AKB大島優子の「卒業」を見習え 後進の芽を「潰す」職場もある―社内失業に堕ちた社員たち(2) 2014年1月17日 仕事のエコノミクス ツイート みなさんこんにちは。サラリーマン研究家の増田不三雄です。 あっという間にお正月休みが終わってしまいましたね……。お正月といえば大晦日。大晦日といえば毎年恒例、「NHK紅白歌合戦」。見ました? 2013年の紅白は、アイドルグループAKB48メンバー大島優子さんの卒業、ダンスグループEXILEのリーダーHIROさんの勇退と、2つの「卒業」が話題となりました。 両名とも人気がありすぎるあまり「後進の芽を潰さない」ための卒業とも言われています。が、当然のことながらほとんどのサラリーマンは、定年までの40年近く、勇退や卒業なんてことはしません。 ベテラン「お局様」から仕事が何も渡されず… もし仕事の総量が決まっているような組織で、新人として配属されてしまったら? 仕事を受け取れずに社内失業してしまうこともあります。 中央区の外郭団体で働く20代のRさんは、経理経験を買われ入社した、いわゆる転職組。 彼が他の社員と違ったのは、配属先の経理課で仕事が渡されず、担当業務が何もなかったことです。 「のんびりした外郭団体でしたから、もともと仕事量が少ないというのもあるんですが、ベテランの『お局様』たちが、課内での実権を握っていたんですね。彼女たちがほぼ全ての実務を取り仕切って、担当の割り振りもガッチリ決まっていました。だから、私が担当できる仕事が何も無かったんです」 上司に相談しても「暇だと思うけど、新聞を読んで、気になる記事があったら切り取るとかして、我慢してくれないか……」と言われてしまう始末。 じゃあなんで採用したの?と聞きたくなってしまいますね。理由を聞けば「社長が若い人を増やしたがったから」なのだそう。 「たしかに、20代の私のひとつ上で40代。かなり高齢化の進んだ組織だったんです」 担当する仕事がないと言われたRさんでしたが、めげずに新しい業務を提案しました。すると…課のお局様たちから 「もしあなたが異動になったら、その業務を誰が引き継ぐの?私たちの仕事を増やすような事だけはしないで」 と言われてしまいました。「そう言われてしまうと、もう何もできないですよね」。 偉い人が「居場所」を用意すべき 社長による無闇な「若返り施策」に巻き込まれる形で社内失業してしまったRさん。 「組織の若返りを図る……」という言葉はよく聞きますね。そんな、昔ながらの業界や組織の長の発言が、本当に「若返らせたい」、「組織を変革したい」、ということを意味するのならば、その若手がはじめからしっかりと活躍できるよう「権限」や「予算」を与えるべきです。 「そんなもの、入ったばかりの転職者に渡せないよ!」ということであれば、せめて偉い人が「居場所」だけでも用意してあげるべきですよね。 Rさんのケースで考えてみると、配属された経理課は、すでに業務量が頭打ちで以降増える予定は無く、割り振りについてもはっきり決まっている状況でした。 それならば、Rさんに「組織に与える新しい影響」を期待し入社させた社長が自ら、 「R君は経理に入ったら新しく◯◯なことをやってもらう人だから」 「課長、R君にはうちの組織に新しい風を吹き入れてくれる人と期待しているから、そのように差配したまえ」 とあらかじめ居場所を与え、自ら仕事を作り出すための土壌を用意すべきだったでしょう。 それならばRさんが社内失業に陥ることはなかったでしょうね。AKBやEXILEと違って、サラリーマン社会では年齢の高い人たちが卒業しません。 単に若い下っ端を入社させるだけでは、何の権限もない若造には組織を変えるパワーはありませんし、権限を手に入れるために普通に順番待ちさせていては、何十年経ってもなかなか芽を出すことはできないでしょう。 単に平均年齢を下げることで、「やった感」を出せればいいと言うなら別ですが……。 今日のまとめ:入社したばかりの社員に対して、既存の業務も、権限も予算も渡せないなら、せめて偉い人が居場所だけでも用意すべき。何も渡されない新人は、何もできず社内失業へと真っ逆さま。 あわせてよみたい:「上司が仕事をくれません!」 輪の欠如が生む「社内失業」 増田不三雄(ますだ ふみお)1980年生まれのサラリーマン時々ライター。正社員として都内の企業に就職したものの、ひょんなことから社内での仕事を失い、毎日職場で暇を持て余す「社内失業」の状態に。将来への不安とスキルアップにならない雑務を積み重ねながら会社員生活を送る。日々の主な業務は、郵便の宛名書きとファイル整理。 ブログ『社内失業と呼ばれて』
AKB大島優子の「卒業」を見習え 後進の芽を「潰す」職場もある―社内失業に堕ちた社員たち(2)
みなさんこんにちは。サラリーマン研究家の増田不三雄です。
あっという間にお正月休みが終わってしまいましたね……。お正月といえば大晦日。大晦日といえば毎年恒例、「NHK紅白歌合戦」。見ました?
2013年の紅白は、アイドルグループAKB48メンバー大島優子さんの卒業、ダンスグループEXILEのリーダーHIROさんの勇退と、2つの「卒業」が話題となりました。
両名とも人気がありすぎるあまり「後進の芽を潰さない」ための卒業とも言われています。が、当然のことながらほとんどのサラリーマンは、定年までの40年近く、勇退や卒業なんてことはしません。
ベテラン「お局様」から仕事が何も渡されず…
もし仕事の総量が決まっているような組織で、新人として配属されてしまったら? 仕事を受け取れずに社内失業してしまうこともあります。
中央区の外郭団体で働く20代のRさんは、経理経験を買われ入社した、いわゆる転職組。
彼が他の社員と違ったのは、配属先の経理課で仕事が渡されず、担当業務が何もなかったことです。
上司に相談しても「暇だと思うけど、新聞を読んで、気になる記事があったら切り取るとかして、我慢してくれないか……」と言われてしまう始末。
じゃあなんで採用したの?と聞きたくなってしまいますね。理由を聞けば「社長が若い人を増やしたがったから」なのだそう。
担当する仕事がないと言われたRさんでしたが、めげずに新しい業務を提案しました。すると…課のお局様たちから
と言われてしまいました。「そう言われてしまうと、もう何もできないですよね」。
偉い人が「居場所」を用意すべき
社長による無闇な「若返り施策」に巻き込まれる形で社内失業してしまったRさん。
「組織の若返りを図る……」という言葉はよく聞きますね。そんな、昔ながらの業界や組織の長の発言が、本当に「若返らせたい」、「組織を変革したい」、ということを意味するのならば、その若手がはじめからしっかりと活躍できるよう「権限」や「予算」を与えるべきです。
「そんなもの、入ったばかりの転職者に渡せないよ!」ということであれば、せめて偉い人が「居場所」だけでも用意してあげるべきですよね。
Rさんのケースで考えてみると、配属された経理課は、すでに業務量が頭打ちで以降増える予定は無く、割り振りについてもはっきり決まっている状況でした。
それならば、Rさんに「組織に与える新しい影響」を期待し入社させた社長が自ら、
「R君は経理に入ったら新しく◯◯なことをやってもらう人だから」 「課長、R君にはうちの組織に新しい風を吹き入れてくれる人と期待しているから、そのように差配したまえ」
とあらかじめ居場所を与え、自ら仕事を作り出すための土壌を用意すべきだったでしょう。
それならばRさんが社内失業に陥ることはなかったでしょうね。AKBやEXILEと違って、サラリーマン社会では年齢の高い人たちが卒業しません。
単に若い下っ端を入社させるだけでは、何の権限もない若造には組織を変えるパワーはありませんし、権限を手に入れるために普通に順番待ちさせていては、何十年経ってもなかなか芽を出すことはできないでしょう。
単に平均年齢を下げることで、「やった感」を出せればいいと言うなら別ですが……。
今日のまとめ:入社したばかりの社員に対して、既存の業務も、権限も予算も渡せないなら、せめて偉い人が居場所だけでも用意すべき。何も渡されない新人は、何もできず社内失業へと真っ逆さま。
あわせてよみたい:「上司が仕事をくれません!」 輪の欠如が生む「社内失業」
増田不三雄(ますだ ふみお)
1980年生まれのサラリーマン時々ライター。正社員として都内の企業に就職したものの、ひょんなことから社内での仕事を失い、毎日職場で暇を持て余す「社内失業」の状態に。将来への不安とスキルアップにならない雑務を積み重ねながら会社員生活を送る。日々の主な業務は、郵便の宛名書きとファイル整理。 ブログ『社内失業と呼ばれて』