働きすぎの男、家から出られない女… 日本社会の硬直的な「性別役割」意識 2014年5月2日 キャリコネ調査班 ツイート 新しい働き方や仕事について考えるイベント「TOKYO WORK DESIGN WEEK」の2014年版キックオフが、4月28日に東京・渋谷で開催された。2部構成のトークセッションが、3時間にわたり行われた。 第1部では「ココが変だよ、女性の働き方」をテーマに、3人のバイリンガルの男女が登壇。女性の社会進出が進んでいないとされる日本で、女性はどのように働くべきなのか、活発な議論が交わされた。 日本の労働は「男性は有償、女性は無償」 日本は先進国の中でも、社会進出における男女格差が大きいとされる。世界経済フォーラムの「ジェンダー・ギャップ指数」2013年報告によると、経済参加・教育・健康・政治参加の分野における格差の小ささで、日本は136か国中105位。OECD加盟国中2番目の低さに甘んじている。 識字率や中等教育までの格差は小さいものの、経済・政治参加分野での格差が大きいのが特徴だ。登壇者の1人、日本のデザインコンサル会社で働くアメリア・ジュールさんは、女性に対する社会的期待の小ささを指摘する。 「日本では、女性のキャリアパスが期待されていないように感じる。女性からすると『どうせ期待されていない』と思ってしまうから、キャリアを積む期待をそもそもしなくなっている」 背景には、硬直した男女の性別役割意識があるようだ。OECDの調査(2013年)によると、日本女性は家事や家族へのケアなど「無償労働」に1日約5時間をあてている。これは世界29か国中6番目に高いが、一方で日本男性の無償労働時間は約1時間で、OECD加盟国の中で最低レベル(27位)だった。 日本の人材会社で働く登壇者のロ・アセイさんは、中国と比較して「日本では育児によって女性が犠牲になる部分が大きい」と語る。 「中国では共働きが当たり前で、出産したら子どもは自分の親が育ててくれる。『女性の活躍』ということが提唱されること自体、元々働きづらい証拠だと思う」 ただし、賃金を得るための「有償労働」の時間は、日本男性が29か国中トップ(471分)。ここを変えずに男性に「仕事を終えたら家事もやって」と言うのは、酷というものだろう。 登壇者「夢はお嫁さん、ではなく」 会場の女性からは、こんな声も挙がった。 「女性が仕事を優先して働けるのは、せいぜい10年が限界。日本の企業は65歳定年を前提に作られているから、『5年は下積みで我慢しなさい』と言われても、女性としては非常につらい」 新卒で入った会社でスキルが身につかないまま出産・育児に移ってしまうと、再就職しようとしても、売りものがない。こうした声に登壇者から、 「入社して安心せず、危機感を持って仕事をすべき」 「夢はお嫁さん、ではなく、キャリアの可能性を諦めないでほしい」(アセイさん) といったコメントがあった。 とはいえ、前述のように女性が家事を一手に引き受けざるをえない状況のままでは、「仕事も家庭も両立」という女性はごく一部に限られるだろう。 やはり男性の長時間労働を解消しつつ、硬直した男女の役割分担を和らげて、家事の分担を図っていかないと、女性が自らのキャリアを考えることのできる環境は整わないのかもしれない。 「ミスコン」が女性の地位を向上させたベネズエラ 問題の解決策として、登壇者のブランドデザイナー、マイコル・メディナさんは、国や企業がトータルに支援する環境も必要だと指摘した。 「国のアイデンティティとして、女性を支援する日本になってほしい。企業など民間からそういう運動が始まって、政府も支援するようになれば、きっと変わるはずだ」 メディナさんが生まれたベネズエラでも、かつては女性が社会参加しにくい国だった。しかし民間から「ミス・ベネズエラ」というコンテストが始まり、政府も「美人大国」として国を売りだした結果、女性の地位向上につながったという。 いまでは育児の環境が整っており、女性は出産しても2~3か月で職場に復帰することができるようになった。アメリアさんも、こう後押しする。 「女性は出産しても、キャリアを諦めずに頑張って欲しい。そういう人たちがモデルとなって『できる』ということを見せれば、やってみたいと思う人も増えるのでは。そのためには政府、企業、そして夫のサポートも必要」 生産人口が大きく減少していく日本では、女性の社会進出は欠かすことのできない大きなテーマだが、将来の可能性とともに、障壁となる意識変革など課題の根深さも感じられたセッションだった。 第2部はコチラ>>破壊的イノベーションを起こそう! 日本人に求められる「喜怒哀楽を表した働き方」 あわせてよみたい:働き方の「ボキャブラリー」を増やすために…
働きすぎの男、家から出られない女… 日本社会の硬直的な「性別役割」意識
新しい働き方や仕事について考えるイベント「TOKYO WORK DESIGN WEEK」の2014年版キックオフが、4月28日に東京・渋谷で開催された。2部構成のトークセッションが、3時間にわたり行われた。
第1部では「ココが変だよ、女性の働き方」をテーマに、3人のバイリンガルの男女が登壇。女性の社会進出が進んでいないとされる日本で、女性はどのように働くべきなのか、活発な議論が交わされた。
日本の労働は「男性は有償、女性は無償」
日本は先進国の中でも、社会進出における男女格差が大きいとされる。世界経済フォーラムの「ジェンダー・ギャップ指数」2013年報告によると、経済参加・教育・健康・政治参加の分野における格差の小ささで、日本は136か国中105位。OECD加盟国中2番目の低さに甘んじている。
識字率や中等教育までの格差は小さいものの、経済・政治参加分野での格差が大きいのが特徴だ。登壇者の1人、日本のデザインコンサル会社で働くアメリア・ジュールさんは、女性に対する社会的期待の小ささを指摘する。
背景には、硬直した男女の性別役割意識があるようだ。OECDの調査(2013年)によると、日本女性は家事や家族へのケアなど「無償労働」に1日約5時間をあてている。これは世界29か国中6番目に高いが、一方で日本男性の無償労働時間は約1時間で、OECD加盟国の中で最低レベル(27位)だった。
日本の人材会社で働く登壇者のロ・アセイさんは、中国と比較して「日本では育児によって女性が犠牲になる部分が大きい」と語る。
ただし、賃金を得るための「有償労働」の時間は、日本男性が29か国中トップ(471分)。ここを変えずに男性に「仕事を終えたら家事もやって」と言うのは、酷というものだろう。
登壇者「夢はお嫁さん、ではなく」
会場の女性からは、こんな声も挙がった。
新卒で入った会社でスキルが身につかないまま出産・育児に移ってしまうと、再就職しようとしても、売りものがない。こうした声に登壇者から、
といったコメントがあった。
とはいえ、前述のように女性が家事を一手に引き受けざるをえない状況のままでは、「仕事も家庭も両立」という女性はごく一部に限られるだろう。
やはり男性の長時間労働を解消しつつ、硬直した男女の役割分担を和らげて、家事の分担を図っていかないと、女性が自らのキャリアを考えることのできる環境は整わないのかもしれない。
「ミスコン」が女性の地位を向上させたベネズエラ
問題の解決策として、登壇者のブランドデザイナー、マイコル・メディナさんは、国や企業がトータルに支援する環境も必要だと指摘した。
メディナさんが生まれたベネズエラでも、かつては女性が社会参加しにくい国だった。しかし民間から「ミス・ベネズエラ」というコンテストが始まり、政府も「美人大国」として国を売りだした結果、女性の地位向上につながったという。
いまでは育児の環境が整っており、女性は出産しても2~3か月で職場に復帰することができるようになった。アメリアさんも、こう後押しする。
生産人口が大きく減少していく日本では、女性の社会進出は欠かすことのできない大きなテーマだが、将来の可能性とともに、障壁となる意識変革など課題の根深さも感じられたセッションだった。
第2部はコチラ>>破壊的イノベーションを起こそう! 日本人に求められる「喜怒哀楽を表した働き方」
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