職種研究財務
財務の仕事内容と転職
1.財務の仕事内容
財務部門では、一般的に以下のような業務が行われます。
【予算管理】
・会社の経営計画や企業理念などに基づく年度ごとの予算策定
・中期・長期の目標を設定
【資金調達】
・会社の資金計画の立案
・運転資金の調達(金融機関からの借り入れ、株式上場・追加発行、債券発行等)
【資産調整】
・流動資産、固定資産を必要に応じて現金化するなどして、資産を調整
【M&A】
・企業の合併・買収に関して、財務的な視点で検討
経理との違い
まず、経理は日々のお金の取引を記帳し、集計して決算書等を作成する業務を担当します。つまり、既に出入りのあったお金の管理をするのが主な業務だと言えるでしょう。
これに対して財務は、予算管理や資金調達など、今後の資金運用に関連する業務を扱います。
なお、大企業では財務部門が独立している場合が多いですが、企業の規模によっては、経理と財務が一緒になっているケースもあるでしょう。似て非なる業務でありながら、切っても切れない関係にあるのです。
財務の重要性
実は、黒字にも関わらず倒産してしまう会社は少なくありません。損益計算書上では利益が出ていても「手元には現金がない」という状態に陥り、資金繰りに苦しんで黒字倒産が起こることがあるのです。
こういった事態を阻止するためにも、資金を滞りなく行き渡らせる必要があります。財務は、会社の経営状態を左右する重要な仕事なのです。
2.財務になるには
企業に就職し、財務を担当する部門に配属されるというのが一般的な流れです。専門性の高い職種のため、実務をこなしながら長期的に経験を積む必要があります。
就職先の選択肢は幅広いですが、職種限定での募集でない場合、必ずしも財務担当になれるとは限りません。
財務に関する資格
財務に関連する資格としては、以下のようなものがあります。資格がなくても財務職に就くことは可能ですが、取得すればスキルアップにつながるでしょう。
・日商簿記2級
半年程度の勉強で取得できるケースも多く、簿記2級を取得する財務担当者は多いようです。2級に合格し、余裕がある場合は1級に挑戦するのもいいでしょう。難易度が非常に高く、近年の合格率は6~10%程度[1]です。しかし、取得できれば強みになり、実務にも役立つでしょう。
・US CPA(米国公認会計士)ライセンス
海外とのやり取りが多い企業に就職したい場合、米国公認会計士の資格を持っていると有利でしょう。
試験科目は、財務会計(FAR)、企業経営環境・経営概念(BEC)、諸法規(REG)、監査および諸手続き(AUD)の4科目で、各科目の合格率はそれぞれ約5割[2]です。科目合格制度を採用しているため、自分のペースで少しずつ受験することも可能でしょう。
なお、財務に関係する資格ではありませんが、外資系企業やグローバル展開をしている企業の場合、英語力も重要です。TOEIC800点以上を目標にするとよいでしょう。
[1]日本商工会議所・各地商工会議所「受験者データ」(簿記)https://www.kentei.ne.jp/bookkeeping/candidate-data (2018年3月15日アクセス)
[2]AICPA“CPA Examination Passing Rates”(AICPA)https://www.aicpa.org/content/dam/aicpa/becomeacpa/cpaexam/psychometricsandscoring/passingrates/downloadabledocuments/pass-rates-2017.pdf (2018年3月15日アクセス)
新卒の場合
事務職として採用され、適性に応じて財務経理部門に配属されるケースが多いでしょう。大学・大学院で商学、経済学、経営学、会計学を学んだり、簿記を取得していたりすると、基礎知識があると判断されて有利に働くこともあります。
3.財務の転職
財務は基本的にどの企業にも必要な業務のため、安定的なニーズがあります。実務経験や専門知識が問われるため、経験者は転職しやすい環境にあるでしょう。
未経験からの転職
基本的には経験者のほうが圧倒的に有利です。しかし、日商簿記2級やUS CPAを持っているなど、財務関連の知識があれば未経験でも転職のチャンスはあります。銀行との折衝など、外部とのやり取りが必要な場面が多くあるため、コミュニケーション力・交渉力などを積極的にアピールするのも良いでしょう。
経験者の転職
リーダー経験、マネジメント経験があれば優遇されやすくなるでしょう。専門職のため比較的求人年齢のボーダーラインは高く、企業が求めるスキルや経験があれば、40代でも十分チャンスはあります。