• 労働者は「不当解雇」とどう戦えばよいのか?

    読者プレゼントの当選者の水増しが発覚した秋田書店の元社員の女性が、同社を訴えた裁判が7日、東京地裁で始まった。

    不正告発をめぐる雇用者側と労働者側の争いは後を絶たない。最近でも島根県で、内部告発をした男性と自治労共済の裁判があり、広島高裁では解雇が「正当」という判決が出たばかりだ。

    迅速に解決したいときは「労働審判」

    内部告発が理由とまではいかないまでも、納得のいかない理由で解雇された場合に、労働者はどのように戦えばいいのだろうか。キャリコネ編集部で専門家の意見を聞いてみた。 

    「社員が解雇をめぐり会社と争う場合、裁判という手段のほかに『労働審判』という制度を用いることが多いです」

    職場の法律問題に詳しい、南赤坂法律事務所の疋田陽太郎弁護士が説明する。2006年から始まった制度で、労働者側と雇用者側が話し合いで解決を図るものだ。裁判官(労働審判官)と、労働関係に関する知識経験を持つ労働審判員2人が立ち会い、労働審判委員会が開かれる。

    示談とは違うが、労働者側が迅速に解決したい意向が強く、さらに「一定の譲歩」が可能な場合に、よく用いられる手段だという。裁判に持ち込むよりも時間や費用がかからず、訴える側にとっても便利な制度だろう。

    ただ、秋田書店の場合は裁判になってしまった。

    「今回のケースでは元社員の女性と会社側の対立が決定的なため、裁判で完全決着を図ろうとしたのでは」   

    と疋田弁護士は指摘する。確かに女性は「読者プレゼントを盗んだ」という理由で解雇されたと言う。それが濡れ衣ならば、不正の件も相まって「徹底抗戦」の道を歩むのも当然かもしれない。またもう一つの理由として、世論の後押しも大きいという。

    「メディアでも取り上げられたので、世論の後押しも期待できる公開の法廷という場を選んだのかもしれない」

    巧妙な「報復」を行う会社も

    裁判で女性が求めているのは「解雇撤回」と「慰謝料」だ。この女性はたとえ撤回されたからといって、秋田書店に復職したいとは思わないかもしれない。だが、中には復職を願って裁判をする人もいるし、告発者は法律で保護されてもいる。

    「公益通報者保護法という法律で、会社の不正を通報したことを理由に、降格や減給などの不利益な扱いをしてはならないことになっています。むしろ、職場復帰した社員の扱いには会社も神経質になるでしょう」

    だが、雇用者も労働者も人間だ。復職が一筋縄ではいかない場合もある。

    「当面は元の仕事に従事させた後で配置転換を行ない、減給等をする会社もある」

    というように、告発をした社員に対して報復だと思われないような形で、不利益なことをしてくる場合もあるというのだ。

    さらに公務員に限るが、国の機密を漏らした公務員を処罰する「特定秘密保護法案」の審議も進んでいる。この法律によって「省庁などの不正を内部から明らかにしようという公務員は出てこなくなる」といぶかる声もある。

    個人の不利益や負担があまりにも重すぎる場合は、不正を「見て見ぬふり」してしまう気持ちもわかる。その結果、不正が露見して大きな問題に発展し、ひいては企業が損失をこうむることもあるだろう。

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