紳士服チェーンはブラック業界か? コナカ、AOKI、青山、はるやま 2012年10月15日 企業徹底研究 ツイート 労働社会学を専門とする昭和女子大の木下武男教授が、著書「若者の逆襲」で、残業代を支払わない「名ばかり管理職」を横行させている悪質な企業の典型例にあげているのが紳士服チェーンのコナカだ。 コナカでは2007年2月、東京都東部労組コナカ支部が結成され、過労死寸前のような社員の実情が明らかにされてきた。同書によれば、店長には残業代が支給されておらず、 「朝8時に出勤して、最低でも13時間は拘束される」 「目標額に達していなければ、シャッターを閉めてもレジを締めることが許されない。誰かが自腹でスーツを購入するなどして、数字を整える必要がある」 と、デタラメな労働環境が告発されている。事実であるなら、立派なブラック企業といっていい。 コナカは労働組合と団体交渉に入り、「一般社員720人に対して未払い残業代9億円を支払う」などと回答したという。 これは、この会社の労働搾取が、いかにすさまじかったかが判然とする数字だろう。店長などの「管理職」400人に対しても、特別賞与として4億7000千万円を支払うとした。 ただし、これは未払いの残業代ではない。つまり店長を「名ばかり管理職」として留め置くことには、変わらないわけだ。 コナカをはじめ、こうした紳士服チェーン業界の現状はどうなっているのだろうか。キャリコネに寄せられた各社の社員の口コミから探ってみよう。 ◇ 取れない有給休暇、厳しいノルマ、サービス残業を社員は嘆く 20代前半で、もう店長をさせられているコナカの男性社員は、次のように述べている。 「有給休暇がとれない。有給は社員の権利にもかわらず、『理由を書け』だとか『店の人が足りないのに何も思わないのか』とか、最悪なのはダメって言われてる同期がいました。表向きと全然違うのがこの会社。社員を大事にしている企業とうたっているが、人事部が新卒対象者に対して優しいだけ。全くもって論外」 やはり、という内容だ。ノルマに関しても、販促担当の女性(50)がこう証言している。 「ノルマがやはり厳しい。やりがいにもつながるが、結構厳しいので、達成するのが非常につらい。ちょっと売る勢いがないと、マネージャーなどに指導されたり、叱られたりする。みんなが業績をあげるために必死で、みんながライバルで辛い」 勤務時間については、スタッフの男性(25)は、こう言う。 「店舗によって大きく差が出る部分として、一日の退社時間があげられる。明らかに人員が不足している店舗もあるが、人件費圧迫を恐れて、実際の退社時間が22時にもかかわらず、20時退社でタイムカードを書く店舗や、きちんと22時で書いたとしてもコンピューター入力時に20時にされる場合もあります」 こうした状況がコナカにおける莫大な残業代の不払いとなっているわけだ。 ◇ 数字と低い年収に苦しめられる ライバル企業はどうだろうか。こちらも似たり寄ったりのようだ。AOKIで店長として働く30代前半の男性社員が指摘する。 「優秀な人材を失い過ぎ。パワハラ体質が昔からあり、数字を出さない人間は脅迫まがいなことを受ける。そして消えてゆく」 20代後半の男性店長は商品について、こう暴露している。 「働き始めて3年以上経つが、年々商品の品質が悪くなっている。昔は商品にもお金を掛けていたらしいが、今は薄利多売にモノを言わせる形にシフトしているので、不良品の数が半端ではない」 この店長によると、実際、客からの商品クレームが非常に多くあり、商品が入荷したとたんに本社からメーカーに返品指示が出ることもよくあるという。 青山商事では、とても笑い話では済まないノルマがあるらしい。20代後半の男性スタッフが証言する。 「問題点は9で終われないということ。たとえば、売り上げ99万円とか、あるいは売り上げ達成率99パーセントとか…」 そして、不幸にもこうした数字が出てしまった場合は、実質的に社員が購入することになってしまうと言う。 「こういうときは正直、売り上げが95万円で終わって欲しかったなと思うこともしましば」 と、溜め息を漏らしている。 はるやま商事も、社員は大変なようだ。20代後半の正社員の女性は、こう嘆いている。 「入社6年目一般職。月給約19万円(残業代込)、ボーナス15万円(年間)、年収は約240万円」 これでは、とてもやっていられないだろう。 *「キャリコネ」は、社員が投稿した企業に関する口コミ、年収情報、面接体験などを共有するサイトです。2012年9月末現在、45万社、20万件の口コミが登録されています。
紳士服チェーンはブラック業界か? コナカ、AOKI、青山、はるやま
労働社会学を専門とする昭和女子大の木下武男教授が、著書「若者の逆襲」で、残業代を支払わない「名ばかり管理職」を横行させている悪質な企業の典型例にあげているのが紳士服チェーンのコナカだ。
コナカでは2007年2月、東京都東部労組コナカ支部が結成され、過労死寸前のような社員の実情が明らかにされてきた。同書によれば、店長には残業代が支給されておらず、
「朝8時に出勤して、最低でも13時間は拘束される」
「目標額に達していなければ、シャッターを閉めてもレジを締めることが許されない。誰かが自腹でスーツを購入するなどして、数字を整える必要がある」
と、デタラメな労働環境が告発されている。事実であるなら、立派なブラック企業といっていい。
コナカは労働組合と団体交渉に入り、「一般社員720人に対して未払い残業代9億円を支払う」などと回答したという。
これは、この会社の労働搾取が、いかにすさまじかったかが判然とする数字だろう。店長などの「管理職」400人に対しても、特別賞与として4億7000千万円を支払うとした。
ただし、これは未払いの残業代ではない。つまり店長を「名ばかり管理職」として留め置くことには、変わらないわけだ。
コナカをはじめ、こうした紳士服チェーン業界の現状はどうなっているのだろうか。キャリコネに寄せられた各社の社員の口コミから探ってみよう。
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取れない有給休暇、厳しいノルマ、サービス残業を社員は嘆く
20代前半で、もう店長をさせられているコナカの男性社員は、次のように述べている。
「有給休暇がとれない。有給は社員の権利にもかわらず、『理由を書け』だとか『店の人が足りないのに何も思わないのか』とか、最悪なのはダメって言われてる同期がいました。表向きと全然違うのがこの会社。社員を大事にしている企業とうたっているが、人事部が新卒対象者に対して優しいだけ。全くもって論外」
やはり、という内容だ。ノルマに関しても、販促担当の女性(50)がこう証言している。
「ノルマがやはり厳しい。やりがいにもつながるが、結構厳しいので、達成するのが非常につらい。ちょっと売る勢いがないと、マネージャーなどに指導されたり、叱られたりする。みんなが業績をあげるために必死で、みんながライバルで辛い」
勤務時間については、スタッフの男性(25)は、こう言う。
「店舗によって大きく差が出る部分として、一日の退社時間があげられる。明らかに人員が不足している店舗もあるが、人件費圧迫を恐れて、実際の退社時間が22時にもかかわらず、20時退社でタイムカードを書く店舗や、きちんと22時で書いたとしてもコンピューター入力時に20時にされる場合もあります」
こうした状況がコナカにおける莫大な残業代の不払いとなっているわけだ。
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数字と低い年収に苦しめられる
ライバル企業はどうだろうか。こちらも似たり寄ったりのようだ。AOKIで店長として働く30代前半の男性社員が指摘する。
「優秀な人材を失い過ぎ。パワハラ体質が昔からあり、数字を出さない人間は脅迫まがいなことを受ける。そして消えてゆく」
20代後半の男性店長は商品について、こう暴露している。
「働き始めて3年以上経つが、年々商品の品質が悪くなっている。昔は商品にもお金を掛けていたらしいが、今は薄利多売にモノを言わせる形にシフトしているので、不良品の数が半端ではない」
この店長によると、実際、客からの商品クレームが非常に多くあり、商品が入荷したとたんに本社からメーカーに返品指示が出ることもよくあるという。
青山商事では、とても笑い話では済まないノルマがあるらしい。20代後半の男性スタッフが証言する。
「問題点は9で終われないということ。たとえば、売り上げ99万円とか、あるいは売り上げ達成率99パーセントとか…」
そして、不幸にもこうした数字が出てしまった場合は、実質的に社員が購入することになってしまうと言う。
「こういうときは正直、売り上げが95万円で終わって欲しかったなと思うこともしましば」
と、溜め息を漏らしている。
はるやま商事も、社員は大変なようだ。20代後半の正社員の女性は、こう嘆いている。
「入社6年目一般職。月給約19万円(残業代込)、ボーナス15万円(年間)、年収は約240万円」
これでは、とてもやっていられないだろう。
*「キャリコネ」は、社員が投稿した企業に関する口コミ、年収情報、面接体験などを共有するサイトです。2012年9月末現在、45万社、20万件の口コミが登録されています。