、競技経験を生かせる大学スポーツ選手だけでなく、スポーツ好きの一般学生にも人気の就職先になっている。 総合職の新卒者は各店舗に配属されてインストラクターや運営スタッフとして経験を積み、いずれは店長や、企画部門など本社スタッフになるのが一般的なキャリアプランだ。 だが、会社の“顔”の役目も果たす「カリスマインストラクター」になれるのは、ほんのひと握り。それ以外に栄養士や理学療法士などの専門職採用も行われている。 総合職は、アルバイトなどの管理をしながら新規会員の獲得や売り上げの伸びにどれだけ貢献したかが昇級・昇格の査定で問われる。これは他の業界と変わりがない。 現場となる店舗では、まず会員を集め、企画したさまざまなプログラムに参加してもらい、運動に必要なウェアも購入してもらうなどカネを使ってもらわなければならない。 だから、「スポーツの楽しさを伝える」のは、それから先の話になる。ビジネスだから当たり前だが、そんな「人集め」や「カネ集め」はけっこうなプレッシャーになるようだ。例えば、コナミスポーツ&ライフの20代後半の男性は、次のように述べている。 「『すべてはお客様のために』といっているが、裏では過酷なノルマがあり」 メガロスの30代前半の男性社員もこう言う。 「店舗の業績が個人の業績に連動するため、やや妥当性にかける場合がある」 管理職になると結果の数字に対する要求はより厳しくなる。新任の店長が業績不振の責任をとらされ、たった2カ月で平社員に降格させられたという口コミもあった。 ◇ インストラクターは「体力」もつかうし「気」もつかう フィットネスクラブのインストラクターは身体を張ってやる仕事。文字通り身体が資本だ。会社によって正社員、契約社員、派遣社員、アルバイト、フリーランスなどさまざまな雇用形態がある。体力に自信があっても、実際はかなり厳しい職種のようだ。 「毎日のようにレッスンを行います。かぜや多少の怪我でも、休めません。身体を張っている割には報酬が低いと思います。もちろん現場なのでゴールデンウィークなどの連休も関係なしです」(コナミスポーツ&ライフの20代後半の男性正社員) 「体が資本なので、いつまで続けられるのか、とくに女性の場合は心配になってくると思います。時間も不規則ですし、結婚、出産をこの会社で乗り切る自信は自分にはありませんでした」(セントラルスポーツの20代後半の女性契約社員) さらに、店舗では、機械の故障、会員間のトラブルなど、いろいろなことが起きる。ルネサンスの20代前半の女性社員は、こうした点について、次のように話している。 「トレーニングマシンやシャワー、サウナのトラブルが多く、ジムの営業終了後に保守点検などを行うため残業が多い。マナーを守らないお客様がいると、お客様同士でのトラブルがあったり、レッスンが円滑に進まずストレスを感じます」 口コミを見ると、女性インストラクターからは会員からきついクレームだけでなく、セクハラまで受けているという嘆きも聞かれた。 フィットネスクラブは、若い社員が多く男女平等に夜遅くまで残業しているためか、社内恋愛はけっこう盛んだ。それは会社も認めている。しかし、会員との間の恋愛沙汰は禁止という社内ルールを設けている会社もある。 ◇ 業界不振の影響で疲弊していく社員たち 一方、最近の業界全体の不振は、仕事や給料にはね返っている。コナミスポーツ&ライフの20代後半の男性契約社員はこう嘆いている。 「今はスポーツクラブ業界全体が低迷しているのか、この会社も経営状況が悪いと思います。その影響で、コスト削減ばかりを求められてネガティブな仕事が多いです」 メガロスの30代前半の男性社員は、危機感を抱いていると言う。 「現実問題として、明確な商品・サービスの差別化が難しい業界ですので、今後なんらかのキラーコンテンツを作り出さなければ、更なる成長ができなくなります」 また、セントラルスポーツの20代後半の女性社員は任される業務の多さに辟易(へきえき)している。 「正社員で働くには本当に厳しい環境だと思います。休日出勤するのが当たり前、残業も当たり前だが残業手当をもらっているという話は聞いたことがありません。従業員のうちのほとんどがアルバイトと外部委託のインストラクターなため、少ない正社員には業務の負荷と責任が大きく、みんなやせ細って行くような印象」 元気で華やかなイメージの裏では、こうした現実に直面し、文字通り燃え尽きてこの世界を去っていく人も跡を絶たないという。 ◇ 男女平等で好きなことを仕事にできる喜びがやりがい フィットネスクラブの社風は、「先輩が言うことに絶対服従」「返事が悪いと殴られる」など、いわゆる「体育会系」。体育会出身学生が大勢入社してくるから当然あると心得なければならないようだ。コナミスポーツ&ライフの30代前半の男性社員が指摘する。 「体育会系の職場なので、スポーツ経験がなく入社したひとは初め少し苦労していた」 それでも、明るさやチームワークの強さは体育会系独特の良さだろう。 「現場には若いスタッフが多く、支部にもよるがかなり飲み会好きという感じ。体育会系独特の異様な盛り上がりがあり、酒豪も多い印象」(セントラルスポーツの20代前半の女性契約社員) 現場では実力があれば男女全く平等というのも、良い点といえる。 「男女は全くの差異なく昇進を目指せる。実際に女性マネージャー・女性支店長の人を何人も知っている。ただし逆に言えば男女関係なく扱われ深夜・休日の労働も当たり前にあるので、女性に対する優しさみたいなものはないかもしれない」(コナミスポーツ&ライフの20代前半の男性契約社員) そして何よりも、スポーツが三度のメシより好きな人、人前に出るのが苦にならない人には、天国のような所なのだろう。 「体を動かすのが好きな私にとっては、もちろん仕事で運動するので、単純なデスクワークを行う仕事より、自分に合っていたと思います」 と、セントラルスポーツの20代後半の女性契約社員は話している。 ◇ 会社のイメージを守るため社員が犠牲になる可能性も フィットネスクラブはもはや新しいビジネスではなくなった。オリンピックでの日本選手の活躍でスクール会員が増えたのも今は昔の話だ。 また、イメージの良さと若い女性の集客力への期待でファッションビルからテナント入居を歓迎されているが、周辺にライバル店がなく高収益が望める立地は地方都市にもほとんど残っていない。 さらに、「介護予防」「メタボ健診」など新制度ができるたびに「市場拡大の起爆剤になるか?」と話題になるが、中高年や高齢者は市場規模こそ大きいものの、会員は思うように増えていないのが現状だ。 「業界は再び成長できる」と主張する人は「総人口に占める会員参加率がアメリカは15%なのに日本は3%しかない」というデータを根拠にあげる。 それを言うなら、人口が多いシルバー層をもっと掘り起こせば会員増には効果的なはずだ。しかし、業界各社は高年齢層の取り込みにそれほど積極的ではなく、大部分の店舗は従来型の企画と運営を続けている。高齢者が突然倒れたり骨折するようなリスクを考えてのことなのかもしれない。 そして、大手の中には「イメージ」を守るために、あえて全く逆の路線をとる会社まである。表向きは年齢制限がなくても、ある年齢以上は事実上、入会が困難になっているのだ。代わりに少子化で市場が縮小する一方のジュニア会員の獲得に力を入れている。 その背景には、若い女性が「ジジ、ババばっかり来るあそこはヤダぁ~」と言い出すようなイメージダウンを恐れていることがある。市場性の観点で言えば不思議な経営戦略だが、それほどまでにイメージは貴重な財産なのだろう。 つまり、「イメージを守るために、あえて有望市場の取り込みを図らず、やせ我慢してリストラする」ということもありうるのが、フィットネスクラブ業界なのだ。イメージにひかれて入社した社員が、イメージと引き換えに犠牲になる。なんとも皮肉な話である。 *「キャリコネ」は、社員が投稿した企業に関する口コミ、年収情報、面接体験などを共有するサイトです。2012年6月末現在、45万社、18万件の口コミが登録されています。
フィットネスクラブ 「国民的な健康づくり施設」で働く人たちの現実とは?
7月27日からロンドンオリンピックが始まる。フィットネスクラブ各社のホームページでは日本代表に選ばれた選手を「健闘を祈る!」と応援している。
その中には、子どもの頃からプールやジムでトレーニングしていた元スクール会員もいて、スポーツ界の才能の発掘と育成にフィットネスクラブがけっこう貢献していることがわかる。
フィットネスクラブには、未来のオリンピック選手をはじめ、エアロビクスで体型を維持したい若い女性、メタボリック症候群の健診で「運動するように」と言われた中高年男性、介護予防プログラムの高齢者といった様々な人たちがやって来る。
今や「国民的な健康づくり施設」のようになっているフィットネスクラブ。活況で、さぞ成長しているかと思いきや、売上高、会員数は最近では横ばい状態。2006年のように2ケタ成長した年もあったが、すでに市場は成熟化している。
では、フィットネスクラブとはどんな業界なのだろうか。キャリコネに寄せられた主要サービス会社の社員の口コミとともに、その体質を探ってみよう。
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成熟市場で頭打ちだがイメージだけは非常に良い業界
業界大手7社の売上高順位は、関西が基盤のオージースポーツが震災の影響をあまり受けずに5位に浮上した以外、最近ではほとんど変動がない。
上位7社で市場の8割以上を占め、寡占化が進んでいるのも市場が成熟した証拠である。
1位はコナミ、4位はサントリーホールディングス、5位は大阪ガス、6位の東急スポーツオアシスは東急不動産の関連会社だ。また、2、3、6位のメガロスは上場企業だ。
かつては流通、商社、不動産などの大手が競ってフィットネスクラブを設立した時代もあったが、90年代頃から合併、買収など業界再編が進んだ。
業績はおしなべて不振。コナミスポーツ&ライフがダントツの首位でありながら2010年度まで3期連続営業赤字を記録した事実が、業界の現状を物語っている。
だが、成長が頭打ちで業績が悪くても、「スポーツ」「健康」「若さ」などイメージだけは非常に良いのが、この業界である。
◇
ビジネスだから「人集め」「カネ集め」が優先
フィットネスクラブは、イメージの良さも手伝って、インストラクターで体育の知識を生かせる体育系大学の学生、競技経験を生かせる大学スポーツ選手だけでなく、スポーツ好きの一般学生にも人気の就職先になっている。
総合職の新卒者は各店舗に配属されてインストラクターや運営スタッフとして経験を積み、いずれは店長や、企画部門など本社スタッフになるのが一般的なキャリアプランだ。
だが、会社の“顔”の役目も果たす「カリスマインストラクター」になれるのは、ほんのひと握り。それ以外に栄養士や理学療法士などの専門職採用も行われている。
総合職は、アルバイトなどの管理をしながら新規会員の獲得や売り上げの伸びにどれだけ貢献したかが昇級・昇格の査定で問われる。これは他の業界と変わりがない。
現場となる店舗では、まず会員を集め、企画したさまざまなプログラムに参加してもらい、運動に必要なウェアも購入してもらうなどカネを使ってもらわなければならない。
だから、「スポーツの楽しさを伝える」のは、それから先の話になる。ビジネスだから当たり前だが、そんな「人集め」や「カネ集め」はけっこうなプレッシャーになるようだ。例えば、コナミスポーツ&ライフの20代後半の男性は、次のように述べている。
「『すべてはお客様のために』といっているが、裏では過酷なノルマがあり」
メガロスの30代前半の男性社員もこう言う。
「店舗の業績が個人の業績に連動するため、やや妥当性にかける場合がある」
管理職になると結果の数字に対する要求はより厳しくなる。新任の店長が業績不振の責任をとらされ、たった2カ月で平社員に降格させられたという口コミもあった。
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インストラクターは「体力」もつかうし「気」もつかう
フィットネスクラブのインストラクターは身体を張ってやる仕事。文字通り身体が資本だ。会社によって正社員、契約社員、派遣社員、アルバイト、フリーランスなどさまざまな雇用形態がある。体力に自信があっても、実際はかなり厳しい職種のようだ。
「毎日のようにレッスンを行います。かぜや多少の怪我でも、休めません。身体を張っている割には報酬が低いと思います。もちろん現場なのでゴールデンウィークなどの連休も関係なしです」(コナミスポーツ&ライフの20代後半の男性正社員)
「体が資本なので、いつまで続けられるのか、とくに女性の場合は心配になってくると思います。時間も不規則ですし、結婚、出産をこの会社で乗り切る自信は自分にはありませんでした」(セントラルスポーツの20代後半の女性契約社員)
さらに、店舗では、機械の故障、会員間のトラブルなど、いろいろなことが起きる。ルネサンスの20代前半の女性社員は、こうした点について、次のように話している。
「トレーニングマシンやシャワー、サウナのトラブルが多く、ジムの営業終了後に保守点検などを行うため残業が多い。マナーを守らないお客様がいると、お客様同士でのトラブルがあったり、レッスンが円滑に進まずストレスを感じます」
口コミを見ると、女性インストラクターからは会員からきついクレームだけでなく、セクハラまで受けているという嘆きも聞かれた。
フィットネスクラブは、若い社員が多く男女平等に夜遅くまで残業しているためか、社内恋愛はけっこう盛んだ。それは会社も認めている。しかし、会員との間の恋愛沙汰は禁止という社内ルールを設けている会社もある。
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業界不振の影響で疲弊していく社員たち
一方、最近の業界全体の不振は、仕事や給料にはね返っている。コナミスポーツ&ライフの20代後半の男性契約社員はこう嘆いている。
「今はスポーツクラブ業界全体が低迷しているのか、この会社も経営状況が悪いと思います。その影響で、コスト削減ばかりを求められてネガティブな仕事が多いです」
メガロスの30代前半の男性社員は、危機感を抱いていると言う。
「現実問題として、明確な商品・サービスの差別化が難しい業界ですので、今後なんらかのキラーコンテンツを作り出さなければ、更なる成長ができなくなります」
また、セントラルスポーツの20代後半の女性社員は任される業務の多さに辟易(へきえき)している。
「正社員で働くには本当に厳しい環境だと思います。休日出勤するのが当たり前、残業も当たり前だが残業手当をもらっているという話は聞いたことがありません。従業員のうちのほとんどがアルバイトと外部委託のインストラクターなため、少ない正社員には業務の負荷と責任が大きく、みんなやせ細って行くような印象」
元気で華やかなイメージの裏では、こうした現実に直面し、文字通り燃え尽きてこの世界を去っていく人も跡を絶たないという。
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男女平等で好きなことを仕事にできる喜びがやりがい
フィットネスクラブの社風は、「先輩が言うことに絶対服従」「返事が悪いと殴られる」など、いわゆる「体育会系」。体育会出身学生が大勢入社してくるから当然あると心得なければならないようだ。コナミスポーツ&ライフの30代前半の男性社員が指摘する。
「体育会系の職場なので、スポーツ経験がなく入社したひとは初め少し苦労していた」
それでも、明るさやチームワークの強さは体育会系独特の良さだろう。
「現場には若いスタッフが多く、支部にもよるがかなり飲み会好きという感じ。体育会系独特の異様な盛り上がりがあり、酒豪も多い印象」(セントラルスポーツの20代前半の女性契約社員)
現場では実力があれば男女全く平等というのも、良い点といえる。
「男女は全くの差異なく昇進を目指せる。実際に女性マネージャー・女性支店長の人を何人も知っている。ただし逆に言えば男女関係なく扱われ深夜・休日の労働も当たり前にあるので、女性に対する優しさみたいなものはないかもしれない」(コナミスポーツ&ライフの20代前半の男性契約社員)
そして何よりも、スポーツが三度のメシより好きな人、人前に出るのが苦にならない人には、天国のような所なのだろう。
「体を動かすのが好きな私にとっては、もちろん仕事で運動するので、単純なデスクワークを行う仕事より、自分に合っていたと思います」
と、セントラルスポーツの20代後半の女性契約社員は話している。
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会社のイメージを守るため社員が犠牲になる可能性も
フィットネスクラブはもはや新しいビジネスではなくなった。オリンピックでの日本選手の活躍でスクール会員が増えたのも今は昔の話だ。
また、イメージの良さと若い女性の集客力への期待でファッションビルからテナント入居を歓迎されているが、周辺にライバル店がなく高収益が望める立地は地方都市にもほとんど残っていない。
さらに、「介護予防」「メタボ健診」など新制度ができるたびに「市場拡大の起爆剤になるか?」と話題になるが、中高年や高齢者は市場規模こそ大きいものの、会員は思うように増えていないのが現状だ。
「業界は再び成長できる」と主張する人は「総人口に占める会員参加率がアメリカは15%なのに日本は3%しかない」というデータを根拠にあげる。
それを言うなら、人口が多いシルバー層をもっと掘り起こせば会員増には効果的なはずだ。しかし、業界各社は高年齢層の取り込みにそれほど積極的ではなく、大部分の店舗は従来型の企画と運営を続けている。高齢者が突然倒れたり骨折するようなリスクを考えてのことなのかもしれない。
そして、大手の中には「イメージ」を守るために、あえて全く逆の路線をとる会社まである。表向きは年齢制限がなくても、ある年齢以上は事実上、入会が困難になっているのだ。代わりに少子化で市場が縮小する一方のジュニア会員の獲得に力を入れている。
その背景には、若い女性が「ジジ、ババばっかり来るあそこはヤダぁ~」と言い出すようなイメージダウンを恐れていることがある。市場性の観点で言えば不思議な経営戦略だが、それほどまでにイメージは貴重な財産なのだろう。
つまり、「イメージを守るために、あえて有望市場の取り込みを図らず、やせ我慢してリストラする」ということもありうるのが、フィットネスクラブ業界なのだ。イメージにひかれて入社した社員が、イメージと引き換えに犠牲になる。なんとも皮肉な話である。
*「キャリコネ」は、社員が投稿した企業に関する口コミ、年収情報、面接体験などを共有するサイトです。2012年6月末現在、45万社、18万件の口コミが登録されています。