• 新聞社に入ると「時代遅れの人」になる? オールドメディアはオワコンなのか

    今も昔も就活生に根強い人気があるのが、マスコミ業界だ。特に有名大学の学生は、新卒のうちに一度は新聞社を受けておこうという人が少なくない。秋採用の枠に向けて、今からでも応募に間に合う会社もある。

    一方で、新聞社の未来に不安があると指摘する人もいる。紙の新聞を有料で購入している読者は高齢化が進み、若い人たちはネットで情報を得ているからだ。ブロガーのイケダハヤト氏も、新聞社への就職を希望する学生を諭す記事を投稿し、話題になっている。

    ジャーナリスト志望の学生にイケダ氏「何それ?」

    イケダ氏のエントリーは、一貫して新聞社への就職に否定的だ。「ジャーナリストを目指しているので、新聞社への就職を考えています」という学生にしばしば出会うが、そのたびに「何を言っているんだ、お前は」という反応をするという。

    「まずは新聞社で記者としての基礎を学びたいんです!」と理由を述べる学生にも、

    「はぁ?何それ?」「基礎なんて自分で身につけなさいよ」

    と突き放す。大手新聞社には「ジャーナリスト学校」があり、新入社員には手厚い教育研修プログラムが用意されているが、イケダ氏はそれも「衰退産業におけるレガシーな人材になるためのレール」と呼ぶ。

    「入社して多くのことを学んだ結果、時代遅れの人間になっていた…というのは笑えません」

    新聞記者の肩書きを得ることで「人脈もできるし取材もしやすい」という意見にも、「人脈なんて自分で広げていくもの」「オールド産業の新卒記者の名刺なんて見せられてもワクワクしませんがな」と冷ややか。取材費用の確保も「今はクラウドファンディングもあります」とし、

    「自分でメディアを立ち上げる」「そのメディアを用いて、自分の影響力を最大化する努力をしてください」「そのメディアを用いて、お金を稼いでください」

    と煽っている。新聞社に入ったらジャーナリストになれる、なんて思ったら大間違い。ホンキで「ジャーナリスト志望」なら、ネット時代には自分の努力でできることも多く、それこそが大切なんだ――そんなメッセージが伝わってくる。

    ネット編集者は「記者出身者の新聞臭さ」を指摘

    イケダ氏の意見には新聞業界から激しい反論もありそうだが、某ネットメディアの20代の編集者は「賛成できる部分もある」という。新聞社で長く働くと「新聞臭さ」がつき、それが足かせになるというのだ。

    「新聞出身者の多くは、視点が大上段に構えすぎで、文書が堅すぎ。読者を意識しなさすぎで、読者に正当にウケることをバカにしすぎ。あと、読者からの批判に対する耐性が低すぎます」

    新聞社で仕事が行き詰まり、ネットに活路を見出そうとする中高年は少なくないが、上記の理由で「たいがいは通用しない」という。「自分は大新聞でやってきた」というプライドだけでは、読者を引き付けることはできない。

    一方で、イケダ氏が「自分のメディア」を作って自力で稼げと、呼びかける点については「そんなにラクなもんじゃない」と否定的だ。素人ができることには限界があり、

    「若い人は、会社からおカネをもらって修行させてもらえばいい。まずは新聞社でカネをもらいながら経験を積ませてもらい、新聞臭さがつく前に辞めるのが理想」

    と断ずる。イケダ氏のエントリーで高評価を受けたジャーナリスト志望の東大生、大熊将八さんも、ツイッターに「僕自身は新聞社で得られる技術は調査報道に必要でいきなりフリーでは得難いのもあると考えます」と、異論を表明している。

    イケダ氏から「オールド産業」呼ばわりされた新聞業界にも、依然として未来があると指摘する人がいる。ドワンゴ会長の川上量生氏は6月25日掲載のダイヤモンド・オンラインのインタビュー記事で、現状を「ネットはオールドメディアが圧勝」と評価する。

    「みなさん、勘違いしていますよ。本当に勘違いしている。新興のネットメディア対オールドメディアの勝負は、実のところ、オールドメディアの圧勝です。それを、わかっていない」

    ドワンゴ川上氏「弱点は記者の給料が高いこと」

    川上氏は、「オールドメディア」である日経新聞と朝日新聞は、「あらゆるネット系のメディアの中で、実際に勝っている」「しかも、みなさんが思っている以上に、他と差がついています」と指摘する。

    日経電子版の有料会員数は、今年1月の段階で33万5000件を突破。「電子版月ぎめプラン」の月4200円に、電子版単体の会員数16万8000件を掛け合わせると、月の売り上げは単純計算で7億560万円となる。

    さらに紙の朝刊は、販売部数は減ったといえ275万5000部ほどある。1000万円を超える人も多い記者の人件費や取材費用などを、十分にまかなうことができているわけだ。これはクラウドファンディングやアフィリエイトで得られる額の比ではない。

    川上氏は、オールドメディアの弱点は「記者の給料が高いこと」で、「これは今後、残念ながら是正されます」と言い切る。それでもオールドメディアは、

    「一旦、経営状況が悪くなるかもしれませんが、何かの拍子に、従来と同じか、更に儲かるような構造を生むかもしれません」

    という。会社の将来は暗くないが、記者の中には遅かれ早かれ、人員整理や給与カットの憂き目にあう人が出る可能性があるということだろうか。

    果たしてオールドメディアは、オワコンなのか否か。若い人にとっては「とりあえず数年働いてみて様子を見て、傾いてきたら飛び出す」という選択もあるだろう。しかし30代後半以降の「中の人」にとっては、なかなか悩ましい状況ではある。

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