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海外市場に挑戦する「日本の伝統工芸職人」 孤独な作業だけでは生き残れない
30年前は29万人だった日本の伝統工芸の職人が、7万人にまで減っているという。2014年3月25日放送の「ガイアの夜明け」(テレビ東京)は、そんな伝統工芸に新たな活路を見出そうとする若手職人たちの挑戦が紹介されていた。
京都では2年前、西陣織など歴史ある伝統工芸の跡継ぎたちが、チームで海外に打って出るべく「GO ON」(ゴオン)を立ち上げた。6つの工房メンバーの大半が30代の若者たちだ。呼びかけ人は西陣織「細尾」の細尾真孝さん(35歳)だ。
着物の帯から「高級ホテルの壁布」へ展開
細尾さんの本業は着物の帯だが、5年前に自ら新しい事業を始めた。高級ホテルやブティックの壁布に使われる生地をベテラン職人とともに開発し、今や世界の有名ファッションブランドから注文を受けるまでになった。
この経験を生かして、かつて仕事をしたデンマークのデザイナーを他のメンバーに紹介するなどして、チームで海外市場を狙っている。
この取り組みに誘われて1年前から参加したのが、京都・宇治で400年の歴史をもつ窯元「朝日焼」の16代目松林佑典さんだ。松林さんは「同世代の人たちが海外にチャレンジしている、ということがすごく刺激的だった」と語る。
海外デザイナーの設計書通りに、ティーポットを試作してみた。さくら色と漆黒のツートンが美しいモダンなデザインで、うまく行ったかに見えたが、使ってみると湯切れが悪く、お茶が注ぎ口から垂れてしまう。
機能性もゆずれないが、世界で戦うためのデザインを自分がいじっていいものなのか。悩んだ松林さんにアドバイスを出したのが、「GO ON」リーダーの細尾さんだ。自身も織物の特性を考えてアレンジすることが多いと話した。
成功のポイントは「コミュニケーション」
細尾さん自身も、デザイナーの要望を超える作品を作り上げていた。例えば、デザイナーからの指定は「柄が透ける布」だったが、それにとどまらず、表からは透けて、裏からは透けない、世界初の布を作ったのだ。
この布は、細尾さんが仕掛けたニューヨークの常設ギャラリーで各国のバイヤーやデザイナーを驚かせていた。このアドバイスでティーポットを完璧に仕上げることができた松林さんも、その同じギャラリーに、新しいティーポットを展示し注目を集めていた。
このほか番組では、若者離れに悩む百貨店が、伝統的な有田焼をポップなデザインに作り替えた雑貨で30代の顧客を増やした例も取り上げられていた。
伝統工芸の職人というと、ひとり黙々と作業するイメージがあるが、こうした若手職人たちは、仲間と頻繁に情報交換し、壁を乗り越えるヒントをつかんでいる。慣れない英語でも、自分の言葉でフランスの一流陶磁器「セーブル」の社員に売り込みしていた。
実によくコミュニケーションをとっているし、そうしなくては生き残れないのだろう。生き残るためにはブランドに頼るだけではだめで、時代に合わせて変化させ続けることが新たな伝統を作っていく。これは伝統工芸だけではなく、どんな会社や社員にも言えることだ。(ライター:okei)
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