コクヨ、マックス、ぺんてる、ナカバヤシ オフィスIT化とスマホ普及で逆風の文房具業界 2012年11月19日 企業徹底研究 ツイート オフィスのIT化に加え、最近のスマートフォン(スマホ)やタブレット端末の普及で、大きな打撃を受けているのが文具業界だ。 さらに、こうした新たなテクノロジーの浸透ばかりではなく、不況による経費削減の流れで、ペーパーレス化などが進み、逆境に立たされている。 これからの将来は、「紙に鉛筆」「ノートにペン」の市場の拡大には、もはや期待はできない。 そこで、文具メーカー各社は、最近のヒット商品である「消せるボールペン」に代表されるような、斬新な新製品開発で新市場に活路を見出そうとしている。また、高機能スタイラスペンのような、スマホやタブレット端末に連携する「デジタル融合分野」も重要な分野となっている。 そしてもう1つの市場が海外だ。事務用品の最大コクヨは去年10月、インドの大手文具メーカー「カムリン」を連結子会社化。内田洋行は今年6月、韓国のトップ家具メーカー「FURSYS(ファシス)」と業務提携するなど、海外展開が活発化している。 地味なイメージの文具業界で今、社員が働く環境はどうなっているのだろうか。キャリコネに寄せられた各社社員の声から、彼らの本音に耳を傾けていこう。 ◇ どの会社でも報酬への不満が多い 業界トップのコクヨは、売上高が2600億円。社員の平均年収も735万円で、おおむね500万~600万円台が一般的なこの業界から見れば、待遇は恵まれている。 「やはり、大手メーカーなので営業でもあしらわれることはなく、比較的やりがいはあると思う」 と言うのは、代理店営業を担当する男性社員(27)だ。社内の福利厚生についても、「メーカーならではの充実具合」と満足している。 しかし、業界で見れば厚遇といえる報酬も、大手製造業の水準では必ずしも高くはない。社員の不満は、いきおい報酬に集中してくる。 「社内の雰囲気や風通しは良く不満はないが、報酬に関しては満足はしていない」 と、この男性社員は述べている。経理担当の30代前半女性社員も、こう言う。 「就業時間が8時45分~17時30分で、他社よりも1時間長い。給料は低いのに長時間拘束され、何だか損した感じ。営業はサービス残業が多い」 また、この女性社員は育児休暇を取得した後、別の部署に異動させられたと言う。 「希望していた部署ではなく、左遷のような形だったので納得がいきませんでした」 と、不満をもらしている。 他社はどうだろうか。ホチキスで国内首位のマックスでも、社員の報酬に対する不満は強い。 「ボーナスは、営業利益に完全連動のため、半期で赤字だと賞与なし」 と明かすのは、法人営業を担当する20代後半の男性社員だ。ただ、本当にそうすると住宅ローンなどを払えない社員も出てくるため、リーマンショック後は夏季賞与が「なぜか、1カ月弱は出ました」と笑う。 ◇ ITの波に押されているに対応できていない会社も 画材や筆記具メーカーの老舗で知られる、ぺんてる。社内には「アイデア提案制度」があるそうだ。 「仕事は基本的に上司から与えられるが、自分なりのアイデアが採用されれば自分でも開発することが出来る」 と、同社の60代のエンジニアは言う。この制度がやりがいにつながることもあるそうだ。 一方で、こんな不満もあると言う。 「ただ、営業などの声の大きい人の意見が通りやすく、その人のキャパに入っていない提案は却下される。あとで他社から類似の製品が出て悔しく思ったことが何度かある」 アルバムや製本事業で高いシェアを獲得しているナカバヤシも、将来性に暗雲が立ちこめている。 「主力だったアルバムも、デジカメ時代のせいで、下降線をたどる一方。ヒット商品も出ず、首の皮一枚でつながっている」 と明かすのは、クリエイティブ部門の20代前半の女性社員だ。新しい事業に思いつきで次々と手を出すが、どれもパッとしてないと言う。 しかも、IT化の波にもまれているのに、肝心の「社内のIT化」は遅れているそうだ。営業職の男性社員(24)は、次のように指摘する。 「もうすこし社内にIT化が進まないと、かなり時代に取り残され、生き残っていけるか心配。理系の人も入れていかないと将来はないかも」 文具業界の先行きについては不安が根強い。市場が鈍化する中、業界全体に深刻な危機感が蔓延(まんえん)しているようだ。 *「キャリコネ」は、社員が投稿した企業に関する口コミ、年収情報、面接体験などを共有するサイトです。2012年10月末現在、37万社、20万件の口コミが登録されています。
コクヨ、マックス、ぺんてる、ナカバヤシ オフィスIT化とスマホ普及で逆風の文房具業界
オフィスのIT化に加え、最近のスマートフォン(スマホ)やタブレット端末の普及で、大きな打撃を受けているのが文具業界だ。
さらに、こうした新たなテクノロジーの浸透ばかりではなく、不況による経費削減の流れで、ペーパーレス化などが進み、逆境に立たされている。
これからの将来は、「紙に鉛筆」「ノートにペン」の市場の拡大には、もはや期待はできない。
そこで、文具メーカー各社は、最近のヒット商品である「消せるボールペン」に代表されるような、斬新な新製品開発で新市場に活路を見出そうとしている。また、高機能スタイラスペンのような、スマホやタブレット端末に連携する「デジタル融合分野」も重要な分野となっている。
そしてもう1つの市場が海外だ。事務用品の最大コクヨは去年10月、インドの大手文具メーカー「カムリン」を連結子会社化。内田洋行は今年6月、韓国のトップ家具メーカー「FURSYS(ファシス)」と業務提携するなど、海外展開が活発化している。
地味なイメージの文具業界で今、社員が働く環境はどうなっているのだろうか。キャリコネに寄せられた各社社員の声から、彼らの本音に耳を傾けていこう。
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どの会社でも報酬への不満が多い
業界トップのコクヨは、売上高が2600億円。社員の平均年収も735万円で、おおむね500万~600万円台が一般的なこの業界から見れば、待遇は恵まれている。
「やはり、大手メーカーなので営業でもあしらわれることはなく、比較的やりがいはあると思う」
と言うのは、代理店営業を担当する男性社員(27)だ。社内の福利厚生についても、「メーカーならではの充実具合」と満足している。
しかし、業界で見れば厚遇といえる報酬も、大手製造業の水準では必ずしも高くはない。社員の不満は、いきおい報酬に集中してくる。
「社内の雰囲気や風通しは良く不満はないが、報酬に関しては満足はしていない」
と、この男性社員は述べている。経理担当の30代前半女性社員も、こう言う。
「就業時間が8時45分~17時30分で、他社よりも1時間長い。給料は低いのに長時間拘束され、何だか損した感じ。営業はサービス残業が多い」
また、この女性社員は育児休暇を取得した後、別の部署に異動させられたと言う。
「希望していた部署ではなく、左遷のような形だったので納得がいきませんでした」
と、不満をもらしている。
他社はどうだろうか。ホチキスで国内首位のマックスでも、社員の報酬に対する不満は強い。
「ボーナスは、営業利益に完全連動のため、半期で赤字だと賞与なし」
と明かすのは、法人営業を担当する20代後半の男性社員だ。ただ、本当にそうすると住宅ローンなどを払えない社員も出てくるため、リーマンショック後は夏季賞与が「なぜか、1カ月弱は出ました」と笑う。
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ITの波に押されているに対応できていない会社も
画材や筆記具メーカーの老舗で知られる、ぺんてる。社内には「アイデア提案制度」があるそうだ。
「仕事は基本的に上司から与えられるが、自分なりのアイデアが採用されれば自分でも開発することが出来る」
と、同社の60代のエンジニアは言う。この制度がやりがいにつながることもあるそうだ。
一方で、こんな不満もあると言う。
「ただ、営業などの声の大きい人の意見が通りやすく、その人のキャパに入っていない提案は却下される。あとで他社から類似の製品が出て悔しく思ったことが何度かある」
アルバムや製本事業で高いシェアを獲得しているナカバヤシも、将来性に暗雲が立ちこめている。
「主力だったアルバムも、デジカメ時代のせいで、下降線をたどる一方。ヒット商品も出ず、首の皮一枚でつながっている」
と明かすのは、クリエイティブ部門の20代前半の女性社員だ。新しい事業に思いつきで次々と手を出すが、どれもパッとしてないと言う。
しかも、IT化の波にもまれているのに、肝心の「社内のIT化」は遅れているそうだ。営業職の男性社員(24)は、次のように指摘する。
「もうすこし社内にIT化が進まないと、かなり時代に取り残され、生き残っていけるか心配。理系の人も入れていかないと将来はないかも」
文具業界の先行きについては不安が根強い。市場が鈍化する中、業界全体に深刻な危機感が蔓延(まんえん)しているようだ。
*「キャリコネ」は、社員が投稿した企業に関する口コミ、年収情報、面接体験などを共有するサイトです。2012年10月末現在、37万社、20万件の口コミが登録されています。